COVID-19入院患者において妊娠の有無は死亡リスクに影響しますか?(後向きコホート研究; Letter for Ann Intern Med. 2021)

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COVID-19の妊婦における死亡リスクは、非妊娠患者と比較して高いのか低いのか?

妊娠中のCOVID-19患者を調査した研究では、生殖年齢の非妊娠患者と比較して、妊娠中の患者では死亡リスクが高まることが示されています(PMID: 33151921)。しかし、これらのデータは、妊娠状態を含むかなりの割合の欠落データによって制限された登録に基づいており、症例の確認に偏りがある可能性が高いと考えられます。実際、妊婦において、死亡リスクが低下することも報告されています(UKOSS/ISARIC/CO-CINPMID: 33560778)。

そこで今回は、病院853施設の患者の退院データを含む大規模なデータベースを使用した後向きコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

本研究のコホートは、COVID-19およびウイルス性肺炎で入院した妊婦1,062例と非妊娠中のCOVID-19患者9,815例で構成されました。妊娠中の患者は非妊娠中の患者に比べて若く、公的保険に加入している割合が高かった。また、妊娠中の患者は、高血圧、慢性肺疾患、糖尿病、肥満など、ほとんどの併存疾患が少ないことが明らかとなりました。

院内死亡は、COVID-19およびウイルス性肺炎で入院した妊娠中の患者の0.8%(n=9)、非妊娠中の患者の3.5%(n=340)に発生しました。入院から死亡までの期間の中央値は、妊娠中の患者では18日(四分位範囲 6~28日)、非妊娠中の患者では12日(四分位範囲 5~23日)でした。

集中治療室に入院した患者のサブグループでは、院内死亡率は、妊娠中の患者では3.5%(9/255例)、非妊娠中の患者では14.9%(283/1,898例)でした。

人工呼吸を受けた患者では、院内死亡は、妊娠中の患者では8.6%(9/105例)、非妊娠中の患者では31.4%(294/937例)でした。

妊婦非妊婦
院内死亡0.8%
(9/1,062例)
3.5%
(340/9,815例)
ICUにおける死亡リスク3.5%
(9/255例)
14.9%
(283/1,898例)
入院から死亡までの期間の中央値18日
(四分位範囲 6~28日)
12日
(四分位範囲 5~23日)
人工呼吸を受けた患者の院内死亡8.6%
(9/105例)
31.4%
(294/937例)

死亡した妊娠患者の年齢は23歳から44歳でした。8例は非ヒスパニック系の黒人またはヒスパニック系であり、全員が4月から7月の間に死亡しました。6例が肥満で、7例が少なくとも1つの併存疾患を持っていた。妊娠期間は23週から39週で、9回の出産のうち7回が生児でした。

コメント

これまでの検討結果において、COVID-19の妊婦における死亡リスクは、非妊婦と比較して、高いのか低いのか結論は得られていません。これは患者背景だけでなく、地域によりSARS-CoV-2感染状況が異なるためです。さらに変異株も流行していることから、結果の解釈がより困難となっています。妊婦のデータが限られていることも一因となっています。

さて、今回の試験の結果、全体の院内死亡だけでなく、集中治療室に入院した患者、人工呼吸を受けた患者のサブグループにおいても、非妊娠のCOVID-19患者と比較して、妊婦で死亡リスクが低いことが明らかとなりました。

本試験の強みは、病院853施設の患者の退院データを含む大規模なデータベースを使用していることです。登録ベースの研究のようなバイアスがなく、明確に定義された集団が得られる点が特に評価できます。しかし、本試験のデザインは後向きですので、あくまでも相関関係にすぎません。さらに本試験に利用されたデータベースは、米国全体の約20%をカバーしているため、結果を一般化できない可能性が考えられます。

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✅まとめ✅ COVID-19で入院した生殖年齢の患者を対象としたこの大規模かつ地理的に多様なコホートでは、妊娠中の患者では院内死亡率が低いことがわかった。

根拠となった試験の抄録

背景:妊娠中のCOVID-19患者を調査した研究では、生殖年齢の非妊娠患者と比較して、妊娠中の患者では死亡リスクが高まることが示されている(PMID: 33151921)。しかし、これらのデータは、妊娠状態を含むかなりの割合の欠落データによって制限された登録に基づいており、症例の確認に偏りがある可能性が高い。

目的:COVID-19で入院した生殖年齢の妊娠中および非妊娠中の患者における院内死亡のリスクを評価すること。臨床管理および医療政策の基礎を提供するためには、妊娠中のCOVID-19をより徹底的に確認する研究が必要であるためである。

