Natural History of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection
Aki Sakurai et al.
N Engl J Med. 2020 Jun 12. doi: 10.1056/NEJMc2013020. Online ahead of print.
PMID: 32530584
DOI: 10.1056/NEJMc2013020
背景・目的
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の無症候性感染の自然経過に関する情報はまだ少ない。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でのコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の発生により、乗客・乗組員3,711例のうち712例がSARS-CoV-2に感染し、これらの感染者のうち410例(58%)が検査時に無症状であった。ここでは、このコホートの一部における無症状のSARS-CoV-2感染の自然経過を報告する。
検査時点では無症状だったSARS-CoV-2感染者96例と、船内で陰性と判定された客室乗務員32例が、2月19日から2月26日までの間にダイヤモンド・プリンセスから中部の病院に移送され、引き続き観察を継続されている。
結果
・この96例のうち11例にCovid-19の臨床症状が発現したが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査で最初に陽性が出てから中央値で4日後(離散値の範囲:3~5日、範囲:3~7日)であったため、無症状ではなく前症状であったことになる。
・症候性があるリスクは年齢の上昇とともに増加した(年齢が1年上昇するごとに症候性があることのオッズ比 =1.08;95%信頼区間[CI] 1.01~1.16)。
・船内でPCR検査が陰性であった客室乗務員32例のうち8例は、病院到着後72時間以内にPCR検査が陽性であったが、無症状のままであった。PCR検査が陽性の時点で無症状であり、感染が解消するまで(2回連続してPCR検査が陰性であった時点で)無症状であった者と定義されたSARS-CoV-2感染者90例のデータが解析対象となった。
・無症候性SARS-CoV-2感染者のグループは、乗客58例、乗員32例で、年齢中央値は59.5歳(四分位間範囲 36~68歳、範囲 9~77歳)であった。このうち、高血圧(20%)、糖尿病(9%)などの持病を持つ患者は24例(27%)であった。
・病院での最初のPCR検査は、船上での最初の陽性PCR検査から平均6日後に実施された。最初の陽性PCR検査(船上または病院での検査)から2回の連続陰性PCR検査のうち最初の1回目までの日数の中央値は9日間(縦横比範囲 6~11 日、範囲 3~21日)であり、最初の陽性PCR検査から8日後と15日後に感染が消失した人の累積割合はそれぞれ48%と90%であった。
・感染症の解消遅延リスクは年齢の上昇とともに増加した(36歳から68歳までの年齢上昇に対する解消遅延の平均値 4.41日、95%CI 2.28~6.53)。
・このコホートでは、無症状の感染者の大多数は感染の経過を通して無症状のままであった。年齢を重ねるごとに感染症が解消するまでの時間が長くなっていた。
コメント
COVID-19患者において、症状がない(無症候性)、不顕性感染である可能性が報告されています。
さて、今回の研究結果では、ダイヤモンド・プリンセス号に乗車した患者集団において、410/712例(約58%)が無症状でした。またPCR検査で陽性となってから2回連続で検査陰性となったうち、最初の陰性までの日数は9日(中央値)であり、検査陽性から8日後と15日後に感染が消失した人の累積割合はそれぞれ48%と90%でした。
一方、日本において発令された緊急事態宣言は、2020年5月25日に解除されました。またCOVID-19感染患者の退院基準が以下のように見直されました(厚生労働省 2020年6月12日発出:https://www.mhlw.go.jp/content/000639691.pdf)。
「新型コロナウイルス感染症の有症状患者について、これまで「発症日から14日間経過し、かつ、症状軽快から72時間経過した場合に退院可能」としてきたが、最新の知見を踏まえて、「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快から72時間経過した場合に退院可能」と改める―。」
「無症状患者についても、これまで「陽性確認の検体採取日(以下、単に検体採取日とする)から14日間経過した場合に退院可能」としてきたが、これを「検体採取日から10日経過」に改めるとともに、新たに「検体採取日から6日間経過後、24時間以上の間隔をあけ2回のPCR検査陰性を確認した場合に退院可能とする」との基準を設ける。」
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PCR検査の感度は30〜70%、また陰性化するまでに発症後14日間程度が必要です。したがって、2回のPCR検査で陰性化し、退院した後も自宅療養は必須であると考えます。
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