Effect of Apabetalone Added to Standard Therapy on Major Adverse Cardiovascular Events in Patients With Recent Acute Coronary Syndrome and Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial.
Ray KK et al.
JAMA. 2020 Mar 27.
doi: 10.1001/jama.2020.3308. [Epub ahead of print]
TRIAL REGISTRATION: ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02586155.
PMID: 32219359
PMCID: PMC7101505 [Available on 2020-09-27]
試験の重要性
ブロモドメインおよび末端タンパク質は、遺伝子転写のエピジェネティックな制御因子である。Apabetalone(アパベトアロン、アパベタロン)はブロモドメイン2を標的とした選択的なブロモドメインおよび末端タンパク質(BET)阻害薬であり、アテローム血栓症に関連する経路に良好な効果をもたらす可能性があると考えられている。第2相臨床試験のデータをプールしたところ、臨床成績に良好な効果があることが示唆された。
目的
アパベタロンが主要な心血管有害事象を有意に減少させるかどうかを試験する。
試験デザイン、設定、参加者
13ヵ国190施設で実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験。
2015年11月11日に開始し、2018年7月4日に終了し、2019年7月3日に追跡調査を終了した急性冠症候群患者を対象に、7日~90日前の急性冠症候群、2型糖尿病、低密度リポ蛋白コレステロール値を有する患者を登録対象とした。
介入
患者は、標準ケアに加えてアパベタロン、100mgを1日2回経口投与(n=1,215)、またはプラセボ(n=1,210)を受けるようにランダムに割り付けられた(1:1)。
主要アウトカムと測定法
主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中の初回発症までの時間を複合したものであった。
結果
・ランダム化された患者2,425人(平均年齢62歳、女性618人[25.6%])のうち、2,320人(95.7%)が主要転帰を完全に確認した。
・追跡期間中央値26.5ヵ月の間に主要エンドポイント274件が発生した。アパベタロン投与群では125例(10.3%)、プラセボ投与群では149例(12.4%)であった。
★ハザード比 =0.82[95%CI 0.65〜1.04];P=0.11
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・プラセボよりもアパベタロンに割り付けられた患者の方が、肝酵素値の上昇を含む理由で試験薬を中止した患者が多かった。
有害事象による試験中止:114例[9.4%] vs. 69例[5.7%]
肝酵素値の上昇による試験中止:35例[2.9%]対11例[0.9%]
結果と関連性
急性冠症候群、2型糖尿病、低高密度リポ蛋白コレステロール値を有する患者において,標準治療に追加された選択的BET阻害薬アパベタロンは,主要な心血管系有害事象のリスクを有意に低下させなかった。
コメント
アポリポプロテインA-Ⅰ(ApoA-Ⅰ)誘導体であるApabetalone(アパベタロン)は、選択的ブロモドメインおよび末端(bromodomain and extraterminal, BET)タンパク質阻害薬です。Phase Ⅱのプール解析で有効性が示唆されたため、Phase Ⅲを実施したようです。試験の追跡期間は平均値26.5ヵ月。
さて、試験結果としては、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中)を低下させませんでした。HDL-Cの変化については、アパベタロン群でベースライン値の33.3 mg/dLから38.0 mg/dL、プラセボ群で36.6 mg/dLでした。そこまで大きな変化はなく、また診療ガイドラインの治療目標値である40 mg/dL以上を達成できていません。ただし、HDL-C値の増加がMACEにどれほどの影響があるのかは不明です。
試験結果としてはfail、しかし、なぜか米国ではFDAがアパベタロンを画期的治療(Breakthrough Therapy)対象としています。続報がありそうですね。
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