Efficacy and safety of bilastine in Japanese patients with perennial allergic rhinitis: A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group phase III study
Kimihiro Okubo et al.
Allergol Int. 2017 Jan;66(1):97-105. doi: 10.1016/j.alit.2016.05.014. Epub 2016 Jul 14.
PMID: 27421817
DOI: 10.1016/j.alit.2016.05.014
Keywords: Bilastine; Fexofenadine; H(1)-antihistamine; Perennial allergic rhinitis; Total nasal symptom score.
背景
ビラスチンは、新規の非鎮静性第二世代H1抗ヒスタミン薬であり、2010年より欧州のほとんどの国で承認されている。
本試験では、日本人の通年性アレルギー性鼻炎(PAR)患者を対象に、ビラスチンのプラセボに対する優位性を評価することを目的とした。
方法
本試験は、通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に、ビラスチン(20mg 1 日 1 回投与)、フェキソフェナジン(60mg 1 日 2 回投与)、またはプラセボ(ダブルダミー)を 2 週間投与した場合の効果を、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、第III相試験(治験登録番号:JapicCTI-142600)で評価した。
すべての患者には、鼻および眼の症状を毎日、日記に記録するように指示しました。
主要評価項目は、ベースラインから2週目(10~13日目)までの鼻症状スコア(TNSS)の平均変化量とした。
結果
・合計765例の患者が、ビラスチン(256例)、フェキソフェナジン(254例)、プラセボ(255例)にランダム割り付けされた。
・2週目のTNSSのベースラインからの平均変化量は、プラセボ(-0.63)に比べてビラスチン(-0.98)が有意に減少した(P=0.023)。
・ビラスチンとフェキソフェナジンは、主要評価項目において有意差を示さなかった。しかし、1日目のベースラインからのTNSSの平均変化量は、プラセボ(-0.28、P<0.001)またはフェキソフェナジン(-0.62、P=0.032)よりもビラスチン(-0.99)の方が有意に減少した。また、両実薬群では、1日目における1回目の薬剤投与1時間後と2回目の薬剤投与前に、1日目の瞬間的なTNSSを改善した(P<0.05)。
・試験薬の忍容性は良好であった。
結論
2 週間の治療期間後、ビラスチン 20 mg 1 日 1 回投与は、日本人の PAR 患者に対して有効性と忍容性を示し、迅速な作用発現を示した。
コメント
「1日1論文、30日で、薬剤師としてレベルアップ! 医学論文の活かし方」に掲載されている論文です
7.【抗ヒスタミン薬】に掲載されている論文を選んでみました。
通年生アレルギーには、H1受容体拮抗薬が用いられます。特に、中枢抑制作用の少ない第二世代が用いられることが多く、最近の日本では、ビラスチンやデスロラタジン、ルパタジンが新薬として承認されています。
金芳堂さんの紹介サイトはこちら↓
新薬は従来薬よりも優れている?
抗ヒスタミン薬だけに限った話ではありませんが、新薬が新たに販売されると、新薬が使用されるケースが少なくありません。
新薬は使用実績が少なく、長期的な安全性が不明です。また有効性については、倫理的な観点から、従来薬との非劣勢試験が行われるようになっています。
非劣勢とは、その名の通り、対照薬と比較して「少なくとも劣っていない」ということです。非劣勢試験のみでは、従来薬などの対照薬と比較して優れているのかは不明です。
この研究結果から明らかになったことは?
日本人の通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に、ベースラインから2週間後のTNSS変化量について検証した試験。
介入群にはビラスチンを、対照群にはプラセボあるいはフェキソフェナジンを用い検討したところ、ビラスチンの効果はプラセボと比較して有意に優れていましたが、フェキソフェナジンとは差がありませんでした。
- ビラスチン群 :−0.98 (95%CI −1.19 〜 −0.77)
- プラセボ群 :−0.63 (−0.84 〜 −0.42)
- フェキソフェナジン群:−0.96 (−1.17 〜 −0.75)
また、1日目のベースラインからのTNSSの平均±SD変化において、フェキソフェナジンと比較して、ビラスチンの方が有意に変化量が大きかったことが示されています(P=0.032)。
- ビラスチン群 :-0.99±1.87
- プラセボ群 :-0.28±1.67
- フェキソフェナジン群:-0.62±1.90
しかし、絶対差でみてみるとビラスチンとフェキソフェナジンの差は0.37です。これは臨床的に意義のある数値なのでしょうか。
過去の報告(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27084419/)によれば、臨床的意義のある最小差(MCID)は0.23〜0.28ですが、この場合のスケールは0〜12ポイントです。今回の試験の場合、TNSSのスケールは0〜15ポイントですので、そのまま当てはめることができません。また日本人を対象とした研究におけるTNSSのMCIDは依然として不明です。
仮に、この “0.37” という数値に臨床的な意義があるとしても、有効性が示されているのは1日目のみです。対象患者は通年性のアレルギー性鼻炎ですので、あまり1日目の恩恵は少ないように思われます。
それよりも、1日1回の服用で済む点や空腹時に服用しなければならない点について議論した方が良いのかもしれません。
いずれにせよ、ビラスチンが既存薬であるフェキソフェナジンよりも優れているとはいえなそうです。
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