血糖コントロール改善と主要心血管イベント減少との関連性はどのくらいですか?(RCTのメタ解析; Diabetes Obes Metab. 2020)

Relation between improvement of glycemic control and reduction of major cardiovascular events in 15 cardiovascular outcome trials: a meta-analysis with metaregression.

Giugliano D et al.

Diabetes Obes Metab. 2020 Apr 6.

doi: 10.1111/dom.14047.

PMID: 32250550

DOI: 10.1111/dom.14047

背景

2型糖尿病(T2D)患者を対象に、これまでに発表されたすべての心血管アウトカム試験(CVOT)において、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低下と主要心血管イベント(MACE)リスクとの関係を明らかにするために、メタ回帰を用いてメタ解析を行った。

方法

2020年2月10日まで電子検索を行い、対象となる試験を決定した。プールされた要約推定値と95%信頼区間(Cis)は、Paule-Mandel法を用いたランダム効果モデルに基づいて算出した。

結果

・CVOT15件が含まれ、患者138,250人を評価した。

・プール解析では、プラセボと比較してMACEリスクが9%有意に減少し(ハザード比、HR = 0.91、0.87-0.95、P < 0.001)、試験間に有意な不均一性が認められた(I2 = 44%、P = 0.060)。

・試験終了時の達成HbA1cの低下とMACEのHR低下との間には頑強な関係があり(β=-0.3169、P=0.029)、研究間の分散の大部分(78%)を説明していた。この関係は、非致死性脳卒中のリスク低下のみによって完全に駆動され、これは研究間の分散の100%を説明し、明らかにグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト(GLP-1 RA)のクラスに限定されていた。

・達成されたHbA1cの低下と心不全のHR(説明分散*=0%)または全死亡率(説明分散=6%)との間には関係性が認められなかった。

*variance explained:決定係数(coefficient of determination)とも呼ばれる。1に近ければ予測がよくできていたことを表すが、予測制度が悪いとマイナスになる。

結論

CVOTで観察された血糖値の低下は、少なくともGLP-1 RAによる治療中は、MACEの他の2つの構成要素に影響を与えることなく、非致死性脳卒中のリスクを低下させる上で何らかの役割を果たしている可能性がある。

コメント

血糖降下作用と心血管イベント発生との関連性を検討した試験。PICOおよび論文のチェックポイントについては次の通り;

PI/ECO

  • Patients/Population(母集団):ベースライン時に 2 型糖尿病を有する患者
  • Intervention/Exposure(介入):DPP-4 阻害薬、GLP-1受容体刺激薬、SGLT-2阻害薬のいずれかをプラセボと比較
  • Comparisons(比較対象):2型糖尿病患者
  • Outcome(アウトカム):MACE、その構成要素(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)、心不全による入院、全死亡のリスク。血糖コントロールの改善(ΔHbA1c:プラセボと比較したHbA1cの減少)とMACEまたは他の心血管アウトカムの減少との関係

論文のチェックポイント

  • コクランレビューか?:❎コクランハンドブックを参照しているがコクランレビューではない
  • GRADE approachか?:❎GRADEに基づいてはいない
  • データベースは?:PubMed, EMBASE, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, the Cochrane Database of Systematic Reviews, and ClinicalTrials.gov (http://www.clinicaltrials.gov)
  • 検索語は?:“dipeptidyl-peptidase inhibitor”, “saxagliptin”, “alogliptin”, “sitagliptin”, “linagliptin”; “glucagon-like peptide-1 receptor agonist”, “exenatide”, “lixisenatide”, “liraglutide”, “semaglutide”, “dulaglutide”, “albiglutide”; sodium-glucose co-transporter-2 inhibitor”, “empagliflozin”, “canagliflozin”, “dapagliflozin”; “major cardiovascular events”, “MACE”, “myocardial infarction”, “stroke”, “hospitalization for heart failure”, “cardiovascular mortality”, and “all-cause mortality”
  • 研究の種類は?:ランダム化比較試験(RCT)
  • 個々の研究の参考文献検索は?:ハンドサーチで実施した
  • 個々の研究者や専門家に連絡を取ったか?:不明
  • 未出版の研究は?:不明
  • 言語の制限は?:不明
  • 出版バイアスは?:ファンネルプロットとEgger’sテストで検討。統合された研究は10件未満だった。大規模研究ばかりが集められているため、やや出版バイアスが大きいように考えられる
  • 複数の評価者だったか?:独立した2名で実施し、意見が対立した場合は相談しコンセンサスを得た
  • 研究の評価基準は?:Cochrane Collaboration’s toolでバイアスリスクが評価された

