― 抜歯後疼痛での鎮痛効果を検証(Drugs R D. 2020)
臨床疑問
イブプロフェン+アセトアミノフェンの配合(fixed-dose combinations, FDCs)は、イブプロフェン単剤より鎮痛効果が高いのか?
研究の背景
イブプロフェンとアセトアミノフェンは異なる作用機序を持ち、薬物相互作用も報告されていない。そのため低用量の併用により、効果増強が期待されている。しかし、固定用量配合(FDCs)の有効性は十分に検証されていなかった。
PICO
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 親知らず抜歯後の中等度〜重度疼痛患者(n=394) |
| I(介入) | イブプロフェン/アセトアミノフェン配合(200/500mg、250/500mg、300/500mg) |
| C(比較) | イブプロフェン400mg、プラセボ |
| O(アウトカム) | 鎮痛効果(SPRID0–8)、鎮痛発現時間、持続時間、有害事象 |
試験デザイン
- 研究タイプ:ランダム化二重盲検比較試験(proof-of-concept)
- 観察期間:12時間
- 評価項目:
- 主評価項目:SPRID0–8(ベースラインから投与8時間後までの疼痛緩和+疼痛強度差の時間加重和)
- 副次評価項目:
有意な鎮痛発現時間(TMPR)
鎮痛持続時間
有害事象
試験結果(抄録ベース)

主評価項目(鎮痛効果)
| 比較 | 結果 |
|---|---|
| 全FDCs vs プラセボ | 有意に優れる(すべて p<0.001) |
| FDCs vs イブプロフェン400mg | 有意差なし |
鎮痛発現時間(TMPR)
| 群 | 中央値 |
|---|---|
| FDCs | 44.5–54.1分 |
| イブプロフェン400 mg | 56.2分 |
| プラセボ | >720分 |
※FDCs・イブプロフェンともにプラセボより有意に速い(p < 0.001)
鎮痛持続時間
| 群 | 持続時間 |
|---|---|
| FDCs | 9.7–11.1時間 |
| イブプロフェン400 mg | 同程度 |
| プラセボ | 1.6時間 |
安全性
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 有害事象 | 全群で同程度 |
試験の限界(批判的吟味)
- proof-of-concept試験であり、検証的試験ではない(小規模なパイロット試験である)
- 観察期間が12時間と短く、長期的有効性・安全性は不明(対象患者は急性期痛であるため、内的妥当性としてはマッチしている)
- 抜歯後疼痛という急性疼痛モデルであり、他の疼痛(慢性疼痛など)への外的妥当性は限定的
- FDCとイブプロフェン単剤で有意差がなく、優越性は示されていない
- 用量設定(IBU低用量+APAP固定量)の最適性は未検証
コメント(解釈)
本研究では、イブプロフェン+アセトアミノフェン配合はプラセボに対して明確な鎮痛効果を示したが、イブプロフェン400 mg単剤との比較では有意差は認められなかった。
一方で、鎮痛発現時間や持続時間は同等であり、低用量イブプロフェンで同等効果を得られる可能性が示唆される点は臨床的に興味深い。
まとめ
- イブプロフェン/アセトアミノフェン配合はプラセボより有効
- イブプロフェン400mg単剤と同等の鎮痛効果
- 鎮痛発現は1時間以内
- 持続時間は約10時間
- 安全性は同程度
今回は第三大臼歯(親知らず)抜歯後の疼痛コントロールに焦点が当てられています。急性期痛であることから観察期間12時間は妥当でしょう。
腰痛症や関節症など慢性疼痛を呈しやすい疾患における有効性・安全性の検証が待たれます。今回検証されたイブプロフェン・アセトアミノフェン配合の用量は200/500mg、250/500mg、300/500mgであり、いずれもイブプロフェン400mgと同様の効果が得られています。つまり、イブプロフェン200mg/アセトアミノフェン500mgを用いれば同様の効果が期待できることになります。長期的に服用することを踏まえると、NSAIDsによる消化器症状・消化器疾患の発症リスクが懸念されることから、NSAIDsであるイブプロフェンの用量をおさえられることは有用です。
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、各イブプロフェン/アセトアミノフェン配合剤(200/500mg、250/500mg、300/500mg)は、イブプロフェン400mgと同等の鎮痛効果を示し、プラセボよりも優れた鎮痛効果を示した。
根拠となった試験の抄録
はじめに: イブプロフェンとアセトアミノフェンは、異なる作用機序によって鎮痛作用を発揮し、薬物相互作用を示しません。したがって、それぞれを低用量で併用することで、安全性を損なうことなく、より高い有効性が得られる可能性があります。
目的: 本研究では、イブプロフェン/アセトアミノフェン(IBU/APAP)の固定用量配合剤(FDC)の鎮痛効果を、イブプロフェン400mgおよびプラセボと比較して評価した。
方法: この12時間の二重盲検概念実証試験では、第三大臼歯抜歯後の中等度から重度の痛みを抱える患者を対象に、3種類のIBU/APAP配合剤(200 mg/500 mg、250 mg/500 mg、および300 mg/500 mg)をイブプロフェン400 mgおよびプラセボと比較した。主要評価項目は、投与後0~8時間における疼痛緩和および疼痛強度差スコアの時間加重合計(SPRID[4] 0-8)であった。有意な疼痛緩和までの時間(TMPR)、疼痛緩和の持続時間、および有害事象(AE)も評価した。
結果: 合計 394 人の患者がランダム化されました。すべての有効治療は SPRID[4] 0-8に対してプラセボよりも優れていました (すべて p < 0.001) が、イブプロフェン 400 mg とは有意差はありませんでした。FDC とイブプロフェンの TMPR の中央値 (それぞれ 44.5-54.1 分と 56.2 分) は、プラセボ (> 720 分、すべて p < 0.001 vs. プラセボ) よりも速かったです。鎮痛効果の持続時間は、FDC とイブプロフェン 400 mg (9.7 -11.1 時間) で同程度で、プラセボ (1.6 時間、すべて p < 0.001) よりも長くなりました。有害事象の発生率は、すべての治療で同程度でした。
結論: 各IBU/APAP配合剤は、イブプロフェン400mgと同等の鎮痛効果を示し、プラセボよりも優れた鎮痛効果を示した。各配合剤は、1時間以内に最大鎮痛効果(MPR)が得られ、鎮痛効果の持続時間は9時間以上であり、忍容性はイブプロフェンおよびプラセボと同程度であった。CLINICALTRIALS。
政府登録番号 : NCT01559259
引用文献
Evaluation of Fixed-Dose Combinations of Ibuprofen and Acetaminophen in the Treatment of Postsurgical Dental Pain: A Pilot, Dose-Ranging, Randomized Study
David Kellstein et al. PMID: 32506309 PMCID: PMC7419400 DOI: 10.1007/s40268-020-00310-7
Drugs R D. 2020 Sep;20(3):237-247. doi: 10.1007/s40268-020-00310-7.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32506309/

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