自由は幸福なのか?
現代社会では「時間が足りない」と感じる人が多くいます。その一方で、時間が余りすぎても幸福感にマイナスの影響を与えるのではないかという疑問があります。
そこで今回は、自由時間(discretionary time)と主観的幸福感の関係を検証した米国の研究結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
◆方法
- データ:アメリカ人35,375人を対象とした大規模データセット、および2つの実験
- 分析対象:自由時間の量と主観的幸福感(subjective well-being)
- 評価方法:大規模調査による横断データと、実験での因果的検証
◆主な結果
自由時間の量 | 主観的幸福感への影響 |
---|---|
少なすぎる場合 | ストレスが増え、幸福感は低下 |
適度にある場合 | 幸福感が高まる |
多すぎる場合 | 「生産性の欠如感」が生じ、幸福感が低下する傾向 |
生産的活動に使った場合 | 自由時間が多くても幸福感の低下は軽減 |
研究では、自由時間と幸福感の関係が「逆U字型(負の二次曲線)」を示すことが再現性をもって確認されました。
◆考察
- 「自由時間が少なすぎるとストレスで幸福感が低下する」というのは直感的に理解できます。
- 一方で「自由時間が多すぎても、幸福感が必ずしも上がらない」ことは注目に値します。
- 特に、自由時間を何に使うかが重要で、生産的・有意義な活動に充てることで幸福感の低下を防げることが示されました。
◆試験の限界
- 調査は主観的評価に基づいているため、文化や社会背景による差異がある可能性。
- 実験は限定的条件で行われたため、一般化にはさらなる検証が必要。
◆まとめ
- 自由時間は少なすぎても多すぎても幸福感を損なう
- 「ちょうどよい量」をどう過ごすかが幸福感の鍵
- 特に「学び・趣味・社会貢献」といった生産的活動に時間を使うことで、幸福感が高まりやすい
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。特に国や地域、環境など人種差だけでなく様々な要因でも同様の結果が示されるのか気にかかるところです。
続報に期待。

✅まとめ✅ 米国の横断研究の結果、自由時間は少なすぎても多すぎても幸福感を損なう可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景:現代社会に生きる多くの人々は、時間が足りないと感じ、常に時間を求めています。しかし、裁量時間が限られていることは、本当に有害なのでしょうか?また、裁量時間が多すぎることにもデメリットはあるのでしょうか?
方法:35,375人のアメリカ人を対象とした2つの大規模データセットと2つの実験を用いて、個人の裁量時間と主観的幸福感の関係を調査しました。
結果:裁量時間と主観的幸福感の間には負の二次関係が見られ、内部的に再現されました。
結論:これらの結果は、時間が少なすぎることは確かにストレスによる主観的幸福感の低下につながる一方で、時間が増えても必ずしも主観的幸福感が高まるわけではないことを示しています。裁量時間が多すぎる場合、生産性の欠如により主観的幸福感が低下することさえあります。このような場合、人々がその時間を生産的な活動に費やすことで、裁量時間が多すぎることによる悪影響は軽減される可能性があります。
引用文献
Having too little or too much time is linked to lower subjective well-being
Marissa A Sharif et al. PMID: 34498892 DOI: 10.1037/pspp0000391
J Pers Soc Psychol. 2021 Oct;121(4):933-947. doi: 10.1037/pspp0000391. Epub 2021 Sep 9.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34498892/
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