透析患者におけるNSAIDs使用は心血管リスクとなりますか?(韓国 症例クロスオーバー試験; Nephrol Dial Transplant. 2021)

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透析患者においてはNSAIDsを使用しても問題ないのか?

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛や炎症性疾患の治療に広く使用されています。しかし、NSAIDsの使用は、いくつかの確立された副作用によって制限されています(PMID: 7907735PMID: 23726390)。さらにNSAIDsの使用に伴う心血管リスクを裏付ける証拠が増加していることから、懸念が生じています(PMID: 15713944PMID: 15713943)。重要なことに、最近の研究では、NSAIDsに曝露された後の心血管への悪影響のリスクは、特に心血管疾患が確立されている患者で高くなることが示されています(PMID: 19171810PMID: 21555710)。

透析患者においては、様々な疼痛の原因を有しており(PMID: 14655196)、痛みに対する感受性が高いことも考慮すると(PMID: 21771748)、この集団におけるNSAIDsの処方は相当な件数になると考えられます。

臨床医は、慢性腎臓病患者にNSAIDsを処方することを腎副作用のために避けていますが、患者が透析を受けている場合、NSAIDsの使用を制限する可能性は低くなります。また、慢性腎臓病(ESRD)患者の原因疾患や併存疾患としてのリウマチ性疾患の割合が高いことも、透析患者へのNSAIDsの処方頻度に影響を与えている可能性があります(PMID: 18508965PMID: 21445962)。実際、以前の報告では、NSAIDsは透析患者に最もよく処方される薬剤の1つであることが示されています(USRDS Annual Data Report)。したがって、透析患者における心血管疾患の有病率が非常に高く、また、これらの疾患が死亡率に大きく寄与していることを考慮すると、NSAIDsが透析患者の主要な心臓および脳血管系有害事象(major adverse cardiac and cerebro- vascular events, MACCEs)に及ぼす影響を検討することは非常に重要です。しかし、透析患者におけるNSAIDsの使用に関連した心血管リスクを具体的に検討した研究はほとんどありません(PMID: 29142967)。

そこで今回は、韓国の透析患者を対象とした人口ベースの症例クロスオーバー試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

NSAIDsの投与を受けてMACCEsおよび死亡した透析患者は、それぞれ3,433例および8,524例でした。

NSAIDsは、MACCEsのリスク(調整済みオッズ比 aOR 1.37、95%信頼区間CI 1.26〜1.50)と死亡率(aOR 1.29、95%CI 1.22〜1.36)を有意に増加させました。

透析患者におけるNSAIDs使用MACCEs死亡
発生数3,433例8,524例
調整済みオッズ比1.37
(1.26〜1.50)
1.29
(1.22〜1.36)

選択的COX-2阻害剤を除いて、非選択的NSAIDsは、MACCEsと死亡率のリスクを有意に増加させました。しかし、NSAIDsの定義された1日の累積投与量による解析では、MACCEsおよび死亡率のリスクは用量依存的に増加しませんでした。また、最近NSAIDsに曝露した患者は、最近曝露していない患者よりもMACCEsの発生率が高い傾向がみられました。

コメント

本試験は症例クロスオーバー試験であることから、患者背景については同様です。一方で、患者の状態における自然経過の影響については完全に調整できないことから、この点に注意する必要があります。

さて、試験結果によれば、透析患者であっても、NSAIDs使用により心臓・脳血管系主要有害事象および死亡リスクのぞ桜花が認められました。ただし、用量依存的なリスク増加が認められていないことから、未知の交絡因子がありそうです。あるいは使用用量に関係なく、NSAIDs使用によって、それぞれのリスク増加がみられるのかもしれません。

試験結果はオッズ比で示されていることから、実際のリスクの程度を推し量ることは困難です。とはいえ、NSAIDsを使用しなくても問題ないのであれば、アセトアミノフェンなどで代用したいところです。

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✅まとめ✅ NSAIDsと心血管アウトカムおよび死亡率との関連性を考慮すると、臨床医は透析患者にNSAIDsを処方する際には特に慎重になるべきである。

根拠となった試験の抄録

背景:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の心血管リスクを考慮すると、心血管リスクの高い患者を対象に、NSAIDsと心血管アウトカムとの関連性を明らかにすることが重要であると考えられる。

方法:NSAIDsと心臓・脳血管系主要有害事象(major adverse cardiac and cerebro-vascular event, MACCEs)および死亡率との関連性を評価するために、韓国健康保険のデータセットを用いてケースクロスオーバー研究を実施した。
症例期間はイベント発生日の1~30日前、対照期間はイベント発生日の61~90日前と91~120日前と定義した。

結果:NSAIDsの投与を受けてMACCEおよび死亡した透析患者は、それぞれ3,433例および8,524例であった。NSAIDsは、MACCEsのリスク(調整済みオッズ比aOR 1.37、95%信頼区間CI 1.26〜1.50)と死亡率(aOR 1.29、95%CI 1.22〜1.36)を有意に増加させた。
選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤を除き、非選択的NSAIDsは、MACCEと死亡率のリスクを有意に増加させた。しかし、NSAIDsの1日の定義された累積投与量による解析では、MACCEおよび死亡率のリスクは用量依存的に増加しなかった。また、最近NSAIDsに曝露した患者は、最近NSAIDsに曝露していない患者よりもMACCEsの発生率が高い傾向にあった。

結論:NSAIDsと心血管アウトカムおよび死亡率との関連性を考慮すると、臨床医は透析患者にNSAIDsを処方する際には特に慎重になるべきである。

キーワード:透析患者、心臓および脳血管系の主要有害事象、非ステロイド性抗炎症薬

引用文献

Cardiovascular risk of nonsteroidal anti-inflammatory drugs in dialysis patients: a nationwide population-based study – PubMed
Nephrol Dial Transplant. 2021 Apr 26;36(5):909-917. doi: 10.1093/ndt/gfz276.
Hyung Ah Jo et al. PMID: 31943085 DOI: 10.1093/ndt/gfz276
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31943085/

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