2型糖尿病患者における心血管イベント予防のためのSGLT2阻害剤およびGLP1アゴニストの効果はメトホルミン投与しなくても得られますか?(RCTのSR&MA; Diabet Med. 2021)

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糖尿病の治療目標とは?

糖尿病診療ガイドライン2019によれば「糖尿病治療の目標は,高血糖に起因する代謝異常を改善することに加え,糖尿病に特徴的な合併症,および糖尿病に起こりやすい併発症の発症,増悪を防ぎ,健康人と変わらない生活 の質(quality of life:QOL)を保ち,健康人と変わらない寿命を全うすることにある.」と定義されています。

つまり、糖尿病の治療目標は、長期にわたり血糖をコントロールすることです。2型糖尿病の治療としては食事・運動療法を実施することが基本ですが、それでも血糖コントロールが不良である場合、血糖降下薬として経口剤を使用します。患者背景により注射剤も用いられます。

長期間の血糖コントロールを行うことにより、糖尿病に特徴的な合併症および糖尿病に起こりやすい併発症の発症や増悪を防ぐことが期待できます。これが治療、つまり血糖をコントロールするための目的になります。しかし、合併症の種類によっては、どんなに血糖コントロールを適切に行っても防ぐことが困難であることが報告されています。

SGLT-2阻害薬やGLP-1アゴニスト(受容体作動薬)は、比較的新しい糖尿病治療薬であり、糖尿病患者の心血管イベントを抑制できることが示されている薬剤です。しかし、承認の根拠となった臨床試験において、いずれの薬剤においても標準治療薬としてメトホルミンが大半の患者で投与されてます。したがって、SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の単独投与による心血管イベントの予防効果は不明です。

今回は、メトホルミン投与のない患者におけるSGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬により心血管イベントの発生が抑制できるか検討したメタ解析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2型糖尿病患者 50,725例を対象としたRCT 5件(そのうち10,013例はメトホルミンを投与されていなかった)が本メタ解析に含まれました。

その結果、ベースラインでメトホルミンを服用していない患者において、GLP1-受容体作動薬はプラセボと比較して、主要有害心血管イベント(MACE)リスクを20%有意に減少させました(HR 0.80、95%CI 0.71〜0.89)。
またSGLT2阻害薬もMACEリスクを32%有意に減少させることが明らかになりました(HR 0.68、95%CI 0.57〜0.81)。

メトホルミン非服用患者を対象MACEリスク
(vs. プラセボ)
GLP1-受容体作動薬HR 0.80、95%CI 0.71〜0.89
SGLT2阻害薬HR 0.68、95%CI 0.57〜0.81

サンプルサイズは大きいですが、研究数は少ないですので、今後の試験結果により結果が覆る可能性は充分にあります。しかし、現時点においては、心血管リスクの高い2型糖尿病患者へSGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を単独投与することは無益ではないように捉えられます。

事実、海外の診療ガイドラインでは、SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬がファーストラインとして記載されるようになってきています。一方、日本の診療ガイドラインでは7つの薬剤クラスが並列で記載されていますが、これは、海外の大規模臨床試験で用いられた薬剤用量が日本で承認されている用量よりも多いこと、また心血管イベントの発症リスクは欧米などの白人と比較して、日本人で低いことも要因となっている可能性が考えられます。

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✅まとめ✅ 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、ベースラインでメトホルミンを投与せずにSGLT2阻害薬とGLP1-RAを投与すると、プラセボと比較してMACEリスクを低減できる可能性がある

根拠となった論文の抄録

目的:2型糖尿病患者において、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP1-RA)およびナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬をメトホルミンと併用せずに投与した場合の心血管アウトカムに対する有効性を評価する。

方法:コクランの方法論的基準に基づいてシステマティックレビューを行った。
対象としたのは、成人の2型糖尿病患者を対象としたランダム化化臨床試験(RCT)で、SGLT2阻害薬とGLP1-RAの有効性を他の血糖降下薬と比較して評価したもの、および/またはベースラインでメトホルミンを使用していない2型糖尿病患者のサブグループのデータを提示したRCTである。
主要評価項目は、すべての主要有害心血管イベント(MACE)のリスクの減少で、個別または複合評価として報告された。

結果:2型糖尿病患者 50,725例を対象としたRCT 5件(そのうち10,013例はメトホルミンを投与されていなかった)が本メタ解析に含まれた。これらの研究のうち3つはGLP1-RA、2つはSGLT2阻害剤の有効性を評価したものであった。ベースラインでメトホルミンを服用していない患者において、GLP1-RAはプラセボと比較して、MACEのリスクを20%有意に減少させた(HR:0.80、95%CI:0.71-0.89)。SGLT2阻害薬もMACEのリスクを32%有意に減少させた(HR:0.68、95%CI:0.57-0.81)。

結論:心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において、ベースラインでメトホルミンを投与せずにSGLT2阻害薬とGLP1-RAを投与すると、プラセボと比較してMACEのリスクを低減できる可能性がある。

引用文献

SGLT2 inhibitors and GLP1 agonists administered without metformin compared to other glucose-lowering drugs in patients with type 2 diabetes mellitus to prevent cardiovascular events: A systematic review – PubMed
Carlos Escobar et al. PMID: 33368612 DOI: 10.1111/dme.14502
Diabet Med. 2021 Mar;38(3):e14502. doi: 10.1111/dme.14502. Epub 2021 Jan 4.
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33368612/

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