Effect of Levothyroxine on Left Ventricular Ejection Fraction in Patients With Subclinical Hypothyroidism and Acute Myocardial Infarction: A Randomized Clinical Trial
Avais Jabbar et al.
JAMA. 2020 Jul 21;324(3):249-258. doi: 10.1001/jama.2020.9389.
PMID: 32692386
Trial registration: isrctn.org Identifier: http://www.isrctn.com/ISRCTN52505169.
試験の重要性
甲状腺ホルモンは心筋収縮力の調節に重要な役割を果たしている。急性心筋梗塞患者における無症候性甲状腺機能低下症は予後不良と関連している。
目的
急性心筋梗塞および無症候性甲状腺機能低下症患者におけるレボチロキシン治療の左室機能への影響を評価する。
試験デザイン、設定、参加者
英国の病院6施設で実施された二重盲検ランダム化臨床試験。
ST上昇と非ST上昇を含む急性心筋梗塞患者を2015年2月~2016年12月に募集し、最後の参加者は2017年12月に追跡調査した。
介入
血清チロトロピン(サイロトロピン)値が0.4~2.5mU/L(μIU/mL)の間を目指して、レボチロキシン治療(n=46)25μg用量をタイトレーション、または同一のプラセボ(n=49)を開始した。どちらもカプセルで1日1回、52週間投与した。
主要アウトカムおよび測定法
主要アウトカムは52週目の左室駆出率で、年齢、性別、急性心筋梗塞の種類、冠動脈領域、ベースラインの左室駆出率を調整し、磁気共鳴画像法で評価した。
副次的アウトカムは、左室容積、梗塞の大きさ(サブグループ[n = 60]で評価)、有害事象、健康状態、健康関連QOL、うつ病の患者報告アウトカム尺度であった。
結果
・ランダム化された参加者95例のうち、平均年齢(SD)は63.5歳(9.5歳)、男性は72例(76.6%)、ST上昇型心筋梗塞は65例(69.1%)だった。
・血清チロトロピン値中央値は5.7mU/L(四分位範囲 4.8~7.3mU/L)、遊離チロキシン値の平均(SD)は1.14(0.16)ng/dLであった。
・52 週目の主要アウトカム測定は 85 例(89.5%)で実施した。ベースライン時および52週目の平均左室駆出率は、レボチロキシン群でそれぞれ51.3%および53.8%であったのに対し、プラセボ群ではそれぞれ54.0%および56.1%であった。
★調整後群間差 =0.76%、95%CI -0.93%~2.46%;P=0.37
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・副次的アウトカムの6つのいずれにおいても、レボチロキシン治療群とプラセボ治療群の間で有意差を示さなかった。
・心血管有害事象は、レボチロキシン群で15件(33.3%)、プラセボ群で18件(36.7%)であった。
結論および関連性
無症候性甲状腺機能低下症と急性心筋梗塞を有する患者を対象とした本予備試験では、レボチロキシン投与はプラセボと比較して52週後の左室駆出率を有意に改善しなかった。
これらの所見は、急性心筋梗塞患者における無症候性甲状腺機能低下症の治療を支持するものではない。
コメント
無症候性甲状腺機能低下症患者におけるレボチロキシン(チラーヂン®️)投与は、更なる益がないことについては過去に報告されています。ただし、本試験に組み入れられた患者よりも高齢でした。また急性心筋梗塞患者における無症候性甲状腺機能低下症は予後不良と関連していることも報告されています。
さて、本試験結果によれば、無症候性甲状腺機能低下症および急性心筋梗塞を有する患者において、レボチロキシンの投与は、プラセボと比較して、52週後の左室駆出率を改善しませんでした。
小規模かつソフトアウトカムの検討結果ではありますが、52週間のレボチロキシン投与による心筋収縮力への影響は認められませんでした。薬理作用とパラレルではないようですが、なぜ甲状腺刺激ホルモン投与の有効性が認められないのかについては検証の必要がありそうです。
少なくとも現時点における無症候性甲状腺機能低下症および急性心筋梗塞患者に対するレボチロキシン投与の益はなさそうです。
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