65歳以上の高齢者での長時間作用型インスリンアナログとNPHインスリンによる重篤な低血糖リスクに差はありますか?(後向き研究; JAMA Intern Med. 2021)

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インスリンの作用時間により低血糖リスクは異なるのか?

インスリン投与は低血糖リスクを誘発することが報告されています。この低血糖リスクは、インスリンの作用時間によって差がないことが報告されています。しかし、これまでの報告では、低血糖のリスクが高い65歳以上の患者に焦点を当てておらず、また、プランディアル(prandial、食前)インスリンを併用している患者を対象としていませんでした。

そこで今回は、65歳以上の高齢者での長時間作用型インスリンアナログとNPHインスリンによる重篤な低血糖リスクを比較し、さらに食前インスリンを併用した場合のリスクについても検証した後向き研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

インスリンの使用を開始した575,008例(平均[SD]年齢 74.9[6.7]歳、女性 53%)のうち、407,018例がグラルギンを、141,588例がデテミルを、26,402例がNPHインスリンを使用していました。

低血糖によるED訪問または入院は7,347件で、3つのコホートの追跡期間の中央値は0.37年(四分位範囲 0.20~0.76年)であった。

インスリン低血糖によるED訪問または入院
グラルギン5,194件
デテミル1,693件
NPH460件

グラルギンとデテミルの使用開始は、NPHインスリンの使用開始と比較して低血糖リスクを低下させました。

☆グラルギン vs. NPHインスリン:HR 0.71、95%CI 0.63〜0.80
☆デテミル vs. NPHインスリン :HR 0.72、95%CI 0.63〜0.82

再発イベントの解析でもHRは同様でした。長時間作用型インスリンアナログの予防効果は年齢によって異なり、また、食前インスリンの併用では差が認められませんでした。

コメント

後向き研究であるため、あくまでも相関関係ではありますが、インスリン グラルギンとインスリン デテミルの使用開始は、NPHインスリンの使用開始と比較して低血糖リスクを低下させました。インスリン使用は作用時間と血糖降下作用が逆相関しますので、矛盾しません。

したがって、食前インスリンの併用で差が認められなくなったことも違和感がありません。つまり食前インスリン(速効型・超速効型)による低血糖リスクにより、持効型インスリンあるいはNPHインスリンによる低血糖リスクがマスクされたということです。

後向き研究ではありますが、貴重な研究結果であると考えます。

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✅まとめ✅ 高齢の2型糖尿病患者において、長時間作用型インスリン製剤の使用開始は、NPHインスリン製剤と比較して、低血糖によるED訪問または入院のリスクが低いことと関連していた。しかし、この関連性は、食前インスリンの併用では認められなかった。

根拠となった論文の抄録

試験の重要性:これまでの研究では、2型糖尿病患者において、長時間作用型インスリンアナログと中性プロタミンハゲドルン(NPH)インスリンの間に重症低血糖のリスクは差がないとされている。しかし、これらの研究では、低血糖のリスクが高い65歳以上の患者に焦点を当てておらず、また、プランディアル(prandial、食前)インスリンを併用している患者を対象としていなかった。

目的:地域に居住する高齢の2型糖尿病患者が長時間作用型インスリンまたはNPHインスリンを開始した際に、低血糖による救急診療科(ED)受診または入院のリスクを実世界で検討すること。

試験設計、設定および参加者:このレトロスペクティブな新規使用者コホート研究では、2007年1月1日から2019年7月31日までにインスリン グラルギン(n=407,018)、インスリン デテミル(n=141,588)、またはNPHインスリン(n=26,402)を開始した65歳以上のメディケア受給者を評価した。

暴露:インスリン グラルギン、インスリン デテミル、NPHインスリン。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、修正された有効なアルゴリズムを用いて定義され、低血糖による最初のED訪問または入院までの時間であった。ハザード比(HR)と95%CIの推定には、傾向スコアで重み付けしたCox比例ハザード回帰を用いた。低血糖症の再発リスクはAndersen-Gillモデルを用いて推定した。年齢による効果の変化を調べるために、事後解析を行った。

結果:インスリンの使用を開始した575,008例(平均[SD]年齢 74.9[6.7]歳、女性 53%)のうち、407,018例がグラルギンを、141,588例がデテミルを、26,402例がNPHインスリンを使用していた。
低血糖によるED訪問または入院は7,347件(グラルギン 5,194件、デテミル 1,693件、NPHインスリン 460件)で、3つのコホートの追跡期間の中央値は0.37年(四分位範囲 0.20~0.76年)であった。
グラルギンとデテミルの使用開始は、NPHインスリンの使用開始と比較して低血糖リスクを低下させた(グラルギン vs. NPHインスリンのHR 0.71;95%CI 0.63〜0.80、デテミル vs. NPHインスリンのHR 0.72、95%CI 0.63〜0.82)。
再発イベントの解析でもHRは同様であった。長時間作用型インスリンアナログの予防効果は年齢によって異なり、また、食前インスリンの併用では見られなかった。

結論と関連性:今回のコホート研究では、メディケアに加入している高齢の2型糖尿病患者において、長時間作用型インスリン製剤の使用開始は、NPHインスリン製剤と比較して、低血糖によるED訪問または入院のリスクが低いことと関連していた。しかし、この関連性は、食前インスリンの併用では認められなかった。

引用文献

Severe Hypoglycemia Risk With Long-Acting Insulin Analogs vs Neutral Protamine Hagedorn Insulin
Marie C Bradley et al. PMID: 33646277 PMCID: PMC7922234 (available on 2022-03-01) DOI: 10.1001/jamainternmed.2020.9176
JAMA Intern Med. 2021 Mar 1;e209176. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.9176. Online ahead of print.
ー続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33646277/

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