市中肺炎患者に対するアモキシシリン+クラブラン酸の治療期間は8日と3日どちらが良い?(DB-RCT; PTC試験; Lancet 2021)

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β-ラクタム系薬剤の適切な投与期間とは?

β-ラクタム系薬剤はβ-ラクタム環を母核とする抗菌薬であり、いずれも細菌の細胞壁合成に必要な酵素に結合して不活化します。β-ラクタム系薬剤は、以下のサブクラスに分けられます;

  • セファロスポリン系およびセファマイシン系(セフェム系)
  • カルバセフェム系
  • クラバム系
  • カルバペネム系
  • モノバクタム系
  • ペニシリン系

起因菌がある程度特定されている市中肺炎では、アモキシシリンをはじめとするペニシリン系が使用されますが、適正な投与期間については充分に検討されていません。

そこで今回は、市中肺炎患者を対象に、アモキシシリン+クラブラン酸の治療期間について、8日と3日で差がないか検証したPTC試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2013年12月19日から2018年2月1日の間に患者706例の適格性を評価し、3日間のアモキシシリン+クラブラン酸(βラクタム)による治療後、適格性のある患者310例をプラセボ(n=157)または追加のβラクタム治療(n=153)5日間投与のいずれかにランダムに割り付けられました。患者7例が試験薬の服用前に同意を撤回し、その内訳はプラセボ群で5例、β-ラクタム群で2例でした。

ITT集団は、年齢の中央値は73.0歳(IQR 57.0〜84.0)で、303例中123例(41%)が女性でした。

主要評価項目(ITT解析)である抗生物質の初回投与から15日後の治癒は、プラセボ群152例中117例(77%)、β-ラクタム群151例中102例(68%)であり(群間差9.42%、95%CI -0.38~20.04)、非劣性が示されました。

Per-protocol解析では、プラセボ投与群145例のうち113例(78%)、β-ラクタム投与群146例のうち100例(68%)が15日目に治癒しており(群間差9.44%、95%CI -0.15~20.34)、非劣性が示されました。

15日後の治癒(率)プラセボ群
(βラクタム3日間投与)
βラクタム治療
(8日間投与)
群間差
ITT解析117/152例(77%)102/151例(68%)9.42%
(95%CI –0.38~20.04
非劣性が示された
Per-protocol解析113/145例(78%)100/146例(68%)9.44%
(95%CI -0.15~20.34
非劣性が示された

有害事象の発生率は治療群間で同等でした(プラセボ群152例のうち22例[14%]、β-ラクタム群151例のうち29例[19%])。最も多かった有害事象は消化器系の障害であり、プラセボ群では152例中17例(11%)、β-ラクタム群では151例中28例(19%)に報告されました。

30日目までに死亡した患者は、プラセボ群で3例(2%)(黄色ブドウ球菌による菌血症が1例、急性肺水腫後の心原性ショックが1例、急性腎不全に伴う心不全が1例)、β-ラクタム群で2例(1%)(肺炎の再発および急性肺水腫の可能性が1例)でした。

コメント

まず日本で承認されているアモキシシリンの用量は、海外と比較して少なく、1日最大1,000mgまでですので、今回の試験結果(アモキシシリン3g/日)をそのまま当てはめることは困難であると考えられます。

試験結果としては、15日後の治癒率において、アモキシシリン+クラブラン酸8日間投与群に対する3日間投与群の非劣性が示されていますが、もう少し詳しく結果を見てみると、3日間投与群の方が8日間投与群よりも15日後の治癒率が高いことが分かります(群間の絶対差は9%)。

3日間投与群では、8日間投与群と比較して、消化器系の障害が少ないことも特徴です。少なくとも本試験結果から、有効性、安全性については、アモキシシリン+クラブラン酸3日間投与の方が、8日間投与より優れていると考えられます。AMR対策の一環としても良さそうな結果です。

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✅まとめ✅ 市中肺炎で入院した患者において、3日後にアモキシシリン+クラブラン酸の投与を中止することは、8日間の投与に対して非劣性であった。

