慢性腎臓病の有無にかかわらず糖尿病患者におけるDPP-4阻害薬に関連した心血管イベントのリスクはどのくらいですか?(台湾 人口ベース後向きコホート研究; PLoS One. 2019)

Risk of Cardiovascular Events Associated With Dipeptidyl peptidase-4 Inhibitors in Patients With Diabetes With and Without Chronic Kidney Disease: A Nationwide Cohort Study

Tzu-Lan Huang et al.

PLoS One. 2019 May 21;14(5):e0215248. doi: 10.1371/journal.pone.0215248. eCollection 2019.

PMID: 31112536

PMCID: PMC6528980

DOI: 10.1371/journal.pone.0215248

背景

経口血糖降下剤に関連する心血管イベントは、安全性に大きな懸念がある。本試験では、慢性腎臓病(CKD)を有するか否かにかかわらず、2型糖尿病患者におけるジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4i)と心血管イベントのリスクとの関連を評価した。

研究デザイン

台湾の国民健康保険研究データベースを用いたレトロスペクティブコホート研究。

試験設定と参加者

本研究では、2009年3月1日から2012年12月31日までの間に経口血糖降下剤を投与された2型糖尿病患者を対象とした。

対象者はすべてCKDコホートと非CKDコホートに分類し、さらに各コホートのDPP-4i使用者と非DPP-4i使用者に分類した。

方法

DPP-4i群と非DPP-4i群は、潜在的な選択バイアスを軽減するために、プロペンシティスコアによって1対1のマッチングを行った。

プロペンシティスコアは、ベースライン時の人口統計学、併用薬、併存疾患、適応糖尿病合併症重症度指数を用いて、ロジスティック回帰法により推定した。

アウトカム

アウトカムには、虚血性脳卒中、心筋梗塞、心血管死(主要有害心イベント[MACE])、心不全による入院(hHF)の複合エンドポイントが含まれた。

COX比例ハザードモデルを適用し、DPP-4iと関心のあるアウトカムとの関連を検討した。

結果

・2型糖尿病患者のうち、CKDを有する患者は37,641例、CKDを有さない患者は87,604例であった。

・プロペンシティスコアマッチング後、CKD患者8,213組(16,426例)とCKD以外の患者12,313組(24,626例)を解析対象とした。

・CKDコホートでは、DPP-4iはhHFリスクを25%増加させた(DPP-4i vs. 非DPP-4i発症率/1,000人年、15.0 vs. 9.9、HR=1.25、95%CI 1.01〜1.54、p=0.037)と関連していたが、MACEリスクとは関連していなかった(HR=0.89、p=0.144)。

・非CKDコホートでは、DPP-4iはより低いMACEリスクと関連していた(DPP-4i vs. 非DPP-4i発生率/1,000人年、9.8 vs. 12.6、HR=0.73、95%CI 0.61〜0.87、p=0.0007)と関連していたが、hHFのリスク(HR=1.09、p=0.631)とは関連していなかった。

結論

本研究では、非CKDコホートにおいてDPP-4iはMACEリスクの低下と関連していた。一方、CKDコホートでは、DPP-4iはhHFリスク増加と関連していた。CKDコホートでのDPP-4iの使用は慎重に行うべきである。

コメント

台湾における後向きコホート研究。あくまでも仮説生成的な結果ですが、CKDを有する2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬使用により心不全による入院リスクの増加が認められました(HR=1.25、95%CI 1.01〜1.54、p=0.037)。効果推定値としては、そこまで大きなリスク増加ではなく、試験規模からαエラーの可能性が高いと考えられます。

DPP-4阻害薬としては、シタグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチンが含まれていましたが、大半がシタグリプチン使用者(CKDコホート:86.1%、非CKDコホート:79.3%)でした。患者背景は不明ですが、シタグリプチンの用量調整が適切であったのかについても疑問が残ります。腎機能低下者においては、シタグリプチンを減量する必要があります。

一方、非CKDの2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬の使用はMACEリスクの低下と関連していました(CKDコホート 9.8/1,000人年 vs. 非CKDコホート 12.6/1,000人年、HR=0.73、95%CI 0.61〜0.87、p=0.0007)。こちらはβエラーとまで言えないと個人的には考えますが、これまで実施された大規模の二重盲検ランダム化比較試験においては、プラセボに対する優越性は認められていません。あくまでも本コホートにおいて、CKDを有する2型糖尿病患者集団と比較して、非CKD患者集団ではリスク低下が認められたということです。つまり、CKDそのもののMACEリスクが高いために、たまたまシタグリプチンを使用している非CKD患者集団において、MACEリスク低下が認められた可能性の方が高そうです。

したがって、CKDを有する2型糖尿病患者に対してシタグリプチンを含めたDPP-4阻害薬の積極的な使用を推奨することはできません。また同様に、非CKDの2型糖尿病患者に対してシタグリプチンを含めたDPP-4阻害薬の使用を制限することもできません。

そもそも全ての薬を慎重に使用すべきであると考えます。

✅まとめ✅ 台湾の人口ベース後向き研究において、非CKDコホートに対するシタグリプチン使用はMACEリスクの低下と関連していたが、CKDコホートでは心不全による入院リスクの増加と関連していた

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