COVID-19に対するRAAS阻害薬の効果はどのくらいですか?(SR&MA; J Infect. 202)

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Estimation of Renin-Angiotensin-Aldosterone-System (RAAS)-Inhibitor Effect on COVID-19 Outcome: A Meta-analysis

Carlos J Pirola et al.

J Infect. 2020 May 28;S0163-4453(20)30329-7. doi: 10.1016/j.jinf.2020.05.052. Online ahead of print.

PMID: 32474043

PMCID: PMC7255761

DOI: 10.1016/j.jinf.2020.05.052

Keywords: Angiotensin II receptor type 1 blockers; Angiotensin II-converting enzyme inhibitors; COVID-19; RAAS inhibitors; cardiovascular disease; diabetes; hypertension; prognosis.

背景と根拠

入院患者を対象としたいくつかの研究では、COVID-19による死亡および/または重症化のリスクは、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)および/またはアンジオテンシンII受容体1型阻害薬(ARB)の使用とは関連していないことが示唆されている。

それにもかかわらず、いくつかの論争がいまだに存在し、COVID-19の予後に対するACEI/ARBsの効果の大きさに関する情報は限られている。

目的と方法

我々はメタアナリシスにより、COVID-19の重篤な臨床症状に対するACEIおよび/またはARBの効果を測定することを目的とした。

文献検索では、COVID-19のアウトブレイクが始まってから(2019年12月)から2020年5月9日までに発表されたすべての研究を対象とした。

入院前の併存疾患として動脈性高血圧を有するCOVID-19患者、およびACEI、ARB、またはACEI/ARBの服用歴を含むCOVID-19患者(検査で確認された)を対象とした研究からの情報を分析した。

結果

・COVID-19患者24,676人を対象とした研究16件を組み入れ、重症患者(n = 4,134)と非重症患者(n = 20,542)の転帰を比較した。

・ランダム効果を推定して総合的に評価した結果、COVID-19感染症の高血圧患者において、ACEIs/ARBsの使用は院内死亡および/または重症化のリスク増加とは関連していないことが示された。

・反対に、効果推定値は、RAAS阻害剤/遮断剤(ACEI、ARB、および/またはACEI/ARB)の全体的な保護効果を示し、死亡および/または重症化のリスクが約23%減少した。

★死亡および/または重症化のリスク

 RAAS阻害剤/遮断剤 OR =0.768、95%CI 0.651〜0.907、p=0.0018

・ACEI/ARB(OR =0.867、95%CI 0.638〜1.179、p=NS)またはARB単独使用(OR =0.810、95%CI 0.629〜1.044、p=NS)ではなく、ACEI単独使用のORは0.652(95%CI 0.478〜0.891、p=0.0072)であったことから、RAAS介入の併用によって示された全体的な保護を説明することができるかもしれない。

結論

RAAS阻害薬はCOVID-19の予後改善と関連している可能性がある。

コメント

Renin-Angiotensin-Aldosterone-System(RAAS)阻害薬とCOVID-19アウトカムとの関連性を検証した試験。以前からCOVID-19の感染や症状にRAASが関与している可能性が示唆されています。これはSARS-CoV-2の感染にACE2が関与しているためです。

これまでの報告では、RAAS阻害薬によりリスクは変わらない、あるいはリスクがやや低下することが報告されていました。

さて、本試験結果によるとRAAS阻害薬、特にACE阻害薬の使用で、COVID-19患者における死亡および/または重症化のリスク低下が認められました。私の知る限りでは新しい知見です。

ただし、解析に組み入れられた研究16件は、レジストリ研究を含む後向きコホート研究が多く、その他は症例対照研究あるいは症例集積シリーズばかりです。したがって、RAAS阻害薬を使用していた患者において、そもそも死亡および/または重症化リスクが低かった可能性があります。つまり、RAAS阻害薬によりCOVID-19患者の死亡および/または重症化リスクが低下するのかについて、”現時点では分からない” と言うことです。

少なくとも、現在RAAS阻害薬を服用している患者においては、RAAS阻害薬の服用を中止する必要はなさそうです。一方で、COVID-19重症患者に高血圧症や心血管既往を有する症例が多いことも報告されていますので、引き続き情報を追った方が良い分野であると考えます。

続報を待ちます。

✅まとめ✅ RAAS阻害薬はCOVID-19の予後改善と関連している可能性があり、特にACE阻害薬により死亡および/または重症化リスクが約23%低下するかもしれない

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