慢性腎臓病(CKD)の進行を予防するための最適な水分摂取量はどのくらいですか?

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慢性腎臓病(CKD)患者は水分摂取量を増やした方が良いのか?

腎機能が低下しているCKD患者において、水分摂取量を増やすのか、減らすのかについては議論が分かれています。過去に検討された試験において、ステージ1及び2のCKD患者においては、水分摂取量を増やすことで、腎機能低下を抑制できる可能性が示唆されています。一方、ステージ3以降においては、水分摂取量を増やすことで腎機能が低下する可能性が報告されています。しかし、いずれもコホート研究の結果であり、相関関係が示されたにすぎません。

では、ランダム化比較試験の結果はというと、ステージ3を対象としたCKD患者において水分摂取量を増やすよう指導しても、通常摂取群と比較して、1年後の腎機能低下において差はありませんでした(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29801012/)。

このように、CKD患者における水分摂取量については結論が得られていません。

今回ご紹介するのは、CKD患者1,265例(年齢中央値 69歳、eGFR 32mL/min/1.73m2)を対象としたCKD-REINコホート研究の結果です。

研究結果から明らかになったことは?

本試験結果によれば、総水摂取量および尿量はいずれも腎不全アウトカムとは関連していませんでした。一方、腎不全リスクは尿浸透圧が292mosm/L以下に低下すると有意に増加していました。

また普通水摂取量に関連する腎不全の調整後ハザード比(aHR)は、摂取量1.0~1.5L/日の患者と比較して、0.5L/日で1.88(95%CI 1.02〜3.47)、0.6~1.0L/日で1.59(1.06〜2.38)、1.6~2.0L/日で1.76(0.95〜3.24)、および2.0L/日以上で1.55(1.03〜2.32)でした。

普通水摂取量腎不全 aHR(95%CI)
0.5L/日1.88(1.02〜3.47)
0.6〜1.0L/日1.59(1.06〜2.38)
1.0~1.5L/日Reference
1.6~2.0L/日1.76(0.95〜3.24)
2.0L/日以上1.55(1.03〜2.32)

さらに、普通水の摂取量が多い場合は、より速いeGFR低下と有意に関連していました。

CKD患者1,265例(年齢中央値 69歳、eGFR 32mL/min/1.73m2)を対象としたCKD-REINコホートにおいては、水分摂取量が1.0~1.5L/日より多くても少なくても腎不全リスクが増加する可能性が示されました。しかし、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。どのような患者で水分摂取量を増やした方が良いのか、それとも減らした方が良いのかについて検証していく必要があると考えます。

結局は、一般化として水分摂取量の目安を1.0~1.5L/日とし、体液貯留や検査値モニタリングにより個別化を図ることになるのかもしれませんが、続報を待ちたいと思います。

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✅まとめ✅ CKD患者の腎アウトカムに対する水分摂取量は、1.0~1.5L/日と比較して、多くても少なくても腎不全進展のリスクとなるかもしれない

根拠となった論文の抄録

背景:慢性腎臓病(CKD)の進行を予防するための最適な水分摂取量/日は不明である。腎臓の尿濃縮能力を考慮し、CKD患者の腎臓アウトカムと総水分摂取量・普通水摂取量および尿量との関係を検討した。

方法:CKD-REINコホート(2013年~2019年)のCKD患者1,265例(年齢中央値 69歳、平均推定糸球体濾過率[eGFR] 32mL/min/1.73m2)を対象に、ベースライン時の水分摂取量、24時間尿量、尿浸透圧(eUosm)の推定値を評価した。
Coxおよび線形混合モデルを用いて、CKD進行リスク因子とeUosmを調整した上で、水分補給マーカーに関連する腎不全およびeGFR低下のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

結果:患者の1日摂取量の中央値は、総水分2.0(四分位間範囲 1.6~2.6)L、普通水1.5(1~1.7)L、尿量1.9(1.6~2.4)L/24時間、平均eUosmは374±104mosm/Lであった。
総水摂取量および尿量はいずれも腎不全アウトカムとは関連していなかった。
腎不全リスクは尿浸透圧が292mosm/L以下に低下すると有意に増加した。
普通水摂取量に関連する腎不全の調整後HRは、摂取量1.0~1.5L/日の患者と比較して、0.5L/日で1.88(95%CI 1.02〜3.47)、0.6~1.0L/日で1.59(1.06〜2.38)、1.6~2.0L/日で1.76(0.95〜3.24)、および2.0L/日以上で1.55(1.03〜2.32)であった。また、普通水の摂取量が多い場合は、より速いeGFR低下と有意に関連していた。

結論:CKD患者では、普通水の摂取量と腎不全への進行との関係はU字型であるように思われる。CKD患者では、水分量の低摂取も高摂取も有益ではない可能性がある。

引用文献

Water intake and progression of chronic kidney disease: the CKD-REIN cohort study – PubMed
Sandra Wagner et al. Nephrol Dial Transplant. 2021 Feb 12;gfab036. doi: 10.1093/ndt/gfab036. Online ahead of print. PMID: 33576809 DOI: 10.1093/ndt/gfab036
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33576809/

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