心不全のタイプにより心房細動・心不全患者の脳卒中及び全身性塞栓症リスクは異なりますか?(レジストリ研究; ESC Heart Fail. 2021)

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心不全のタイプにより脳卒中と全身性塞栓症リスクは異なる?

心不全は心臓の機能が低下し、血流が滞る症候群です。また心不全患者では、心房細動を合併する確率が高く、脳卒中や塞栓症のリスク増加が報告されています。

心不全は、駆出率により大きく3つに分けられますが、この3タイプによる脳卒中や塞栓症リスクへの影響は不明です。

そこで今回は、心房細動患者における駆出率の差異と脳卒中や塞栓症リスクとの関係を検証した研究をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

心房細動患者10,780例を対象とした本試験結果によれば、前向きレジストリに登録されたHF患者は総人口の10.3%を占め、HFpEFは43.7%、HFmrEFは23.6%、HFrEFは32.7%であり、CHA2DS2-VAScスコアは、HFpEF、HFmrEF、HFrEF群では、HFなし群に比べて有意に高いことが明らかとなりました。心不全タイプによる脳卒中・全身性塞栓症リスクは下表の通りで、HFpEFで最も高い値を示しました。年間発生率が高いことから、累積発生率についてもHFpEFで有意に高値であり、22.8±10.0ヵ月(P=0.020)でした。

心不全合併の有無
及び
心不全のタイプ
脳卒中・全身性塞栓症リスク
年間発生率
HFpEF2.8%
HFmrEF0.7%
HFrEF1.1%
心不全なし0.9%

また、脳卒中・全身性塞栓症リスクは、HFmrEF群およびHFrEF群と比較して、HFpEF群で有意に高く、ハザード比 3.192(95%CI 1.039~9.810;P=0.043)でした。
一方で、大出血の発生率には群間で有意差はありませんでした。

あくまでも相関関係が認められたにすぎませんが、これまでの研究結果と矛盾しません。

心房細動患者における心不全合併例においては、HFpEFでの脳卒中・全身性塞栓症リスクが高そうです。

HFpEF患者に対する早期の治療戦略構築が求められます。

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✅まとめ✅ 脳卒中・全身性塞栓症リスクはHFpEF群が最も高く、HFmrEF群とHFrEF群の間では同等であった。

根拠となった論文の抄録

目的:本研究は、心房細動・心不全患者における脳卒中および全身性塞栓症(SE)のリスクをHFのタイプ別に明らかにすることを目的とした。

方法:心房細動患者10,780例が多施設のプロスペクティブ・レジストリに登録され、HFのタイプ別に、HFなし、駆出率保存型HF(HFpEF)、中間EF(HFmrEF)、およびEF低下型HF(HFrEF)に分けられた。各群には、年齢と性別をマッチさせた患者 237例が含まれていた(年齢 69.0±10.3歳、男性 69.6%)。ベースラインの特徴、脳卒中/SEおよび大出血の累積発生率、ハザード比を各群で比較した。
結果:HF患者は総人口の10.3%を占め、HFpEFは43.7%、HFmrEFは23.6%、HFrEFは32.7%であった。
CHA2DS2-VAScスコアは、HFpEF、HFmrEF、HFrEF群では、HFなし群に比べて有意に高かった。
脳卒中/SEの年間発生率は、HFpEF群で2.8%、HFmrEF群で0.7%、HFrEF群で1.1%、HFなし群で0.9%であった。
脳卒中/SEの累積発生率は、HFpEF群が22.8±10.0ヵ月で有意に最も高かった(P=0.020)。
脳卒中/SEリスクは、HFmrEF群およびHFrEF群よりもHFpEF群の方が高かった(ハザード比 3.192;95%信頼区間 1.039~9.810;P=0.043)。
E/e’値は脳卒中/SEの独立した危険因子であった。大出血の発生率には群間で有意差はなかった。

結論:脳卒中/SEリスクはHFpEF群が最も高く、HFmrEF群とHFrEF群の間では同等であった。

引用文献

Stroke and systemic embolism in patients with atrial fibrillation and heart failure according to heart failure type – PubMed
Jae-Sun Uhm et al.
ESC Heart Fail. 2021 Feb 25. doi: 10.1002/ehf2.13264. Online ahead of print.
PMID: 33634593 DOI: 10.1002/ehf2.13264
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33634593/

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