根拠となった試験の抄録

背景:市中肺炎で入院した患者に対する抗生物質治療の期間を短縮することは、抗生物質の消費量を減らし、その結果、細菌の薬剤耐性、有害事象、関連コストを削減するのに役立つはずである。我々は、3日間の治療で安定していた市中肺炎患者において、5日間のβ-ラクタム薬の追加投与の必要性を評価することを目的とした。

方法:二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、非劣性試験(Pneumonia Short Treatment [PTC])をフランスの16施設で行った。中等度の重症市中肺炎で入院した成人患者(18歳以上)で、β-ラクタム薬による治療を3日間行った後、事前に規定した臨床的安定性基準を満たした患者を、β-ラクタム薬による治療(アモキシシリン1g+クラブラン酸125mgを1日3回経口投与)またはマッチしたプラセボを5日間追加投与することでランダムに割り付けた(1:1)。ランダム化は、ウェブベースのシステムを用いて、ランダムサイズの順列ブロックを用い、ランダム化施設と肺炎重症度指数スコアで層別化して行われた。参加者、臨床医、研究スタッフは、治療の割り振りについてマスクされた。
主要評価項目は、抗生物質の初回投与から15日後の治癒で、発熱(体温37.8℃以下)、呼吸器症状の消失または改善、原因を問わず抗生物質の追加投与がないことと定義した。非劣性マージンは10%ポイントとした。主要評価項目は、ランダムに割り付けられ、いずれかの治療を受けたすべての患者(intention-to-treat[ITT]集団)と、割り付けられた治療を受けたすべての患者(per-protocol集団)で評価した。安全性はITT集団で評価した。
本試験は、ClinicalTrials.gov(NCT01963442)に登録されており、現在は終了している。

調査結果:2013年12月19日から2018年2月1日の間に患者706例の適格性を評価し、3日間のβラクタム治療後、適格性のある310例の患者をプラセボ(n=157)またはβラクタム治療(n=153)のいずれかにランダムに割り付けた。患者7例が試験薬の服用前に同意を撤回し、その内訳はプラセボ群で5例、β-ラクタム群で2例だった。
ITT集団では、年齢の中央値は73.0歳(IQR 57.0〜84.0)で、303例中123例(41%)が女性でした。ITT解析では、15日目に治癒したのは、プラセボ群152例中117例(77%)、β-ラクタム群151例中102例(68%)であり(群間差9.42%、95%CI -0.38~20.04)、非劣性が示された
per-protocol解析では、プラセボ投与群145例のうち113例(78%)、β-ラクタム投与群146例のうち100例(68%)が15日目に治癒しており(群間差9.44%、95%CI -0.15~20.34)、非劣性が示された
有害事象の発生率は治療群間で同等であった(プラセボ群152例のうち22例[14%]、β-ラクタム群151例のうち29例[19%])。最も多かった有害事象は消化器系の障害で、プラセボ群では152例中17例(11%)、β-ラクタム群では151例中28例(19%)に報告された。30日目までに死亡した患者は、プラセボ群で3例(2%)(黄色ブドウ球菌による菌血症が1例、急性肺水腫後の心原性ショックが1例、急性腎不全に伴う心不全が1例)、β-ラクタム群で2例(1%)(肺炎の再発および急性肺水腫の可能性が1例)であった。

解釈:臨床的安定性の基準を満たした市中肺炎で入院した患者において、3日後にβ-ラクタム薬の投与を中止することは、8日間の投与に対して非劣性であった。これらの知見により、抗生物質の使用量を大幅に削減できる可能性がある。

資金提供:フランス保健省。

引用文献

Discontinuing β-lactam treatment after 3 days for patients with community-acquired pneumonia in non-critical care wards (PTC): a double-blind, randomised, placebo-controlled, non-inferiority trial
Aurélien Dinh et al. PMID: 33773631 DOI: 10.1016/S0140-6736(21)00313-5
Lancet. 2021 Mar 27;397(10280):1195-1203. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00313-5.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33773631/

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