出血リスクはNOACと抗血小板薬どちらが多い?
動脈および静脈血栓塞栓症の予防において、治療用量の非ビタミンK経口抗凝固薬(NOAC)はアスピリンよりも優れていることが示されていますが、出血リスクについては充分に検証されていません。
そこで今回は、NOACと単独抗血小板療法との出血リスクの差を推定するために実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
データ情報源はMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov(開始時~2024年6月、言語制限なし)でした。
解析の対象となった試験は、治療用量NOACと単独抗血小板療法を比較したランダム化比較試験(RCT)であり、治療期間は3ヵ月以上でした。データ抽出は独立して二重に行われました。
試験結果から明らかになったことは?
26,224人が参加した9件のRCTが解析に組み入れられました。全試験で抗血小板療法としてアスピリンが使用されました。
(vs. アスピリン) | 大出血 RD(95%CI) | 頭蓋内出血 RD(95%CI) |
アピキサバン | RD 0.0%ポイント (-1.3~2.6%ポイント) 5試験 | RD -0.2%ポイント (-0.6~1.4%ポイント) 5試験 |
ダビガトラン | RD 0.5%ポイント (-2.1~19.6%ポイント) 2試験 | RD 0.0%ポイント (-1.1~24.5%ポイント) 2試験 |
リバーロキサバン | RD 0.9%ポイント (-0.1~3.7%ポイント) 2試験 | RD 0.3%ポイント (-0.1~79.7%ポイント) 2試験 |
アスピリンと比較して、アピキサバンは大出血(リスク差[RD] 0.0%ポイント、95%CI -1.3~2.6%ポイント;5試験)および頭蓋内出血(RD -0.2%ポイント、CI -0.6~1.4%ポイント;5試験)の発生率が同等でした。
ダビガトランはアスピリンと比較して、大出血(RD 0.5%ポイント、CI -2.1~19.6%ポイント;2試験)および頭蓋内出血(RD 0.0%ポイント、CI -1.1~24.5%ポイント;2試験)の発生率は同等でした。
リバーロキサバンはアスピリンと比較して、大出血(RD 0.9%ポイント、CI -0.1~3.7%ポイント;2試験)および頭蓋内出血(RD 0.3%ポイント、CI -0.1~79.7%ポイント;2試験)の発生率が高いことが示されました。
エビデンスの確実性は低~中程度でした。
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NOACと単独抗血小板療法との出血リスクの差については充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の系統的レビュー・メタ解析の結果、治療用量のアピキサバンとダビガトランの大出血リスクは低用量アスピリンと同程度でしたが、リバーロキサバンでは高いことが示されました。
ただし、個々の解析に組み入れられたのは最大でも5試験であり、出血リスクが高いとされるリバーロキサバンについては2試験のみの解析結果です。このため区間推定値が広く、効果推定値が真値から離れている可能性があります。
現段階においては、NOACの出血リスクが低用量アスピリンよりも高いのか低いのかについては不明です。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。
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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の系統的レビュー・メタ解析の結果、治療用量のアピキサバンとダビガトランの大出血リスクは低用量アスピリンと同程度であったが、リバーロキサバンでは高かった。
根拠となった試験の抄録
背景:動脈および静脈血栓塞栓症の予防において、治療用量の非ビタミンK経口抗凝固薬(NOAC)はアスピリンよりも優れている。
目的:NOACと単独抗血小板療法との出血リスクの差を推定する。
データ情報源:MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov(開始時~2024年6月、言語制限なし)。
試験の選択:治療用量NOACと単独抗血小板療法を比較したランダム化比較試験(RCT)で、治療期間は3ヵ月以上。
データ抽出:データ抽出は独立に二重に行った。
データの統合:26,224人が参加した9件のRCTが組み入れられた。全試験で抗血小板療法としてアスピリンが使用された。アスピリンと比較して、アピキサバンは大出血(リスク差[RD] 0.0%ポイント、95%CI -1.3~2.6%ポイント;5試験)および頭蓋内出血(RD -0.2%ポイント、CI -0.6~1.4%ポイント;5試験)の発生率が同等であった。ダビガトランはアスピリンと比較して、大出血(RD 0.5%ポイント、CI -2.1~19.6%ポイント;2試験)および頭蓋内出血(RD 0.0%ポイント、CI -1.1~24.5%ポイント;2試験)の発生率は同等であった。リバーロキサバンはアスピリンと比較して、大出血(RD 0.9%ポイント、CI -0.1~3.7%ポイント;2試験)および頭蓋内出血(RD 0.3%ポイント、CI -0.1~79.7%ポイント;2試験)の発生率が高かった。エビデンスの確実性は低~中程度であった。
試験の限界:信頼区間は広く、無効効果の可能性も含まれていた。
結論:このランダム化比較試験の系統的レビューでは、治療用量のアピキサバンとダビガトランの大出血リスクは低用量アスピリンと同程度であったが、リバーロキサバンでは高かった。
主な資金源:なし(PROSPERO:Crd42024553683)
引用文献
Bleeding Risks With Non-Vitamin K Oral Anticoagulants Versus Single Antiplatelet Therapy : A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Trials
Michael Ke Wang et al. PMID: 39928949 DOI: 10.7326/ANNALS-24-02132
Ann Intern Med. 2025 Feb 11. doi: 10.7326/ANNALS-24-02132. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39928949/
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