Bevacizumab and platinum-based combinations for recurrent ovarian cancer: a randomised, open-label, phase 3 trial.
Pfisterer J et al.
Lancet Oncol. 2020 May;21(5):699-709. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30142-X. Epub 2020 Apr 16.
ClinicalTrials.gov, NCT01837251.
FUNDING: F Hoffmann-La Roche.
背景
プラチナ製剤を用いた再治療に適した再発卵巣癌に対する最先端の治療法は、ベバシズマブを含む併用療法(例:ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用)である。
プラチナ製剤を用いた再治療に適した再発卵巣癌に対する最新の治療法には、ベバシズマブを含む併用療法(例:ベバシズマブへのカルボプラチン+パクリタキセル併用またはカルボプラチン+ゲムシタビン併用)、または最も有効な非ベバシズマブレジメンであるカルボプラチン+ペギル化(PEG)リポソーム ドキソルビシンの併用療法がある。
本試験の目的は、標準的なベバシズマブを含むレジメンと、カルボプラチン+ペギル化リポソーム ドキソルビシン+ベバシズマブ併用レジメンを比較することである。
方法
この多施設共同非盲検ランダム化第Ⅲ相試験は、ドイツ、フランス、オーストラリア、オーストリア、英国の学術センター159施設で実施された。
対象患者(18歳以上)は、組織学的に確認された上皮性卵巣がん、原発性腹膜がん、または卵管がんで、プラチナ製剤をベースとした第一選択化学療法後6ヵ月以上の初発再発を有し、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0-2の患者であった。
患者は、プラチナ製剤を使用しない間隔、残存腫瘍、抗血管新生療法の既往、研究グループの言語で層別化され、ランダムに区画分割したブロック(サイズ:2、4あるいは6)を用いて1:1に割り付け、以下の治療を4週間毎に受けた後は、両群ともにベバシズマブ(両群とも15mg/kgを3週間ごとに投与)を維持投与し、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで投与した。
実験群:ベバシズマブ(15mg/kg、1日目)+カルボプラチン(濃度曲線下面積[AUC]4、1日目)+ゲムシタビン(1000mg/m2、1日目と8日目)の静脈内投与(3週間毎に6サイクル)
標準群:ベバシズマブ(10mg/kg、1日目と15日目)とカルボプラチン(AUC 5、1日目)とPEGリポソーム ドキソルビシン(30mg/m2、1日目)の静脈内投与(4週間毎に6サイクル)
この非盲検試験ではマスキングは行われなかった。
主要エンドポイントは、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors version 1.1に基づく無増悪生存期間であった。
有効性データは、intention-to-treat集団で分析された。
安全性は、少なくとも1回の試験薬投与を受けたすべての患者を対象に分析した。
結果
・2013年8月1日から2015年7月31日までの間に、対象患者682人が登録され、そのうち345人がカルボプラチン+PEGリポソーム ドキソルビシン+ベバシズマブ投与群(実験群)に、337人がカルボプラチン+ゲムシタビン+ベバシズマブ投与群(標準群)にランダム割り付けされた。
・データカットオフ時(2018年7月10日)の無増悪生存期間の追跡期間中央値は、実験群が12.4ヵ月(IQR 8.3〜21.7)、標準群が11.3ヵ月(8.0〜18.4)であった。
・無増悪生存期間中央値は、実験群が13.3ヵ月(95%CI 11.7〜14.2)、標準群が11.6ヵ月(11.0〜12.7)であった。
★ハザード比 =0.81、95%CI 0.68〜0.96、p=0.012
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・グレード3または4の有害事象で最も多かったのは、高血圧症(実験群:88/332例[27%]、標準群:67/329例[20%])と好中球減少症(40例[12%]、73例[22%])であった。
・重篤な有害事象は実験群332例中33例(10%)、標準群329例中28例(9%)に発現した。
・治療関連死は、実験群1例(1%未満;大腸穿孔)、標準群2例(1%;浸透圧脱髄症候群、頭蓋内出血各1例)に発生した。
結果の解釈
カルボプラチン+PEGリポソーム ドキソルビシン+ベバシズマブは、プラチナ適格再発卵巣癌に対する新たな標準治療の選択肢である。
コメント
再発卵巣がんに対する標準(従来)治療であるベバシズマブ(アバスチン®️) – カルボプラチン(パラプラチン®️) – ゲムシタビン(ジェムザール®️)と、ベバシズマブ – カルボプラチン – PEGリポソーム ドキソルビシン(ドキシル®️注)を比較した試験。
結果としては、ゲムシタビンと比較して、PEGリポソーム ドキソルの方が無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR =0.81、95%CI 0.68〜0.96)。絶対差は1.7ヵ月。全生存期間(OS)については現状未到達だと思いますので、今後発表されると考えます。
PFSの絶対差1.7ヵ月をどう捉えるのかが課題ですね。本文は有料であるため確認できていませんが、患者背景や完全消失の割合等も含めて検討したいところ。
卵巣がんは大きく4タイプ(漿液性がん、粘液性がん、類内膜がん、明細胞がん)に分けられ、そのうち漿液性がん(全体の30〜40%)は進行スピードが早い(化学療法が効きやすい)ことが知られていますので、漿液性がん患者においては、PFSでもOSとして外挿しやすいかもしれないですね。
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