方法:米国の入院の20%をカバーする全医療機関のデータレポジトリであるPremier Healthcare Databaseに登録されている患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を行った。2020年4月から11月にCOVID-19で入院した15歳から45歳のすべての女性入院患者を対象とした。エンカウンターに妊娠関連の診断が含まれていた場合、患者は妊娠していると定義した。本研究には個人を特定できる情報は含まれておらず、メリーランド大学ボルチモア校の機関審査委員会による審査は免除された。スクリーニング検査で陽性となったためにCOVID-19の診断を受けた無症状の患者を除外するために、ウイルス性肺炎の診断を受けた患者のみを対象とした。さらに、集中治療室への入室や機械的換気を行った患者のサブグループを用いて感度分析を行った。解析にはSAS, version 9.4 (SAS Institute)を用いた。

結果:コホートは、COVID-19およびウイルス性肺炎で入院した1,062例の妊娠中の患者と9,815例の非妊娠中の患者で構成された。妊娠中の患者は非妊娠中の患者に比べて若く、公的保険に加入している割合が高かった。また、妊娠中の患者は、高血圧、慢性肺疾患、糖尿病、肥満など、ほとんどの併存疾患が少ないことがわかった。院内死亡は、COVID-19およびウイルス性肺炎で入院した妊娠中の患者の0.8%(n=9)、非妊娠中の患者の3.5%(n=340)に発生した。入院から死亡までの期間の中央値は、妊娠中の患者では18日(四分位範囲 6~28日)、非妊娠中の患者では12日(四分位範囲 5~23日)でした。集中治療室に入院した患者のサブグループでは、院内死亡率は、妊娠中の患者では3.5%(9/255例)、非妊娠中の患者では14.9%(283/1,898例)でした。人工呼吸を受けた患者では、院内死亡は、妊娠中の患者では8.6%(9/105例)、非妊娠中の患者では31.4%(294/937例)であった。死亡した妊娠患者の年齢は23歳から44歳であった。8例は非ヒスパニック系の黒人またはヒスパニック系であった。全員が4月から7月の間に死亡した。6例が肥満で、7例が少なくとも1つの併存疾患を持っていた。妊娠期間は23週から39週で、9回の出産のうち7回が生児であった。

考察:全体および複数のサブグループ内で、COVID-19およびウイルス性肺炎で入院した非妊娠患者よりも妊娠患者の方が院内死亡率が大幅に低いことがわかった。本研究で認められた死亡率は、他の複数の研究の結果と一致している(UKOSS/ISARIC/CO-CINPMID: 33560778)。英国内で入院した20~39歳のCOVID-19の全症状患者を対象としたコホート研究では、妊娠中の患者の死亡率は0.8%、非妊娠中の患者の死亡率は3.1%と報告されている(UKOSS/ISARIC/CO-CIN)。
今回の研究では、妊娠中の患者の死亡率が当初の報告よりも低いことが示唆された。米国疾病予防管理センターは、任意報告のレジストリから収集したデータを用いて、入院患者と非入院患者の両方を含む妊娠中の患者の死亡率を0.15%、非妊娠中の患者の死亡率を0.12%と観察した(PMID: 33151921)。この研究では、妊娠の有無が患者の36%しかわからなかったため、症例確認にバイアスがかかる可能性があるという制限があった。

今回の研究の強みは、病院853施設の患者の退院データを含む大規模なデータベースを使用していることである。病院をベースにしているため、登録ベースの研究のようなバイアスがなく、明確に定義された集団が得られる。しかし、重症度と妊娠の両方が入院の可能性に影響するため、ある程度のコリダーバイアス(collider bias)*が予想される。その他の限界としては、死亡者数が少ないため、交絡の調整ができないことが挙げられる。入院していない患者に結果を外挿することはできない。実験室での検査結果は得られなかったが、先行研究では、COVID-19の診断と実験室で確認されたSARS-CoV-2感染との間に強い相関関係があることが示されている(PMID: 33351033)。

COVID-19で入院した生殖年齢の患者を対象としたこの大規模かつ地理的に多様なコホートでは、妊娠中の患者では院内死亡率が低いことがわかった。

*コリダーバイアス(collider bias):選択バイアスの一つ。合流点バイアスと訳されます。曝露割付後の要因で分析対象を選択した場合に、その選択基準が曝露レベル、曝露の原因及びアウトカム、アウトカムの原因の共通の効果となります。つまり、因果関係が合流点となる共通因子により打ち消され、本来は因果関係がないが、相関関係が認められる場合があるということです。

引用文献

In-Hospital Mortality in a Cohort of Hospitalized Pregnant and Nonpregnant Patients With COVID-19 | Annals of Internal Medicine
Beth L Pineles et al. PMID: 33971101 DOI: 10.7326/M21-0974
Ann Intern Med. 2021 May 11. doi: 10.7326/M21-0974. Online ahead of print.
— 続きを読む www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-0974

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