【批判的吟味】去勢抵抗性前立腺がん患者におけるダロルタミドの効果はどのくらいですか?(DB-RCT; ARAMIS trial; NEJM 2020)

prostate cancer 前立腺がん 癌 ガン

Darolutamide in Nonmetastatic, Castration-Resistant Prostate Cancer

Karim Fizazi et al.

N Engl J Med. 2019.

DOI: 10.1056/NEJMoa1815671

PMID: 30763142

Funded by Bayer
HealthCare and Orion Pharma; ARAMIS ClinicalTrials.gov number, NCT02200614.

背景

ダロルタミドは、構造的にユニークなアンドロゲン受容体拮抗薬であり、前立腺がんの治療薬として開発が進められている。

本試験では、非転移性の去勢抵抗性前立腺癌の男性を対象に、転移と死亡を遅延させるダロルタミドの有効性を評価した。

方法

転移性のない去勢抵抗性前立腺がんで、前立腺特異抗原の倍増期間が10ヵ月以下の男性を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験を実施した。

患者は、アンドロゲン遮断療法を継続しながら、ダロルタミド(600mg[300mgを2回1日2回])またはプラセボの投与を受けるよう、2:1の割合でランダムに割り付けられた。

主要エンドポイントは無転移生存率であり、転移の有無は16週ごとに独立した中央評価によるX線画像検査で判定された。

結果

・合計1,509人の患者がランダム化を受けた(955人がダルルタミド群、554人がプラセボ群)。

・主要エンドポイントイベントは437件が発生した後に実施された一次解析では、無転移生存期間中央値は、プラセボ群が18.4ヵ月であったのに対し、ダロルタミド群では40.4ヵ月であった。

★ダロルタミド群における転移または死亡のハザード比 =0.41;95%信頼区間 0.34~0.50;P<0.001

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・ダロルタミドは、全生存期間、疼痛進行までの期間、細胞毒性化学療法までの期間、および症候性骨格イベントまでの期間を含むすべての副次的エンドポイントに関しても有益であった。

・治療期間中に発生または悪化した有害事象の発生頻度が5%以上、またはグレード3以上の有害事象の発生率は、両群でほぼ同じであった。

・疲労を除くすべての有害事象の発生率は、どちらの群でも10%未満であった。有害事象を理由に治療法を中止した患者の割合は、ダロルタミド群で8.9%、プラセボ群で8.7%であった。

・ダロルタミドはプラセボと比較して、発作、転倒、骨折、認知障害、高血圧の発生率は高くなかった。

結論

非転移性の去勢抵抗性前立腺がんの男性において、無転移生存期間はプラセボ群に比べてダロルタミド群の方が有意に長かった。

有害事象の発生率は、ダロルタミドとプラセボで同程度であった。


組入基準

1. 書面によるインフォームドコンセント(IC)を取得。

2. 18歳以上の男性。

3. 組織学的または細胞学的に確認された前立腺腺癌で、神経内分泌分化や小細胞の特徴を伴わないもの。

4. 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、アンドロゲン遮断療法(ADT)の間に少なくとも1週間間隔で行われた直下の前立腺特異抗原(PSA)値の上昇が3回あるものと定義される。患者に抗アンドロゲン使用歴がある場合、最新のPSA値は、抗アンドロゲン療法の少なくとも4週間後に取得しなければならない。

5. ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストまたはアンタゴニスト療法中、またはスクリーニング時または1日目の訪問時に両側性睾丸切除術後の血清テストステロン値(<1.7 nmol/l [50 ng/dl])が去勢されています。両側睾丸切除を受けていない患者は、試験期間中もGnRH療法を継続しなければなりません。

6. PSA倍増時間(PSADT)が10ヶ月以内で、スクリーニング時のPSA値が2ng/ml以上であること。

7. Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0-1である。

8. スクリーニング時の血球数:ヘモグロビン≧9.0g/dl、絶対好中球数≧1500/μl(1.5×109/l)、血小板数≧10万/μl(100×109/l)(スクリーニング時の血液検査で得られた7日以内に成長因子または輸血を受けていなけ ればならない)。

9. 血清アラニン・トランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)≦2.5×正常値上限(ULN)、総ビリルビン≦1.5×ULN(ギルバート病と診断された患者を除く)、クレアチニン≦2.0×ULNのスクリーニング値。

10.性行為を行う患者は、外科的に無菌である場合を除き、有効なバリア手段としてコンドームを使用することに同意し、試験治療中及び試験治療終了後 3 ヶ月間は精子提供を控えることに同意しなければならない。

除外基準

1. 試験治療開始前42日以内に、X線写真的に証明された転移の既往歴、または盲検下での中心部読影による検出可能な転移の存在があること。大動脈分岐部より下の短軸方向に2cm未満の骨盤リンパ節の存在は認められる。

