安定狭心症患者の心血管系アウトカムに対するイバブラジンの効果はどのくらい?(RCTのSR&MA; BMC Cardiovasc Disord. 2017)

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日本での適応症は慢性心不全だが…

イバブラジン(コララン®️)は、2019年に発売された新薬です。また、過分極活性化陽イオン電流(If)を抑制する新規機序の薬剤です。日本で承認されている適応症は以下の通りです;

洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

イバブラジンは、開発段階において、心不全よりも冠動脈疾患の治療薬として臨床試験が進められていました。しかし、心血管関連死亡率および罹患率の減少において、一貫性のないエビデンスが得られ、さらに左室駆出力(Ejection Fraction, EF)が低下した心不全(HFrEF)患者への応用について可能性が示されたことから、前述の適応での承認となりました。

今回は、安定狭心症やHFrEF(虚血性心疾患に起因する心不全が大半)を含む冠動脈疾患患者を対象とした場合に、イバブラジンの有効性・安全性に新たな知見が得られるのか検証したメタ解析の結果をご紹介します。

研究結果から明らかになったことは?

合計36,577例が参加した試験3件のプール解析の結果、イブラジンは心血管死(OR 1.02、CI 0.91~1.15、P=0.74)、全死亡(OR 1.00、CI 0.91~1.10、P=0.98) 、冠動脈再灌流(OR 0.93、CI 0.77~1.11、P=0.41)、心不全悪化による入院(OR 0.94、CI 0.71~1.25、P=0.69)の減少には効果がないことが示されました

 有効性アウトカムオッズ比(信頼区間)
心血管死1.02(0.91〜1.15)
全死亡1.00(0.91〜1.10)
冠動脈再灌流0.93(0.77〜1.11)
心不全悪化による入院0.94(0.71〜1.25)

一方、眼内閃光(OR 7.77、CI 4.4~14.6、P<0.00001)、霧視(OR 3.07、CI 2.18〜4.32、P<0.00001)、症候性徐脈(OR 6.23、CI 4.2〜9.26、P<0.00001)、心房細動(OR 1.35、CI 1.19〜1.53、P<0.0001)などの有害事象について、有意な増加が示されました

有害事象アウトカムオッズ比(信頼区間)
眼内閃光7.77(4.4~14.6)
霧視3.07(2.18〜4.32)
症候性徐脈6.23(4.2〜9.26)
心房細動1.35(1.19〜1.53)

心血管アウトカムに関するフォローアップ期間別のサブグループ解析では、フォローアップ期間によるイブラジンの効果に差がないことが明らかとなりました。また、含まれた研究の報告には出版バイアスは認められなかったようです。

大規模臨床試験3件のメタ解析ですので、研究数は少ないですが、サンプルサイズは充分です。今後の試験結果により結果が覆る可能性は低いと考えられます。しかし、試験期間はいずれも30ヵ月未満ですので、長期的な安全性については、今後のデータ集積が待たれます。

今後は、どのような患者でイバブラジン治療による益が最大化するのか、副作用を軽減できるのか明らかにする必要があると考えます。

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✅まとめ✅ 安定狭心症に対するイバブラジン使用は、心血管関連の罹患率および死亡率の低下には効果がなく、有害事象を有意に増加させた

根拠となった論文の抄録

背景:心血管疾患の治療薬は確立されているが、副作用のため、すべての患者に臨床適用できるとは限らない。最近の傾向として、変電流チャネルに作用して選択的な心拍数低下を誘導する薬剤が登場している。イバブラジンはそのような薬剤の一つであり、冠動脈疾患や心不全の治療薬として開発されている。この選択的阻害薬による心血管関連死亡率および罹患率の減少において、一貫性のない証拠がある。このような矛盾は、冠動脈疾患や心不全の治療におけるイブラジンの有効性と有効性を検討するためのメタアナリシスの必要性を保証するものである。

方法:Pub Med/Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(1980年から2016年の間に発表されたランダム化比較試験)で、フォローアップ期間が1年以上のランダム化比較試験を検索し、Cochrane Risk of Bias Assessmentツールを使用してバイアスリスクを評価した。本研究で評価されたアウトカムには、全死亡率、心血管関連死亡率、心不全の新規または悪化による入院、有害事象が含まれている。サブグループ解析と出版バイアスを評価した。ランダム効果には Mantel-Haenszel法を用いた。解析はRevMan5.1™を用いて行い、本研究は[PROSPERO 2016: CRD42016035597]としてPROSPEROに登録された。

結果:合計36,577例が参加した試験3件がメタ解析基準を満たした。プール解析の結果、イブラジンは心血管死(OR 1.02、CI 0.91~1.15、P=0.74)、全死亡(OR 1.00、CI 0.91~1.10、P=0.98) 、冠動脈再灌流(OR 0.93、CI 0.77~1.11、P=0.41)、心不全悪化による入院(OR 0.94、CI 0.71~1.25、P=0.69)の減少には効果がないことが示された。しかし、有害事象の有意な増加が示された:眼内閃光(OR 7.77、CI 4.4~14.6、P<0.00001)、霧視(OR 3.07、CI 2.18〜4.32、P<0.00001)、症候性徐脈(OR 6.23、CI 4.2〜9.26、P<0.00001)、心房細動(OR 1.35、CI 1.19〜1.53、P<0.0001)。
心血管アウトカムに関するフォローアップ期間別のサブグループ解析では、フォローアップ期間によるイブラジンの効果に差がないことがわかった。また、含まれた研究の報告には出版バイアスは認められなかった。

結論:このメタアナリシスでは、特定の病態に使用しない限り、イブラジンは心血管関連の罹患率および死亡率の低下には効果がないことが示唆された。それどころか、この薬剤の使用は、望ましくない有害事象や新たな有害事象の発症と強く関連していた。この知見は、これまでの知見を強く支持し、イブラジンの合理的でエビデンスに基づいた臨床使用をさらに促進するものである。

引用文献

Effect of ivabradine on cardiovascular outcomes in patients with stable angina: meta-analysis of randomized clinical trials – PubMed
BMC Cardiovasc Disord. 2017 Apr 28;17(1):105. doi: 10.1186/s12872-017-0540-3.
PMID: 28454527 PMCID: PMC5410064 DOI: 10.1186/s12872-017-0540-3
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28454527/

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