COVID-19患者の嗅覚異常は、コルチコステロイド点鼻で改善できるのか?

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ステロイド点鼻でCOVID-19患者の嗅覚異常は改善するのか?

COVID-19患者において無嗅覚症が報告されている

COVID-19感染者は主に発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部圧迫感などの下気道症状を呈しますが、一部の患者では咽頭痛、鼻づまり、鼻漏、嗅覚障害などの上気道症状を呈することがあります。

欧州鼻学会(European Rhinologic Society, ERS)は、COVID-19患者の症状(20~60%)の中で重要な部分を占めている「嗅覚障害」についての勧告を発表しました。COVID-19の患者では、他の症状(咳、発熱、呼吸困難)よりも先に嗅覚消失が現れることがあります。突然発症した嗅覚障害を有する患者は、COVID-19陽性であると考えるべきであるとされています。

利用可能なエビデンスに基づいて、嗅覚トレーニングはウイルス性後嗅覚機能障害の治療に推奨されています。局所的なコルチコステロイドは、抗炎症作用の他に、嗅覚Na-K-ATPaseへの作用を通じて嗅覚受容体ニューロンの機能を調節することで嗅覚機能を改善するという仮説が立てられています。2004 年、Heilmannらは、嗅覚障害のある患者を対象に、コルチコステロイドの全身投与と外用投与の効果を比較研究し、モメタゾン点鼻スプレーの局所投与により嗅覚の改善が認められました。嗅覚機能の改善は、特発性、上気道感染症、副鼻腔疾患、外傷後など、嗅覚機能障害の原因が異なる場合に見られています。

無嗅覚症に対するステロイド点鼻の効果はどのくらいか?

今回ご紹介する論文では、嗅覚トレーニングを対照として、モメタゾン点鼻スプレー(日本ではナゾネックス®️)による無嗅覚症への効果を検証しています。

その結果、介入前と比較して、両群とも3週目の終わりまでに嗅覚スコアは有意に改善しました(P < 0.001)。投与1週間後、2週間後、3週間後の嗅覚スコアを比較したところ、両群間に統計学的に有意な差は認められませんでした。治療3週間後に嗅覚が完全に回復した患者は、介入群で62%(31/50例)、対象群で52%(26/50例)でした。絶対差としては10%でしたが、統計学的には差がありませんでした(P=0.31)。

嗅覚が完全に回復するまでの平均日数は26.29±6.76日で、3週目の終わりまでには57%が回復していました。

治療開始前と比較して、治療により約6割の患者で嗅覚が改善するようです。嗅覚トレーニング、モメタゾン点鼻、どちらを実施しても良いのかもしれません。

根拠となった論文の抄録

目的:COVID-19後の無嗅覚症の治療における外用コルチコステロイドであるフランカルボン酸モメタゾンの経鼻スプレーの役割を評価すること。

方法:COVID-19後の無嗅覚症患者を対象に、前向きランダム化比較試験を実施した。患者100例を2群にランダム割り付けし、介入群50例にはフランカルボン酸モメタゾン点鼻スプレーを1日1回2噴霧(100μg)の適量で3週間嗅覚訓練を行い、対象群50例には嗅覚訓練のみを継続させた。嗅覚の評価はVisual Analog Scale(0~10)を用いて行った。すべての患者はCOVID-19からの回復後に最初に評価され、3週間フォローアップされた。嗅覚スコアは毎週記録され、無嗅覚症の発症から完全に回復するまでの嗅覚喪失の期間が記録された。

結果:両群とも、3週目の終わりまでに嗅覚スコアは有意に改善した(P < 0.001)。投与1週間後、2週間後、3週間後の嗅覚スコアを比較したところ、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった。介入群では、治療3週間後に嗅覚が完全に回復した患者は(62%)であったのに対し、対象群では(52%)であった(P = 0.31)。

結論:以上の結果から、COVID-19後の無嗅覚症の治療において、外用コルチコステロイドとしてフランカルボン酸モメタゾン点鼻スプレーを使用しても、嗅覚スコア、無感覚症の持続時間、回復率に関して、嗅覚トレーニングを上回る利点はないことが示唆された。

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✅まとめ✅ COVID-19後の無嗅覚症の治療において、フランカルボン酸モメタゾン点鼻スプレーを使用しても、嗅覚スコア、無感覚症の持続時間、回復率に関して、嗅覚トレーニングを上回る利点はないことが示唆された

引用文献

Corticosteroid nasal spray for recovery of smell sensation in COVID-19 patients: A randomized controlled trial
Abdelrahman Ahmed Abdelalim et al.
Am J Otolaryngol. 2021 Jan 4;42(2):102884. doi: 10.1016/j.amjoto.2020.102884. Online ahead of print. PMID: 33429174 DOI: 10.1016/j.amjoto.2020.102884

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