Clopidogrel Versus Ticagrelor or Prasugrel in Patients Aged 70 Years or Older With non-ST-elevation Acute Coronary Syndrome (POPular AGE): The Randomised, Open-Label, Non-Inferiority Trial
Marieke Gimbel et al.
Lancet. 2020.
PMID: 32334703
DOI: 10.1016/S0140-6736(20)30325-1
Funding: ZonMw.
This trial is registered with the Netherlands Trial Register (NL3804)
ClinicalTrials.gov (NCT02317198), and EudraCT (2013-001403-37).
背景
現在のガイドラインでは、急性冠症候群後の患者にチカグレロルまたはプラスグレルによる強力な血小板抑制が推奨されている。
しかし、高齢者における最適な血小板抑制効果に関するデータは少ない。
我々は、非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の高齢患者を対象に、チカグレロルまたはプラスグレルと比較したクロピドグレルの安全性と有効性を検討することを目的とした。
方法
オランダの12施設(10病院と2大学病院)で、非盲検、ランダム化比較対照POPular AGE試験を実施した。
NSTE-ACSの70歳以上の患者を登録し、インターネットを用いたランダム化手順(ランダムブロック化、ブロックサイズ6)を用いて1:1の割合で割り付け、クロピドグレル300mgまたは600mg、チカグレロール180mgまたはプラスグレル60mgのローディング投与と、標準治療に加えて12ヶ月間の維持投与(クロピドグレル75mgを1日1回、チカグレロール90mgを1日2回、プラスグレル10mgを1日1回)を実施した。
患者と治療担当医は割り付けられた治療戦略を認識していたが、アウトカム評価者は治療の割り付けにマスクされていた。
一次出血アウトカムは、PLATelet阻害と患者のアウトカム(PLATO;大出血または軽度出血[優越性仮説])で構成された。
共一次臨床純利益アウトカムは、全死亡、心筋梗塞、脳卒中、PLATO大・小出血(非劣性仮説、マージン2%)で構成された。
フォローアップ期間は12ヵ月であった。
解析はintention-to-treatベースで行われた。
所見
・2013年6月10日から2018年10月17日までの間に、患者1,002人をクロピドグレル群(n=500)、チカグレロルまたはプラスグレル群(n=502)にランダム割り付けした。
・チカグレロルまたはプラスグレル群のうち、475例(95%)の患者がチカグレロルを投与されたため、この群をチカグレロル群と呼ぶことにする。
・試験薬の早期中止は、チカグレロル群で502例中238例(47%)、クロピドグレル群で500例中112例(22%)で発生した。
・一次出血転帰はクロピドグレル群(500人中88人[18%])がチカグレロル群(502人中118人[24%])に比べて有意に低かった。
★ハザード比 =0.71、95%CI 0.54~0.94、優越性p=0.02
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・co-primary net clinical benefit outcomeは、クロピドグレル使用群(139例[28%])とチカグレロル使用群(161例[32%])で非劣性であった。
★絶対リスク差= -4%、95%CI -10.0~1.4;非劣性p=0.03
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・中止の最も重要な理由は、出血の発生(n=38)、呼吸困難(n=40)、経口抗凝固療法による治療の必要性(n=35)であった。
結果の解釈
NSTE-ACSを呈する70歳以上の患者において、クロピドグレルはチカグレロルに代わる好ましい選択肢である。
なぜなら、クロピドグレルは全死亡、心筋梗塞、脳卒中、出血の複合エンドポイントを増加させることなく出血イベントを減少させるからである。
クロピドグレルは、特に出血リスクの高い高齢者患者にとっては、P2Y12阻害薬の代替薬となりうる。
コメント
オープンラベルのRCT。アウトカム評価者はブラインドされているため、PROBE法です。
さて、70歳以上の非ST上昇型ACS患者において、クロピドグレルは、チカグレロルよりも安全性が高く、有効性は劣っていませんでした。
アブストからは内的妥当性が高いように思います。1つの試験からだけでは結論づけられませんが、薬価も考慮するとチカグレロルを選択する意義は低そうですね。
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