Effects of Candesartan vs Lisinopril on Neurocognitive Function in Older Adults With Executive Mild Cognitive Impairment: A Randomized Clinical Trial
Ihab Hajjar et al.
JAMA Netw Open. 2020 Aug 3;3(8):e2012252. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.12252.
PMID: 32761160
PMCID: PMC7411539
DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2020.12252
Trial registration: ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01984164.
試験の重要性
観察研究では、アンジオテンシン受容体遮断薬が特異的な認知保護と関連していることが示唆されている。これが血圧(BP)の低下によるものなのか、アンジオテンシン受容体1型遮断によるものなのかは不明である。
目的
軽度認知障害(MCI)を有する高齢者におけるカンデサルタン vs. リシノプリルの神経認知効果を検討する。
試験デザイン、設定、および参加者
このランダム化臨床試験は、MCIと高血圧症を有する55歳以上の参加者を対象とした。参加者は、2014年6月から2018年12月までの間に、以前の降圧療法を中止し、カンデサルタンまたはリシノプリルに1対1の割合でランダム割り付けされた。
参加者はベースライン時、6ヵ月後と12ヵ月後に認知評価を受けた。脳磁気共鳴画像はベースライン時と12ヵ月時に取得した。このintent-to-treat研究は二重盲検で、サンプルサイズに対するpowerは脱落20%を占める。データは2019年5月~10月に解析した。
介入
経口カンデサルタン(最大32mg*)またはリシノプリル(最大40mg**)の1日1回の漸増投与。BPが140/90mmHg未満になるように、必要に応じてオープンラベル降圧薬治療を追加した。
*日本での承認用量:上限8〜12mg/日
**日本での承認用量:5〜20mg/日(適宜増減あり)
主要アウトカムおよび測定法
主要アウトカムは、実行機能(Trail Making Test、Executive Abilitiesを用いて測定)。
副次的アウトカムは、エピソード記憶(Hopkins Verbal Learning Test-Revisedを用いて測定)と白質病変の磁気共鳴画像による脳微小血管障害であった。
結果
・ランダム化された176例(平均年齢 66.0[7.8]歳、女性 101例[57.4%]、アフリカ系アメリカ人113例[64.2%])のうち、87例がカンデサルタンに、89例がリシノプリルに割り付けられた。このうち、カンデサルタン群 77例、リシノプリル群 64例を含む141例が試験を終了した。
・リシノプリル群とカンデサルタン群の血圧値は同程度であったが(12ヵ月平均収縮期血圧:130 [17] mmHg vs. 134 [20] mmHg、P = 0.20、12ヵ月平均拡張期血圧:77 [10] mmHg vs. 78 [11] mmHg、P = 0.52)、カンデサルタンはリシノプリルよりもTrail Making Test Part B(効果量[ES]=-12.8 [95%CI -22.5~ -3.1])で測定される実行機能の主要アウトカムにおいて優れていたが、実務機能(神経行動評価・研究のための機器と尺度のスコア、ES = -0.03 [95%CI -0.08~0.03]))では優れていなかった。
・カンデサルタンは、Hopkins Verbal Learning Test-Revisedの副次的アウトカムである遅発性想起(ES = 0.4 [95% CI, 0.02~0.8])および記憶保持(ES = 5.1 [95% CI, 0.7~9.5])においてもリシノプリルより優れていた。
結論と関連性
これらの知見は、MCIを有する高齢者において、カンデサルタンの1年間の治療はリシノプリルと比較して優れた神経認知アウトカムを有していたことを示唆している。これらの効果は、カンデサルタンの血圧低下作用とは無関係であると考えられる。
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