軽症から中等症のCOVID-19および併存疾患を有する成人におけるイベルメクチン治療の有効性・安全性は?(RCT; I-TECH試験; JAMA Intern Med. 2022)

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軽症から中等症のCOVID-19および併存疾患を有する成人に対してイベルメクチンは有効なのか?

COVID-19の治療には、安価で広く入手可能な抗寄生虫薬であるイベルメクチンが処方されている国及び地域があります。しかし、イベルメクチンについては、その使用について賛否を問うエビデンスが報告されています。したがって、より質の高いエビデンスに基づくデータが必要とされています。

Ivermectin Treatment Efficacy in COVID-19 High-Risk Patients(I-TECH)試験は、2021年5月31日から10月25日の間にマレーシアの公立病院20施設とCOVID-19検疫センターで実施した非盲検ランダム臨床試験であり、COVID-19増悪リスクの高い患者における重症化予防のためのイベルメクチンの有効性を明らかにすることを目的に実施されました。主要アウトカムは、パルスオキシメトリーによる酸素飽和度95%以上を維持するために酸素補給を必要とする低酸素状態と定義される重症化した患者の割合でした

本試験には、患者の症状発現から1週間以内に、実験室でCOVID-19が確認され、併存疾患があり、軽症から中等症の50歳以上の患者を登録されました。

試験結果から明らかになったことは?

イベルメクチン群対照群相対リスク[RR]
重症化した患者の割合52/241例(21.6%)43/249例(17.3%) 1.25
(95%CI 0.87〜1.80
P=0.25

一次解析に組み入れられた490例の患者(平均[SD]年齢、62.5[8.7]歳;女性267例[54.5%])のうち、イベルメクチン群では241例中52例(21.6%)、対照群では249例中43例(17.3%)が重症化しました(相対リスク[RR] 1.25、95%CI 0.87〜1.80、P=0.25)。事前に規定したすべての副次的アウトカムについて、群間における有意差は認められませんでした。

機械的換気はイベルメクチン群4例(1.7%) vs. 対照群10例(4.0%)で発生し(RR 0.41、95%CI 0.13〜1.30、P=0.17)、集中治療室入院は6例(2.4%) vs. 8例(3.2%)、28日の院内死亡は3例(1.2%) vs. 10例(4.0%)(RR 0.31、95%CI 0.09〜1.11、P=0.09 )で発生しました。

最も多く報告された有害事象は下痢でした(群14例[5.8%] vs. 4例[1.6%])。

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一方、副次的アウトカムである機械的換気、集中治療室入院、28日の院内死亡については、有意差はないもののイベルメクチン群で低下傾向です。

以上の結果から、重症化リスクの高いCOVID-19患者におけるイベルメクチン使用を推進する人がいることも理解できます。しかし、重症化を含めて、点推定値、効果推定値ともに標準治療(±プラセボ)と比較して有意に減少させる薬剤が承認されている中で、それら承認薬と比較して、イベルメクチンを優先して使用する意義は低いと考えます。

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✅まとめ✅ 軽症から中等症ののCOVID-19の高リスク患者を対象としたこのランダム化臨床試験において、発病初期にイベルメクチンを投与しても重症化への進行は防げなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:COVID-19の治療には、安価で広く入手可能な抗寄生虫薬であるイベルメクチンが処方される。イベルメクチンの使用について賛否を問うエビデンスに基づくデータが必要である。

目的:COVID-19の高リスク患者における重症化予防のためのイベルメクチンの有効性を明らかにすることである。

試験デザイン、設定、参加者:Ivermectin Treatment Efficacy in COVID-19 High-Risk Patients(I-TECH)試験は、2021年5月31日から10月25日の間にマレーシアの公立病院20施設とCOVID-19検疫センターで実施した非盲検ランダム臨床試験である。患者の症状発現から1週間以内に、実験室でCOVID-19が確認され、併存疾患があり、軽症から中等症の50歳以上の患者を登録した。

介入:患者は、イベルメクチン(0.4mg/kg体重、1日5日間)の経口投与と標準治療の併用(n=241)または標準治療単独(n=249)のいずれかに1対1の割合でランダムに割り付けられた。標準治療は、対症療法と、臨床所見、臨床検査結果、胸部画像に基づく早期悪化の兆候の監視から構成されていた。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、パルスオキシメトリーによる酸素飽和度95%以上を維持するために酸素補給を必要とする低酸素状態と定義される重症化した患者の割合であった。副次的アウトカムとして、人工呼吸、集中治療室への入院、28日間の院内死亡率、有害事象の発生率などを検討した。

結果:一次解析に組み入れられた490例の患者(平均[SD]年齢、62.5[8.7]歳;女性267例[54.5%])のうち、イベルメクチン群では241例中52例(21.6%)、対照群では249例中43例(17.3%)が重症化した(相対リスク[RR] 1.25、95%CI 0.87〜1.80、P=0.25)。事前に規定したすべての副次的アウトカムについて、群間における有意差は認められなかった。機械的換気はイベルメクチン群4例(1.7%) vs. 対照群10例(4.0%)で発生し(RR 0.41、95%CI 0.13〜1.30、P=0.17)、集中治療室入院は6例(2.4%) vs. 8例(3.2%)、28日の院内死亡は3例(1.2%) vs. 10例(4.0%)(RR 0.31、95%CI 0.09〜1.11、P=0.09 )で発生していた。最も多く報告された有害事象は下痢であった(群14例[5.8%] vs. 4例[1.6%])。

結論と関連性:軽症から中等症ののCOVID-19の高リスク患者を対象としたこのランダム化臨床試験において、発病初期にイベルメクチンを投与しても重症化への進行は防げなかった。本試験の結果は、COVID-19患者に対するイベルメクチンの使用を支持するものではない。

試験の登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04920942

引用文献

Efficacy of Ivermectin Treatment on Disease Progression Among Adults With Mild to Moderate COVID-19 and Comorbidities: The I-TECH Randomized Clinical Trial
Steven Chee Loon Lim et al. PMID: 35179551 DOI: 10.1001/jamainternmed.2022.0189
JAMA Intern Med. 2022 Feb 18. doi: 10.1001/jamainternmed.2022.0189. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35179551/

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