2型糖尿病患者における慢性腎臓病の有病率と進行度はどのくらい?(前向き研究; DISCOVER試験; Diabetes Obes Metab. 2021)

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2次血糖降下療法を開始した2型糖尿病患者におけるCKD

糖尿病は、慢性腎臓病(CKD)の最も一般的な原因であり、糖尿病患者におけるCKDの有病率は最大で40%であると報告されています。しかし、多くの国ではデータが不足しています。

そこで今回は、2型糖尿病患者のうち、2次血糖降下療法を開始した患者を対象にCKD発症と進行について3年間の観察を行ったDISCOVER試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

解析対象となったのは14,041例の患者で、そのうち7,843例(55.9%)がベースラインの血清クレアチニンを測定していました。ベースライン血清クレアチニンの測定が可能だったのは、西太平洋地域で最も多く(76.1%)、アフリカでは最も少なかったようです(37.2%)。ベースライン血清クレアチニンが測定された患者の56.7%は男性で、平均年齢は58.1歳(標準偏差[SD]12.0)、平均eGFR値は87.5mL/min/1.73m2(SD 21.4)でした。

各CKDステージの患者数は下表の通りであり、ステージ4〜5のCKDは、アメリカ大陸で最も多く(4.1%)、西太平洋地域で最も少ない(0.4%)ことが明らかとなりました。

CKDステージCKD患者数
0〜14,038例
(51.4%、地域間比較では42.4%~63.0%)
22,960例
(37.7%、地域間比較では30.7%~46.3%)
3737例
(9.4%、地域間比較では6.0%~12.9%)
4〜5108例
(1.4%、地域間比較では0.4%~4.1%)

また、女性や白人の割合、合併症の有無、併用薬の有無は、CKDの重症度に応じて増加し、アジア人の割合は減少しました。

全体の平均eGFR値は、フォローアップ期間中に85.7mL/min/1.73m2(SD 21.2)とわずかに低下し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用はわずかに増加しました。

観察期間中に疾患が進行したのは914例(15.7%、地域間比較では12.3~22.9%)、後退したのは699例(12.0%、地域間比較では7.7~22.0%)でした。疾患の進行はアフリカで最も多く(22.9%)、退行は東南アジアで最も多い(22.0%)ことが明らかとなりました。また、ステージ0〜1からステージ2以上に進行した患者は636例(10.9%)、ステージ0〜1または2からステージ3以上に進行した患者は279例(4.8%)でした。

全体の平均eGFR変化率は、1年あたり0.3mL/min/1.73m2(SD 23.4)でした。病状が進行した患者は、病状が後退した患者や安定していた患者に比べて、併用薬の使用率が高かったが、その他の特性は同様でした。

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本研究では、西太平洋地域に日本が含まれています。その他、オーストラリア、マレーシア、韓国、台湾のデータと合わせて解析されていますので、日本人のみのデータではないことに注意が必要です。

さて、本試験結果によれば、半数以上の患者でCKDの発症が認められ、またCKD進行は全体の15%で認められました。本試験では、ベースライン血清クレアチニンの測定が可能だったのは、西太平洋地域で最も多く(76.1%)、ステージ4〜5のCKDは、西太平洋地域で最も少ない(0.4%)ことが明らかとなっていますので、日本を含む西太平洋地域では、他の地域と比較して、腎機能の経過をフォローできているのかもしれません。

2型糖尿病における微小血管合併症としては「し め じ」が有名ですが、このゴロは発症する順番も示しています。つまり、まず神経障害が発症しやすく、次に網膜症を含む眼関連障害、そして(糖尿病性)腎症という流れです。ただし、あくまでも目安であり、自覚症状がないまま腎症が進行する症例も報告されています。やはり、腎機能については治療初期から継続的、定期的に検査していく必要がありそうですね。本試験に参加した患者の平均年齢は58.1歳(標準偏差[SD]12.0)、平均eGFR値は87.5mL/min/1.73m2(SD 21.4)です。あくまでも仮説生成的な私見ですが、中年でeGFRが軽度低下している患者においては、特に腎機能の経過に注視した方が良いのかもしれません。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病患者のかなりの割合が、二次治療の開始後にCKDの発症や進行が見られた。

根拠となった論文の抄録

DISCOVERは、2型糖尿病患者(T2DM)が2次血糖降下療法を開始してから3年間のグローバルな前向き観察研究で、慢性腎臓病(CKD)の有病率と重症度の変化について報告した。

推定糸球体濾過量(eGFR)に応じてCKDステージを定義した。35ヵ国の患者7,843例がベースラインの血清クレアチニンを測定した。これらの患者(男性56.7%、平均年齢58.1歳、平均eGFR 87.5mL/min/1.73m2)のうち、ベースラインでのCKDステージ0〜1、2、3、4〜5の有病率は、それぞれ51.4%、37.7%、9.4%、1.4%でした。また、5,819例(74.2%)の患者が、少なくとも1回のフォローアップの血清クレアチニン測定を行っていた(測定間隔の中央値 2.9年、四分位範囲 1.9~3.0年)。平均eGFRは、フォローアップ期間中に85.7mL/min/1.73m2とわずかに減少した。CKDの進行(1ステージ以上の上昇)は15.7%、退行(1ステージ以上の下降)は12.0%でした。

以上のことから、T2D患者のかなりの割合が、二次治療の開始後にCKDを発症したり、CKDの進行が見られた。早期にCKDの診断と治療を行うためには、これらの患者の腎機能を定期的にモニタリングする必要がある。

引用文献

Prevalence and progression of chronic kidney disease among patients with type 2 diabetes: Insights from the DISCOVER study
Kamlesh Khunti et al. PMID: 33852196 DOI: 10.1111/dom.14401
Diabetes Obes Metab. 2021 Apr 14. doi: 10.1111/dom.14401. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33852196/

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