The Safety and Efficacy of Aspirin Discontinuation on a Background of a P2Y 12 Inhibitor in Patients After Percutaneous Coronary Intervention: A Systematic Review and Meta-Analysis
Michelle L O’Donoghue et al.
Circulation. 2020 Aug 11;142(6):538-545. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046251. Epub 2020 Jun 19.
PMID: 32551860
DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046251
Keywords: anticoagulants; aspirin; percutaneous coronary intervention; platelet aggregation inhibitor.
背景
アスピリンとP2Y12阻害薬の二重抗血小板療法は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または急性冠症候群後にアスピリン単独療法と比較して主要有害心血管イベント(MACE)のリスクを減少させるが、出血のリスクは増加することが示されている。P2Y12阻害薬単剤療法の有益性におけるアスピリン中止の安全性は、依然として論争の的となっている。
方法
PCI後1~3ヵ月のアスピリン中止とP2Y12阻害薬単剤療法の継続を、従来の抗血小板二重療法と比較検討したランダム化試験(2001~2020年)からメタアナリシスを実施した。
試験5件が含まれており、追跡期間はPCI後12~15ヵ月であった。
一次出血とMACEのアウトカムは各試験で事前に定義されたものであった。
結果
・研究集団には患者32,145例が含まれており、安定した冠動脈疾患は14,095例(43.8%)、急性冠症候群は18,046例(56.1%)であった。
・試験(介入)群において、P2Y12阻害薬のバックグラウンド使用は、クロピドグレルが2,649例(16.5%)、プラスグレルまたはチカグレロルが13,408例(83.5%)含まれていた。
・合計820例が一次出血を経験し、937例がMACEを経験した。
・PCI後1~3ヵ月間のアスピリン治療の中止は、二重抗血小板療法と比較して大出血のリスクを40%有意に減少させた(1.97% vs. 3.13%;ハザード比[HR] 0.60[95%CI 0.45〜0.79])、MACE(2.73% vs. 3.11%;HR 0.88[95%CI 0.77〜1.02])、心筋梗塞(1.08% vs. 1.27%;HR 0.85[95%CI 0.69〜1.06])、または死亡(1.25% vs. 1.47%;HR 0.85[95%CI 0.70〜1.03])のリスクの増加は観察されなかった。
・急性冠症候群のためにPCIを受けた患者では、1~3ヵ月後にアスピリンを中止しても出血は50%減少し(1.78% vs. 3.58%;HR 0.50[95%CI 0.41〜0.61])、MACEリスクは増加しなかったようである(2.51% vs. 2.98%;HR 0.85[95%CI 0.70〜1.03])。
結論
P2Y12阻害薬単剤療法を継続しながらアスピリンを中止すると、PCI後1~3ヵ月で中止した場合に出血リスクが低下する。急性冠症候群患者を含め、アスピリン中止後のMACE リスクの増加は認められなかった。
コメント
急性冠症候群患者における、PCI後の二重抗血小板療法(DAPT)実施期間については議論の余地があります。
STOPDAPT-2試験では、PCIを受けた患者において、DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の1ヵ月と12ヵ月を比較した場合に、MACE発生に差がありませんでした(むしろ低下傾向)。
また、TICO試験では、DAPT(アスピリン+チカグレロル)の1ヵ月と12ヵ月を比較した場合に、MACE発生に差がありませんでした。
さて、本メタ解析の結果では、1〜3ヵ月のDAPT(アスピリン+P2Y12阻害薬)後のP2Y12阻害薬単剤療法は、アスピリンを中止しなかった場合と比較して、MACEを増加させず、出血リスクを低下させました。
- 大出血リスク:HR 0.60、95%CI 0.45〜0.79
- MACE:HR 0.88、95%CI 0.77〜1.02
- 心筋梗塞:HR 0.85、95%CI 0.69〜1.06
- 死亡:HR 0.85、95%CI 0.70〜1.03
本メタ解析の結果だけでは、DAPT実施期間について明確な答えは出せませんが、少なくとも12〜24ヵ月実施する意義は少ないように思います。
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