2. 前立腺癌による中等度/重度の尿閉塞や水腎症など、医学的介入を必要とする症候性の局所-局所疾患。

3. ランダム化前にグレード≦1またはベースラインにまで回復していない先行治療や処置の急性毒性。

4. (1) エンザルタミド、アパルタミド等の第二世代アンドロゲン受容体(AR)拮抗薬、ダロ ルルルタミド又はその他の治験薬のAR拮抗薬、(2) アビラテロン酢酸塩、TAK-700等のCYP17酵素阻害薬、又は(3) ケトコナゾールの28日以上の経口投与による前治療。

5. ランダム化前 28 日以内のエストロゲン又は 5-α還元酵素阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)の使用、及び AR 拮抗剤(ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン)のスクリーニング前 28 日以上の使用。

6. 前立腺がんに対する化学療法または免疫療法の既往があるが、ランダム化の2年以上前に完了したアジュバント/ネオアジュバント治療を除く。

7. ランダム化前28日以内にプレドニン10mg/日相当量以上の全身性コルチコステロイドを使用した場合。

8. ランダム化前12週間以内の放射線療法(外部ビーム放射線療法(EBRT)、ブラキセラピー、または放射性医薬品)。

9. 治験責任医師の見解で患者が登録に不適当であると判断される重度またはコントロール不能の併存疾患、感染症、または併存疾患。

10. ランダム化前12週間以内に、骨格関連イベントを予防するための破骨細胞標的治療(ビスフォスフォネートまたはデノスマブ)を受けていた場合。骨粗鬆症に適応された用量・スケジュールで骨量減少を予防するための破骨細胞標的治療を受けている患者は、同じ用量・スケジュールで治療を継続することができる。

11. 試験治療またはその成分に対する既知の過敏症。

12. ランダム化前28日以内に大手術を受けた者。

13. ランダム化前6ヵ月以内に以下のいずれかに該当する者:脳卒中、心筋梗塞、重症/不安定狭心症、冠動脈/末梢動脈バイパスグラフト;うっ血性心不全 ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIまたはIV。

14. スクリーニング時の収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が100mmHg以上であることを示す未制御高血圧。

15. 過去に悪性腫瘍の既往がある。十分な治療を受けた皮膚の基底細胞がんまたは扁平上皮がん、表在性膀胱がんで結合組織層の後方に転移していないもの(すなわち、pTis、pTa、およびpT1)、ならびに5年前までに治療が終了している患者

16. 治験薬の吸収を著しく阻害すると予想される消化器疾患または処置。

17. 活動性ウイルス性肝炎、活動性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、または慢性肝疾患。

18. ランダム化前28日以内に治験薬による治療を受けていた者。

19. 治験責任医師の見解では、患者の試験手順を遵守する能力を損なうような状態。

20. 治験薬を飲み込むことができず、治験の要件を満たすことができない場合。

PICOTS

P: 非転移性で去勢抵抗性の前立腺がん患者(前立腺特異抗原の倍増期間が10ヵ月以内の男性)
(解析対象となった1,509例のうちアジア太平洋地域は186例、日本人は95例でした:IFより引用)

I: アンドロゲン遮断療法*+ダロルタミド(600mg[300mgを2回1日2回]食後)955例

C: アンドロゲン遮断療法*+プラセボ 554例

O: 無転移生存率
(転移の有無は16週ごとに独立した中央評価でX線画像を用いて判定)

T: 効果・予後、RCT、二重盲検

S: 国際共同(36ヶ国)、多施設(409施設)、第Ⅲ相、追跡期間中央値は17.9ヶ月

*アンドロゲン遮断療法(ADT):黄体化ホルモン放出ホルモンアゴニストまたはアンタゴニスト

批判的吟味

ランダム割り付けされているのか?

⭕️ ランダム化比較試験:PSA倍増期間(6ヵ月未満または6ヵ月以上)およびランダム化時のosteoclast-targeted therapy(破骨細胞標的治療)の使用の有無(YES or NO)によって層別化

割り付けの隠蔽化は?

 多施設で実施されているため、中央割り付けである(隠蔽化されている)と考えられるが本文に記載なし。

患者背景は同等か?

 やや偏りあり:Presence of lymph nodes on central imaging review、Median serum PSA level (range) — ng/ml、PSA doubling time、Use of bone-sparing agent — no. (%)

ITT解析か?

⭕️ ITT解析

脱落はどのくらいか?結果の影響は?