試験結果から、血糖降下薬による “試験終了時のHbA1c” と心血管アウトカムとの関連性について、メタ回帰を用いてメタ解析したところ、GLP-1受容体刺激薬については、HbA1c低下と非致死的脳卒中のリスク低下に関連が認められた。GLP-1受容体刺激薬の解析に含められた臨床試験7件(ELIXA、LEADER、SUSTAIN-6、EXSCEL、HARMONY、REWIND、PIONEER 6)については、バイアスリスクが低かった。

次項から各アウトカムを細かくみていきます。

非致死的心筋梗塞

メタ回帰の結果では血糖低下とアウトカム発生の間に関連性は認めらなかった(beta = -0.1460, P = 0.470, variance explained = 0%)

DPP-4阻害薬:HR =1.00(0.92〜1.10)、I2=0.00%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.92(0.83〜1.01)、I2=40.28%

SGLT-2阻害薬:HR =0.87(0.79〜0.96)、I2=0.00%

心血管死

メタ回帰の結果では血糖低下との関連性は認められなかった(beta = -0.0990, P = 0.696, variance explained =0%)

DPP-4阻害薬:HR =0.98(0.89〜1.08)、I2=3.99%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.88(0.80〜0.96)、I2=20.84%

SGLT-2阻害薬:HR =0.81(0.67〜0.98)、I2=70.30%

非致死的脳卒中

メタ回帰の結果では血糖低下との高い関連性が認められた(beta = -0.7450, P = 0.003, variance explained = 100%)

DPP-4阻害薬:HR =1.00(0.87〜1.14)、I2=0.00%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.84(0.76〜0.93)、I2=0.00%

SGLT-2阻害薬:HR =0.98(0.84〜1.16)、I2=35.29%

心不全による入院

メタ回帰の結果では血糖低下との関連性は認められなかった(beta = – 0.0001, P = 0.999, variance explained = 0%)

DPP-4阻害薬:HR =1.05(0.91〜1.22)、I2=53.88%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.91(0.84〜0.99)、I2=0.00%

SGLT-2阻害薬:HR =0.68(0.60〜0.76)、I2=0.00%

MACE

メタ回帰の結果では、血糖低下との関連性が認められた(beta = -0.3169, P = 0.029)

DPP-4阻害薬:HR =0.99(0.93〜1.05)、I2=0.01%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.87(0.81〜0.94)、I2=46.61%

SGLT-2阻害薬:HR =0.88(0.82〜0.94)、I2=0.00%

全死亡

メタ回帰の結果、血糖低下との関連性は認められなかった(beta = -0.1920, P = 0.345, variance explained = 6%)

DPP-4阻害薬:HR =1.01(0.93〜1.10)、I2=16.92%

GLP-1受容体刺激薬:HR =0.89(0.81〜0.97)、I2=41.89%

SGLT-2阻害薬:HR =0.83(0.73〜0.95)、I2=62.76%


やはりGLP-1受容体刺激薬およびSGLT-2阻害薬の効果は一貫して認められていますね。ただし、心筋梗塞においてはGLP-1受容体刺激薬(GLP-1RA)の効果は低そう。一方、脳卒中においてはSGLT-2阻害薬の効果が低そう。異質性については、無し〜中等度までとアウトカムによってまちまち。

血糖低下とアウトカム発生について検討したメタ回帰の結果では、非致死的脳卒中だけでなく、MACEも関連性が認められている。

あまりにも異なる傾向を示す研究結果を統合してしまうのは、結果を誤った方向に導く可能性があるため、統合しないという選択をした方が良いですね。あるいは、傾向が似ている研究のみの統合した方が良いですが、恣意性を排除しきれないため、あくまでも参考データとなりますが。

✅まとめ✅ 血糖低下とアウトカム発生について関連性が認められたのはMACEと非致死的脳卒中であり、脳卒中については、そのほとんどをGLP-1RAが占めていた

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