A Systematic Review and Meta-Analysis to Evaluate the Clinical Outcomes in COVID-19 Patients on Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors or Angiotensin Receptor Blockers
Abhinav Grover et al.
Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2020 Jun 15;pvaa064. doi: 10.1093/ehjcvp/pvaa064. Online ahead of print.
PMID: 32542337
Keywords: Mortality; Angiotensin receptor blocker; Angiotensin-converting enzyme inhibitor; COVID-19; Clinical severity; Meta-analysis.
背景
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、SARS-CoV-2ウイルスと標的受容体部位を共有している。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、標的受容体部位をSARS-CoV-2ウイルスと共有しているため、ACE2受容体のアップレギュレーションを引き起こす可能性があり、COVID-19患者におけるACEIおよびARBの使用に懸念が生じている。
しかし、多くの医療専門学会は臨床的エビデンスの乏しさを考慮して継続使用を推奨しているが、最新の臨床研究のシステマティックレビューとメタアナリシスの更新が必要である。
方法
PubMed、Google Scholar、EMBASE、および各種プレプリントサーバーを用いて、ACEIおよび/またはARBsを投与されているCOVID-19患者の臨床転帰と死亡率を比較する研究を検索し、メタアナリシスを実施した。
結果
・レビューとメタアナリシスには合計16件の研究が含まれている。いくつかの研究では、重症度と死亡率に相反する所見が報告されていた。
・研究4件のプール解析では、ACEI/ARBの使用と非使用者との間に、重症化するオッズが低いこととの間に統計的に有意ではない関連が認められた。
★オッズ比(OR)=0.81、95%信頼区間(CI)0.41〜1.58、I2=50.52、P値=0.53
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・研究6件のプール解析では、ACEI/ARBの使用と非使用者と比較して死亡率のオッズが低いという統計的に有意でない関連があった。
★OR =0.86、95%CI 0.53〜1.41、I2=79.12、P値=0.55
結論
COVID-19患者ではACEIとARBは継続すべきであり、いくつかの医学会による推奨を補強するものであると結論づけられた。さらに、ACE2多型のような有害転帰のリスクを高める可能性のある個々の患者因子については、さらに評価する必要がある。
コメント
以前からCOVID-19に対するACE阻害薬あるいはARBの使用と、COVID-19の重症度や転帰に関与している可能性が報告されている。
これまでにも何件かの研究が報告されているが、一貫した結果は得られていません。ただし、メタ解析の結果は一貫しており、私が知る限りではありますが、COVID-19患者における死亡リスクの減少あるいはリスクが変わらないという結果が得られています。
さて、本試験結果によれば、組み入れられた研究の結果は一貫していないようです。しかし、研究4件の統合の結果、COVID-19の重症化について、ACE阻害薬/ARB使用者と非使用者で差は認められませんでした(I2=50.52、P値=0.53)。また研究6県の統合の結果、COVID-19の死亡率について、ACE阻害薬/ARB使用者では、非使用者と比較して死亡率オッズ比が低下傾向でした(I2=79.12、P値=0.55)。
COVID-19およびACE阻害薬/ARBについては、過去に撤回された論文もありましたが、統合された結果については変わりないように考えます。ただし、いずれのアウトカムも異質性が高いため、今後の研究により結果が変わる可能性は充分にありますが、現段階では、COVID-19に対するACE阻害薬/ARBの影響はほぼないと考えます。
無闇にACE阻害薬/ARBを中止しないようにしましょう。
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