2型糖尿病患者における血清尿酸値は死亡リスク増加に影響しますか?(Atherosclerosis 2017; Charge)
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On the non-linear association between serum uric acid levels and all-cause mortality rate in patients with type 2 diabetes mellitus.
Lamacchia O et al. Atherosclerosis. 2017 DOI: 10.1016/j.atherosclerosis.2017.03.008. Epub 2017 Mar 9. PMID: 28334637背景・疑問
血清尿酸値の値が腎疾患や死亡リスクに関与することが報告されている。しかし、因果関係は依然として不明である。 2型糖尿病患者における無症候性高尿酸血症の治療は有益であるのか?抄録のみ読める論文であるが読み進めた。結論
2型糖尿病患者における血清尿酸値は、4.71~7.17 mg/dLの範囲より高くても低くても死亡リスクを上昇させた。いわゆるJ字型(あるいは U字型)現象が観察された。抄録
【背景と目的】
高レベルの血清尿酸(Serum Uric Acid: SUA)は、一般集団における死亡リスクの増加と関連している。つまり尿酸レベルの低下は、糖尿病患者において有用である。 本研究の目的は、2型糖尿病患者における SUAと全死亡との関連およびその機能的形態を研究することである。【方法】
T2DM患者を対象とした 3つのコホートを解析した(Gargano Mortality試験 n=698、Foggia Mortality試験 n=431、Pisa Mortality試験)。エンドポイントは全死亡率。【結果】
SUAレベルと全死亡率との間の最も信頼性の高い関係は二次関数的であった。このモデルは SUA三分位によってよく近似された。 三分位の第1(本研究のグループ内で尿酸値が一番高い群)および第3(尿酸値が一番低い群)は、第2(中間層)に比べ死亡リスクが高かった。 ・第1 vs. 第2 ハザード比(HR) =1.34, 95%信頼区間(CI)=1.07〜1.68 ・第3 vs. 第2 HR =1.61, 95%CI =1.29〜1.99 実際にプールされたサンプルから作成された擬似的サンプルにおいて、SUAと全死亡率との最良の関係は二次的であった。 再帰的分割回帰ツリー分析において、死亡リスクの高い2つのサブグループを対象に解析した。すなわち中間 SUAレベルの患者(尿酸値4.16〜7.28 mg/dl)と比較して、SUAレベルが7.28 mg / dl 以上および SUAレベルが4.16 mg / dl 未満で死亡率が高かった。 本試験は SUAレベルと死亡率との間の J字型関係に関するさらなるエビデンスを提供する。【結論】
血清尿酸は、2型糖尿病患者の全死亡率と直線的に関連していなかった。臨床および公衆衛生上では、そのような関連性は J字型と呼ばれる。PECOT
- P:2型糖尿病患者
- E :血清尿酸値の層別化
- C:無し
- O:全死亡
- T :害、3つのコホート研究を解析
批判的吟味
追跡期間は?
➡抄録からは不明
脱落はどのくらいか?
➡抄録からは不明
マスキングされているか?
➡抄録からは不明
交絡因子の調整は?
➡抄録からは不明
コメント
2型糖尿病患者における、尿酸値と全死亡率との間には J-curve現象がみられた。当該患者においては尿酸値が上がり過ぎないよう、逆に下げ過ぎないようコントロールすることの重要性が示唆された。あくまで観察研究であり、因果関係ではなく相関関係が示された点であることは念頭に置く必要がある。 さらに抄録からは批判的吟味できなかった。また調整しきれない交絡因子もあると考えられる。個人的には三分位というところが気になる。 血清尿酸値について私の知る限りでは、血圧や血糖値、脂質と比較し、疾患との関連性や治療効果については非常に曖昧である。 高尿酸血症のみでの治療効果は限定的であり、痛風発作の既往がない、無症候性高尿酸血症であれば放置していても問題ないという認識。しかし、以前から尿酸高値は腎疾患や心房細動等の心血管疾患との関連性が示唆されている。一方、in vitroにおいてではあるが尿酸の酸化ストレス軽減効果も示唆されており、まだまだ議論の分かれるところ。-Evidence never tells you what to do-

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