Cognitive Problems of Breast Cancer Survivors on Proton Pump Inhibitors
Annelise A Madison et al.
J Cancer Surviv.2020
PMID: 31933149
DOI: 10.1007/s11764-019-00815-4
目的
プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、治療関連の胃腸症状を管理し、治療中の胃粘膜の損傷を防ぐために、がん患者に使用される。 ただし、PPI使用は認知問題の一因となる場合がある。
PPIユーザーと非ユーザーを比較するために、乳がん生存者は3つの研究で認知問題を報告した。
方法
研究1において、乳がん生存者(N =209; 非ユーザー n =173、PPIユーザー n =36; ステージ0-IIIC)は、がん治療前、治療後1年および2年目にKohliスケールで認知機能を評価した。
研究2において、女性(N =200; 非ユーザー n =169、PPIユーザー n =31、ステージ0-IIIa、M =治療後11ヵ月)は、KohliスケールおよびBCPTチェックリストで認知機能を6ヵ月間のうち3回評価した。
研究3において、参加者(N =142; 非ユーザー n =121、PPIユーザー n =21; ステージI-IIIa、M =治療後4年)は、Kohliスケール、BCPTチェックリスト、がん治療認知スケール機能評価(Functional Assessment of Cancer Therapy cognitive scale, FACT-cog)を用いて認知機能を評価した。
結果
・研究1において、PPIユーザーは、非ユーザーよりも深刻な集中力の問題(p =0.039)を報告したが、記憶の問題(p =0.17)は報告しなかった。
・研究2において、PPIユーザーは、非ユーザーよりも集中力の問題が深刻である(p =0.022)が、BCPTにおける記憶の問題や症状は報告しなかった(ps =0.11)。
・研究3において、PPIユーザーは、非ユーザーと比較して、より深刻な記憶障害(p =0.002)、全体的な認知機能の低下(p =0.006)、認知問題に関連する生活の質の低下(p =0.005)、より重度の認知障害の知覚(p =0.013)、 認知能力の低下(p =0.046)を報告したが、集中力の問題はそれほど深刻ではなかった(p =0.16)。
結論
PPIの使用は、乳がん生存者の記憶、集中力、生活の質を損なう可能性がありる。
コメント
アブストのみ。
乳がんサバイバーにおけるPPI使用は、非使用者と比較して、認知機能の低下が認められた。有料であるため詳細は不明ですが、症例対照研究であると考えられます。したがって、乳がんそのものによる認知機能低下リスクについては、バイアスが入り込みづらいと考えられますが、治療内容によりPPI併用の確率は高まる可能性があり、そもそもの治療内容による認知機能低下の交絡因子としてのPPI使用者なのか、PPIそのものの使用による認知機能低下なのかは判断できません。
したがって、あくまでも仮説生成的な結果であると考えられます。しかし、漫然と服用するよりは、症状により、on-demandにしたり、短期間の仕様に留めたりした方が良いのかもしれません。
結果としては過去の報告と矛盾しません。PPI使用による認知機能低下については、以前から報告されています。ただ個人的にはH2遮断薬の方が認知機能が低下しやすいと思っていますので、比較検討した結果を知りたいところ。
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