⭕️ ややプラセボ群で脱落が多い印象だが、有害事象により治療を中止した患者の割合は両群間で同様であり、問題ないと考えられる。

有害事象のために割り付けられたレジメンを中止した患者の割合は、両群でほぼ同程度であった(ダロマトアミド群8.9%、プラセボ群8.7%)。

試験レジメンを中止した患者のうち、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対して承認されたその後の治療を受けたのは、ダロルタミド群で29.5%、プラセボ群で36.7%であった。最も一般的な後続治療はドセタキセル、酢酸アビラテロン、およびエンザルタミドであった。アビラテロンとエンザルタミドの使用頻度はすべての地域で同様であった。
重篤な有害事象が発生したのは、ダロルタミド群では24.8%、プラセボ群では20.0%であった。

マスキングされているか?

⭕️ 三重:患者、介入者、有効性に対するアウトカム評価者(安全性についてはアンブラインド)

サンプル数は十分か?

⭕️ 主要アウトカムに有意差もあり、サンプル数は充分。
サンプルサイズは、主要エンドポイントである無転移生存率に基づいて算出した。ダロルタミド群における死亡または転移のハザード比を0.71と仮定すると、約385の主要エンドポイントイベントを有する1,500人の患者(ダロルタミド群とプラセボ群に2:1の割合でランダムに割り付けられた)のサンプルが、0.05の両側有意水準での対数順位検定を用いて、転移のない生存期間の有意差を検出するパワーが91%であることを計算した。

結果の評価

主要評価項目:無転移生存率

ダロルタミド群: 40.4ヶ月(34.3〜NR)
プラセボ群: 18.4ヶ月(15.5〜22.3)
ハザード比 =0.41(95%CI 0.34〜0.50)、P<0.001

副次評価:全生存期間

ダロルタミド群: NR(44.5〜NR)
Placebo: NR(NR〜NR)
ハザード比 =0.71(95%CI 0.50〜0.99)、P=0.045

有害事象

全体の有害事象の報告は、ダロルタミドを投与された患者で83.2%、プラセボを投与された患者で76.9%であった。

大部分はグレード1または2(ダロルタミド投与群54.6%、プラセボ投与群54.2%)であり、グレード3または4の有害事象は、ダロルタミド投与群で24.7%、プラセボ投与群で19.5%に発生した。グレード5の有害事象の発生率は、ダロルタミド群とプラセボ群で同程度(それぞれ3.9%、3.2%)であった。死亡について、ダロルタミド群では1名、プラセボ群では2名が試験レジメンに関連していると考えられた。

重篤な有害事象が発生したのは、ダロルタミド群では24.8%、プラセボ群では20.0%であった。ダロルタミド群では、プラセボ群と比較し、特に疲労の報告が多かった。

骨折、転倒、発作、体重減少など、次世代アンドロゲン受容体阻害薬との関連が知られている主要な有害事象について、治療期間中に発生または悪化した有害事象をグループ化して分析したところ、ほとんどの有害事象の発生率はダロルタミド群とプラセボ群との間で小さいか、または差がなかった。発生率としては両群とも0.2%であった。

高血圧、発疹、めまい、認知障害を含むその他の有害事象の発現率は、ダロルタミド群とプラセボ群でわずかに差があった。治療期間または観察期間を調整すると、これらの有害事象の発現率のグループ間差は減少または消失した。

コメント

中枢移行性が少ないとされているダロルタミド。構造式にフッ素(F)が入っていないことが影響していると考えられます。

構造式:ダロルタミド(ニュベクオ®️添付文書より引用)
構造式:アパルタミド(アーリーダ®️添付文書より引用)
構造式:エンザルタミド(イクスタンジ®️添付文書より引用)

さて、試験結果としてはアンドロゲン遮断療法へのダロルタミド(ニュベクオ®️)追加療法は、プラセボ群と比較して、無転移生存率を有意に延長させました。

また既存薬(アーリーダ®️、イクスタンジ®️)と比較して中枢性の副作用が少ない点に注目されがちですが、そもそもプラセボ群での副作用発生率が少なく、一概に副作用が少ないとは言えません。

これは本試験において、安全性の評価間隔は16週間に1回であり、既存薬の評価間隔(4週間に1回)と比べて長いです。したがって報告数が少なくなるのは当然であると考えられます。

適応症については、ダロルタミドは “遠隔転移を有さない” 去勢抵抗性前立腺がんです。

薬価については既存薬と同様の算出方法であり、既存薬と比較して大きな差はありません。

ダロルタミドの服用回数については1日2回であり、既存薬の1日1回よりも服用回数が多いです。この服用間隔の根拠は半減期の違いによるようです(インタビューフォームより)。

適応外使用となるため推奨はできませんが、計算上はダロルタミド1日1回服用であっても、服用後3日目で定常状態に達します。これは1日2回の服用による定常状態に達するまでの期間と同様です。

✅まとめ✅ アンドロゲン遮断療法へのダロルタミド追加療法は、プラセボ群と比較して、無転移生存率を有意に延長させる

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