フォーミュラリーにおいて除外・使用制限に分類されたオピオイドの使用動向とメディケア有益性との関連性(メディケアデータ分析; JAMA Netw Open. 2020)

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Association of Formulary Exclusions and Restrictions for Opioid Alternatives With Opioid Prescribing Among Medicare Beneficiaries

Tanvi Rao et al.

JAMA Netw Open. 2020

PMID: 32119095

PMCID: PMC7052746

DOI:10.1001/jamanetworkopen.2020.0274

試験の重要性

オピオイドに代わる薬理学的な代替薬は数多くあるが、メディケアパートDの処方構造が代替薬の使用を妨げるかどうかは不明である。

目的

オピオイド代替薬の適用範囲、およびこれらの薬剤の事前承認、ステップ療法、数量制限、階層配置の有病率を定量化し、これらの処方除外および制限が高齢者へのオピオイド処方の増加と関連しているかどうかを郡レベルで検証する。

試験デザイン、設定、参加者

郡固定効果モデルは、2015年と2016年の暦年にわたって、米国50州とコロンビア特別区の郡パネルを用いて推定した。

データ分析は、2019 年 7 月 1 日から 9 月 23 日まで実施した。

サンプルには、メディケアパートDの処方設計とオピオイド処方に関する十分なデータを有する2015年の2,721郡と2016年の2,671郡が含まれていた。

主要アウトカムと測定方法

郡レベルのオピオイド処方率(オピオイド請求件数を全体の請求件数で割ったもの)と、除外されたオピオイド代替薬と、事前承認、ステップ療法、数量制限、高位配置を伴うオピオイド代替薬のカウント。

結果

・2015年には28,997のメディケアプラン、2016年には30,390のプランにより、合計30種類の非オピオイド系鎮痛薬が調査された。

・メディケアプランでは、これらの薬剤の平均7%をカバーしていなかった(四分位の範囲 10%、下限0% ~ 上限23%)。

・対象となった非オピオイド系薬剤のうち、事前承認とステップ療法はまれであり、事前承認の影響を受けたのは5%未満、ステップ療法の影響を受けたのは0%であった。 しかし、対象となる非オピオイドの13%には数量制限があった(離散値幅 10%、下限0% 〜 上限31%)、22%が高コスト層にあった(離散値幅 38%、下限0% 〜 上限50%)。

・ある郡のメディケアプランから除外されている非オピオイド薬の増加は、オピオイド処方の増加と関連していた(平均値に対する効果量 2.2%~3.7%;P = 0.004)。

・反対に、ある郡のメディケアプランでカバーされていないオピオイドの増加は、オピオイド処方の減少と関連していることがわかった(平均値に対する効果量 0.8%~1.5%;P = 0.02)。

・調査した利用管理戦略(事前承認、ステップ療法、数量制限)や非オピオイドの高額層への配置は、いずれもオピオイド処方の増加とは関連していなかった。

結論と妥当生

オピオイドの薬理学的代替薬に対するメディケア保険の欠如は、オピオイド処方の増加と関連している可能性がある。

コメント

米国で導入されているメディケア(Medicare)は、65才以上の高齢者及び65才未満の障害者向けの公的医療保険プログラムです。

米国の 65 才以上の高齢者は、ほぼ全員がメディケアに加入し、2013 年における加入者は4,350万人とのこと。障害者の加入者数は 880万人、合計は5,230万人であり、これは米国民全体の約6人に1人がメディケアを利用していることになります。

メディケアは4つのプログラムに分かれており、パートA(病院保険)、パ ート B(補足的医療保険)、パート C(メディケア・アドバンテージ)、パート D(外来処方薬給付)であり、それぞれ財源が異なるようです。

また本文に出てきた各言葉の定義は以下のとおり;

事前承認

メディケア処方薬プランにより、治療薬を保険でカバーするために、処方医は事前に該当薬剤の必要性を示して審査を受ける。このために事前承認要件を満たす必要がある。

ステップ療法

事前承認の一種となる場合もある。ほとんどの場合、より高価な薬への「ステップ」を踏む前に、大多数の患者で有効性が証明されている医薬品、メディケア処方薬プランのフォーミュラリー(薬剤リストとも呼ばれる)の中のより安価な薬をまず試す必要を求められる。これは、ブランド薬に比べ、より低価格のジェネリック医薬品の試用を意味する場合がある。フォーミュラリーにおける第一段階のより安価な薬は、「ステップ1」処方薬として知られている。処方箋はいつでも変更される可能性があることに注意すること。必要に応じて通知が届く。

ただし、すでにより安価な薬を試してみて効果がなかった場合や、より高価な薬を服用することが医学的に必要であると処方医が考えている場合、処方医はメディケア処方薬プランに連絡して例外を要求することができる。そして承認された場合、より高価な薬をメディケア処方薬プランでカバーされる。フォーミュラリーにおいて、より高価な薬は「ステップ2」処方薬として知られており、メディケアは、例外が得られない限り、ステップ1の医薬品が最初に試されるまでは、それらをプランでカバーしない。

数量制限

安全性とコストの理由から、一定期間にメディケア処方薬プランでカバーする医薬品の使用量に制限を設けることがある。例えば、1日2錠、1ヶ月60錠の医薬品を処方される場合がある。プランがその薬の月間30錠の数量制限を設定している場合は、処方医がメディケア処方薬プランと協力して、それ以上の数量の承認を得る必要がある。

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さて、今回の研究は、上記のうちパートD加入者を対象としています。試験結果からの結論は単純明快で、メディケア処方薬プランのパートDでカバーされる非オピオイド薬が少ないと、オピオイド処方が増える可能性があるとのこと。

当たり前といえば当たり前の結果ですが、オピオイドクライシスが社会的問題となっている米国においては、かなり重要な示唆です。

海外の薬価設定については詳しくないので分かりませんが、日本においては明らかにオピオイドの方が、非オピオイド薬よりも高価です。

ここからは、あくまでも仮説生成ですが、もしも米国で日本と同様な薬価設定であれば、オピオイド薬のカバーを最小限にし、非オピオイド薬をカバーする範囲を広げれば良いことになります。そうすれば今回の研究結果を堅牢なものにできます。

ただし一点気がかりなのは、2015年に報告された同様の研究結果において、パートDでカバーされるオピオイド薬と、非オピオイド薬の割合とオピオイド処方割合に相関がみられていないことです。

この差を明らかにしないと、前述の仮説を検証しても、さらなる効果は得られないと考えられます。続報に期待。

✅まとめ✅ メディケア処方薬プランのパートDにおいてオピオイド薬や非オピオイド薬のカバー範囲により、オピオイド処方は増減するかもしれない

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