心房細動と睡眠時無呼吸症候群を有する患者に対するCPAP使用は心房細動の発生を減らさない(PROBE; Am J Respir Crit Care Med. 2021)

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心房細動と睡眠時無呼吸症候群を有する患者に対するCPAPの有効性は?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)は、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を引き起こします。SAS発症の原因は空気の通り道である上気道が狭くなることです。また、首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすいため、肥満はSASと深く関係しています。鼻に関連する疾患(扁桃肥大、舌が大きいこと、鼻炎・鼻中隔弯曲など)もSASの原因となります。さらに、あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASを発症するリスクが増加します。

SASの疑いがある場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)により睡眠中の呼吸状態の評価を行います。PSGの結果、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index, AHI)が5以上であり、かつ症状を伴う際にSASと診断します。その重症度はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。国内の診療ガイドライン(睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020)では、以下のように記載されています。

AHI 5以上のときは「SRBDあり」,あるいは「OSA」とする.なお,SRBDは従来使用されていた睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)と同義である.AHI 5以上で日中の過度の眠気などの臨床症状を伴う場合は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)とし,臨床症状がなくてもAHIが15以上であればOSASとされていたが,Inter-national Classification of Sleep Disorders, 3rd Edition(ICSD-3)で変更が加えられ,症状がなくても,高血圧や2型糖尿病,冠動脈疾患などの有意な疾患がある場合も,AHIが5以上であればOSASと診断可能ともとれる表現となっている.また,5≦AHI<15は軽症,15≦AHI<30は中等症,AHI≧30は重症とされている.なお,ICSD-3では閉塞性優位な呼吸事象(閉塞性あるいは混合性無呼吸,低呼吸やRERA)をAHIと同等に定義している.

※SRBD:睡眠関連呼吸障害(sleep related breathing disorders:SRBD)、OSA:閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020

成人のSASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなることが報告されています。しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させる可能性も示されています。

SASは心房細動(AF)患者に多く見られ、両疾患は心血管系の有害な転帰と関連しています(PMID: 26096557PMID: 26073295PMID: 24321805PMID: 23007221PMID: 21211682PMID: 15781100PMID: 22618923)。しかし、AFおよびSASを有する患者におけるCPAPの効果については、充分に検討されていません。

そこで今回は、心房細動の負荷に対する持続的気道陽圧(CPAP)の効果を検証した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

発作性心房細動の患者579例が呼吸ポリグラフィを受け、そのうち244例(42%)が中等度から重度のSAであり、このうち158例(65%)がCPAP導入期間に参加しました。158例のうち、39例(25%)は治療に耐えられませんでした。

合計108例の患者が主要な解析対象となりました。心房細動の平均時間は、ベースライン時の5.6%からCPAP介入の最後の3ヵ月間に4.1%に、対照群では5.0%から4.3%に減少しました。

フォローアップ時の調整後のグループ間差は-0.63(95%信頼区間 -2.55~1.30)%でした(P=0.52)。

重篤な有害事象はCPAP群で7件(13%)、対照群で2件(4%)発生しました。

コメント

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は心血管イベントの発症と関連していることが報告されています。また心房細動(AF)患者においてSASを併発することも知られています。

さて、本試験結果によれば、AFとSASを有する患者における持続的気道陽圧(CPAP)と通常ケアの併用は、通常ケア単独と比較して、心房細動が発生している時間の割合において差が認められませんでした。ちなみに今回の試験に参加したのは、無呼吸低呼吸指数(AHI)15以上の中等症から重症のSAS患者です。

これまでも心血管疾患の発生に対するCPAPの有効性の検証結果は一貫していません。しかし、これまでの報告ではAHI30以上の重症SAS患者において心血管イベントの発生抑制効果が示されていることから、重症患者においてCPAPの有効性が最大化するのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 発作性心房細動と睡眠時無呼吸症候群を有する患者において、CPAPによる治療は心房細動の負担を統計的有意に減少させなかった。

根拠となった試験の抄録

理論的根拠:睡眠時無呼吸症候群(SA)は、心房細動(AF)患者に多く見られ、両疾患は心血管系の有害な転帰と関連している。

目的:心房細動の負荷に対する持続的気道陽圧(CPAP)の効果を明らかにすること。

方法:この非盲検並行群間ランダム化比較試験には、発作性心房細動と中等度から重度のSA(無呼吸低呼吸指数⩾15)を有する患者が参加した。コンピュータシステムを用いて、適格な患者を、CPAPと通常ケアを併用した5ヵ月間の治療(CPAP群、n=55)と通常ケアのみの治療(対象群、n=54)に1対1でランダムに割り付けた。アウトカム評価は盲検化された。
計画された主要評価項目は、植え込み式ループレコーダーで測定された心房細動の負荷変化(心房細動が発生している時間の割合)におけるCPAP治療群と対照群の差であった。

主要アウトカムと測定結果:発作性心房細動の患者579例が呼吸ポリグラフィを受け、そのうち244例(42%)が中等度から重度のSAであった。このうち158例(65%)がCPAP導入期間に参加したが、39例(25%)は治療に耐えられなかった。
合計108例の患者が主要な解析対象となった。心房細動の平均時間は、ベースライン時の5.6%からCPAP介入の最後の3ヵ月間に4.1%に、対照群では5.0%から4.3%に減少した。
フォローアップ時の調整後のグループ間差は-0.63(95%信頼区間 -2.55~1.30)%であった(P=0.52)。
重篤な有害事象はCPAP群で7件(13%)、対照群で2件(4%)発生した。

結論:発作性心房細動とSAを有する患者において、CPAPによる治療は心房細動の負担を統計的に有意に減少させなかった。臨床試験はwww.clinicaltrials.gov(NCT02727192)に登録されている。

キーワード:CPAP換気、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、発作性心房細動、睡眠時無呼吸症候群

引用文献

Effect of Continuous Positive Airway Pressure on Arrhythmia in Atrial Fibrillation and Sleep Apnea: A Randomized Controlled Trial
Gunn Marit Traaen et al. PMID: 33938787 DOI: 10.1164/rccm.202011-4133OC
Am J Respir Crit Care Med. 2021 Sep 1;204(5):573-582. doi: 10.1164/rccm.202011-4133OC.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33938787/

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