デュラグルチド増量 vs チルゼパチド切替、2型糖尿病患者により効果的なのは?(Open-RCT; SURPASS-SWITCH試験; Ann Intern Med. 2025)

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低用量デュラグルチドでコントロール不十分な2型糖尿病、次の一手は?

週1回投与のチルゼパチド(GLP-1/GIP受容体作動薬)は、SURPASS試験群においてHbA1cと体重の有意な改善を示し、2型糖尿病や肥満の治療薬として承認されました。一方で、すでにデュラグルチド(GLP-1受容体作動薬)を使用している患者に対し、「用量を増やすか」、「他薬へ切り替えるか」の最適解は定まっていません。

そこで今回は、低用量デュラグルチドで血糖コントロールが不充分な患者において「デュラグルチド増量」と「チルゼパチドへの切替」の有効性・安全性を直接比較したフェーズ4の多施設ランダム化比較試験(SURPASS-SWITCH試験)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

試験概要(SURPASS-SWITCH)

項目内容
デザイン多施設、ランダム化、オープンラベル、フェーズ4試験
登録番号ClinicalTrials.gov: NCT05564039
施設5か国38施設
対象者HbA1c 7.0~9.5%、BMI≧25、デュラグルチド0.75または1.5mgを6か月以上使用
割付デュラグルチド増量群(n=143) vs. チルゼパチド切替群(n=139)
介入内容デュラグルチド:最大4.5mgまたは最大耐量 vs チルゼパチド:最大15mg
評価時点40週後

主要および副次評価項目の結果

評価項目
(ベースラインから40週)
チルゼパチド群(n=139)デュラグルチド群(n=143)群間差(95% CI)P値
HbA1c変化-1.44%(SE 0.07)-0.67%(SE 0.08)-0.77%(-0.98 ~ -0.56)<0.001
体重変化-10.5kg(SE 0.5)-3.6kg(SE 0.5)-6.9kg(-8.3 ~ -5.5)<0.001

有害事象

  • 重篤な有害事象発現率:チルゼパチド群10人(7.2%)、デュラグルチド群10人(7.0%)
  • 最も多かった治療関連有害事象:悪心および下痢

コメント

比較的新しい治療薬であるチルゼパチドは、GLP-1/GIPデュアルアゴニストであり、従来のGLP-1受容体アゴニストよりも有用である可能性があります。しかしGLP-1受容体アゴニストで治療中のコントロール不良患者における選択肢の一つになりうるのかについては充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験(SURPASS-SWITCH試験)の結果、既にデュラグルチドを使用しているが血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者に対する治療戦略として、HbA1cのさらなる低下(-0.77%)および体重減少(-6.9kg)という点で、チルゼパチドへの切り替えが有意に優れていたことが示されました。しかも、重篤な有害事象の頻度は両群でほぼ同等であり、安全性に大きな差は見られませんでした。

一方で、この試験はオープンラベルデザインであり、評価項目の一部は患者報告アウトカムに依存する可能性もあるため、バイアスの影響を完全に排除できない点には注意が必要です。とはいえ、チルゼパチドが既存のGLP-1受容体作動薬よりも一歩進んだ「包括的代謝改善薬」として機能し得ることを示したという点で、意義深い試験といえるでしょう。特に、体重減少を重視する肥満合併例や、目標HbA1c到達が難しい患者においては、切り替えの選択肢として積極的に検討される可能性が高いと考えられます。

今後は、長期的な心血管アウトカムや腎保護効果、コスト面での評価など、実臨床への適用をさらに後押しするエビデンスの蓄積が期待されます。

続報に期待。

man with fireworks

✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、デュラグルチド治療でコントロール不充分な2型糖尿病患者において、治療をチルゼパチドへ切り替えることにより、デュラグルチドの用量を増やす場合と比べて、さらなるHbA1cの低下および体重減少が得られた。

根拠となった論文の抄録

背景:チルゼパチドは、週1回投与のグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬であり、2型糖尿病または肥満の成人の治療薬として承認されている。SURPASS第3相試験プログラムでは、HbA1cおよび体重の臨床的に意味のある低下が示された。

目的:コントロール不充分な2型糖尿病患者において、デュラグルチドの増量とチルゼパチドへの切替の有効性および安全性を比較すること。

試験デザイン多施設、ランダム化、オープンラベル、第4相試験(SURPASS-SWITCH試験)。ClinicalTrials.gov:NCT05564039

試験設定:5か国、38施設。

試験参加者:HbA1cが7.0%以上9.5%以下、体重が安定しており、BMIが25 kg/m²以上、デュラグルチド0.75 mgまたは1.5 mgを6か月以上使用している成人で、経口血糖降下薬を0~3剤使用している者(3か月以上)。

介入
デュラグルチドを最大4.5 mgまたは最大耐量まで増量する群と、チルゼパチドに切り替える群で比較。

評価項目主要評価項目は40週時点のHbA1cの変化、副次評価項目は体重の変化。

結果:合計282名がランダムに割り付けられた(チルゼパチド群139名、デュラグルチド群143名)。
40週時点のHbA1cの変化は、チルゼパチド群で-1.44%(SE 0.07)、デュラグルチド群で-0.67%(SE 0.08)であった(推定治療差 -0.77%、95%CI -0.98 ~ -0.56、P<0.001)。
体重の変化は、チルゼパチド群で-10.5kg(SE 0.5)、デュラグルチド群で-3.6kg(SE 0.5)であった(推定治療差 -6.9 kg、95%CI -8.3 ~ -5.5、P<0.001)。
重篤な有害事象は、チルゼパチド群で10名(7.2%)、デュラグルチド群で10名(7.0%)に報告された。最も多かった有害事象は悪心と下痢であった。

限界:オープンラベルデザインであること。

結論:SURPASS-SWITCH試験では、治療をチルゼパチドへ切り替えることにより、デュラグルチドの用量を増やす場合と比べて、さらなるHbA1cの低下および体重減少が得られた。

資金提供:イーライリリー・アンド・カンパニー

引用文献

Comparison of Dose Escalation Versus Switching to Tirzepatide Among People With Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Lower Doses of Dulaglutide : A Randomized Clinical Trial
Liana K Billings et al. PMID: 40183678 DOI: 10.7326/ANNALS-24-03849
Ann Intern Med. 2025 Apr 4. doi: 10.7326/ANNALS-24-03849. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40183678/

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