インフルエンザ入院患者における非ステロイド性抗炎症薬使用のリスクはどのくらいですか?(デンマーク人口ベースPSマッチング コホート研究; JAMA Netw Open. 2020)

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Association of Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug Use and Adverse Outcomes Among Patients Hospitalized With Influenza

Lars Christian Lund et al.

JAMA Netw Open. 2020 Jul 1;3(7):e2013880. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.13880.

PMID: 32609352

DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2020.13880

試験の重要性

進行中のコロナウイルス疾患2019パンデミックの間、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用が有害な転帰につながる可能性があることが症例報告で示唆されている。

目的

インフルエンザまたはインフルエンザ肺炎で入院した患者における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用と有害アウトカムとの関連を検討する。

試験デザイン、設定、参加者

このコホート研究では、2010年から2018年の間にインフルエンザ(ポリメラーゼ連鎖反応または抗原検査で確認)で入院した40歳以上の7,747例を対象に、傾向スコアマッチングを用いた。

データはデンマーク全国の登録簿を用いて収集した。報告されたすべての解析は、2020年5月29日に実施された。

曝露

入院前60日以内のNSAIDs処方

主要アウトカムおよび測定法

集中治療室入院および入院後30日以内の死亡に対する95%CIを有するリスク比(RR)およびリスク差(RD)。

結果

・インフルエンザが確認された合計7,747例(中央値[四分位間範囲]年齢 71[59~80]歳、男性 3,980例[51.4%])を同定した。このうち、520例(6.7%)が NSAIDs に曝露されていた。

・非対照コホートでは、NSAIDsを使用した520例中104例(20.0%)と、NSAIDsを使用しなかった7,227例中958例(13.3%)が集中治療室に入院した。

・入院後30日以内の死亡については、NSAIDsを使用した患者では37件(7.1%)、使用しなかった患者では563件(7.8%)であった。

・現在のNSAIDs使用は集中治療室入院と関連していた。

★RR =1.51、95%CI 1.26~1.81

★RD =6.7%、95%CI 3.2%~10.3%

・NSAIDs使用は死亡とは関連していなかった。

★RR =0.91、95%CI 0.66~1.26

★RD =-0.7%、95%CI -3.0%~1.6%

・マッチしたコホートでは、NSAIDsを使用した患者のリスクは変わらなかったが、マッチさせたNSAIDs非使用患者では、ICU入院83例(16.0%)と死亡36例(6.9%)が観察された。

・マッチさせた(調整した)解析では、集中治療室入院(RR =1.25、95%CI 0.95~1.63;RD =4.0%、95%CI -0.6%~8.7%)および死亡(RR =1.03、95%CI 0.66~1.60;RD =0.2%、95%CI -2.9%~3.3%)のリスク推定値が減少した。

・NSAIDsを長期間使用した患者では、関連性がより顕著であった(例えば、集中治療室入院 RR =1.90、95%CI 1.19~3.06;RD =13.4%、95%CI 4.0%~22.8%)。

結論と関連性

インフルエンザで入院した成人患者を対象としたこのコホート研究では、NSAIDs使用は、調整解析において30日間の集中治療室入院または死亡とは関連していなかった。NSAIDsの長期使用と集中治療室入院との間には関連があった。

コメント

COVID-19患者におけるNSAIDs使用による害が、治療による益を上回る可能性が報告されています。またインフルエンザ患者におけるNSAIDs使用は、脳症(ライ症候群)などのリスクを増加させることが報告されています。今回の研究では、インフルエンザ患者集団を対象としたNSAIDs使用による害について検証しています。

さて、本試験結果によれば、インフルエンザ患者におけるNSAIDs使用は、NSAIDs非使用者と比較して、30日間の集中治療室入院や死亡リスクを増加させませんでした。ただし、集中治療室入院については、リスク比 1.25(95%CI 0.95~1.63)と増加傾向です。一方、より長期のNSAIDs使用は、集中治療室入院リスクを増加させました。

過去のコホート研究では、期間だけでなく、各NSAIDの用量依存的な、心血管イベントなど有害リスク増加の可能性が報告されています。一方、本試験においては、個々のNSAIDや用量のサブ解析について検討していないようです。さらに本試験のレジストリの特徴として、OTCデータを拾うことは困難であると考えられます。

個人的には、アウトカムである死亡について、本試験デザインで捉えることは困難であると考えます。またコホート研究(およびコホート内症例対照研究)であることから、あくまでも仮説生成的な結果であると考えます。とはいえ、過去の臨床試験の結果と大きく解離してはいないと考えます。

各言葉の定義については以下の通り;

  • 現在の使用(current use):入院前60日以内に非ステロイド性抗炎症薬の処方箋が1枚以上あることと定義。
  • インシデント使用(incident use):1年間のウォッシュアウト期間を経て、入院前14日間に初めてNSAIDを再使用したことと定義。
  • 長期使用(chronic use):現在の使用の部分集団と定義され、前年に定義された1日当たり平均0.5回分のNSAIDs(例えば、イブプロフェン600mgまたはジクロフェナク50mg/日に相当)を再使用したことを追加要件として定義。

✅まとめ✅ インフルエンザ入院患者におけるNSAIDs使用は、30日間の集中治療室入院または死亡リスクと関連していないかもしれない。一方、NSAIDs長期使用は集中治療室入院リスクを増加させるかもしれない。

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