性行為の回数と予後との関連性は?
性行為は人間の健康と複雑な関係にありますが、予後との検証は充分ではありません。
そこで今回は、米国の若年・中年成人における性行為頻度と心血管疾患(CVD)発症率および全死因死亡率との相関関係を明らかにすることを目的に実施されたサーベイ研究の結果をご紹介します。
本研究では、米国全国民健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey, NHANES)(2005~2016)の参加者17,243人を分析し、多変量ロジスティック回帰モデルとCox回帰モデルを用いて、性頻度別にCVD発症率と全死亡リスクを比較しました。
Kaplan-Meier曲線は、性的頻度によって層別化された生存確率を評価し、制限付き三次スプライン回帰は、性的頻度、CVDおよび生存状態の間の非線形関係を調べるために用いました。また、ノモグラムを作成し、ROC曲線と検量線によって検証しました。
試験結果から明らかになったことは?
追跡期間中央値106ヵ月の間に443例(2.57%)が死亡しました。交絡因子を調整した結果、性行為の頻度は若年および中年者におけるCVD発症率および全死因死亡率と関連していました。
性行為の回数 | CVD発症 | 全死亡 |
12回未満/年 | 4.83% (Reference) | 4.39% (Reference) |
約52~103回/年 | オッズ比 0.61 (95%CI 0.43~0.87) P=0.007 | オッズ比 0.61 (95%CI 0.39~0.95) P=0.027 |
103回超/年 | オッズ比 0.98 (95%CI 0.66~1.46) P=0.9 | オッズ比 0.93 (95%CI 0.60~1.43) P=0.7 |
性行為の回数が12回未満/年の者がCVD発症および全死亡のリスクが最も高く、回数が増加するにつれてリスクは徐々に低下し、約52~103回/年で頭打ちとなりましたが、その後負の相関が出現し始めました。
性交渉の頻度に基づいて生存率を予測するノモグラムでは、3年、5年、10年のROC領域が0.782、0.807、0.803となり、検量線は概ね理想に一致しました。
コメント
性行為は人間の健康と複雑な関係にありますが、性行為の回数と予後との関連性については明らかとなっていません。
さて、米国のサーベイ研究の結果、性行為の頻度は、若年および中年成人におけるCVDおよび全死因死亡の発生率と関連していました。性交渉の頻度が過剰な場合も少ない場合(12回未満/年)も、健康に有害である可能性があることが示唆されました。
リスクが最も少ない回数としては52~103回/年であり、週1~2回の性行為が予後に優れているのかもしれません。ただし、本研究のデザインから因果関係を述べるのは困難であり、あくまでも相関関係が示された程度に捉えておく方が良さそうです。
またマスターベーションの頻度がどの程度影響するのか、他の国や地域においても同様の結果が示されるのかについては不明です。更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 米国のサーベイ研究の結果、性行為の頻度は、若年および中年成人におけるCVDおよび全死亡の発生率と関連していた。性交渉の頻度が過剰な場合も少ない場合(12回未満/年)も、健康に有害である可能性があることが示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景:性行為は人間の健康と複雑な関係にある。本研究の目的は、米国の若年・中年成人における性行為頻度と心血管疾患(CVD)発症率および全死因死亡率との相関関係を明らかにすることである。
方法:National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)(2005~2016)の参加者17,243人を分析し、多変量ロジスティック回帰モデルとCox回帰モデルを用いて、性頻度別にCVD発症率と全死亡リスクを比較した。Kaplan-Meier曲線は、性的頻度によって層別化された生存確率を評価し、制限付き三次スプライン回帰は、性的頻度、CVDおよび生存状態の間の非線形関係を調べた。また、ノモグラムを作成し、ROC曲線と検量線によって検証した。
結果:追跡期間中央値106ヵ月の間に443例(2.57%)が死亡した。交絡因子を調整した結果、性行為の頻度は若年および中年者におけるCVD発症率および全死因死亡率と関連していた。性行為の回数が12回/年未満の者がCVD発症および全死亡のリスクが最も高く、回数が増加するにつれてリスクは徐々に低下し、約52~103回/年で頭打ちとなったが、その後負の相関が出現し始めた。性交渉の頻度に基づいて生存率を予測するノモグラムでは、3年、5年、10年のROC領域が0.782、0.807、0.803となり、検量線は概ね理想に一致した。
結論:性行為の頻度は、若年および中年成人におけるCVDおよび全死因死亡の発生率と関連していた。性交渉の頻度が過剰な場合も少ない場合も、健康に有害である可能性がある。
キーワード:全死亡率;心血管疾患;NHANES;性交渉頻度;若年・中年成人
引用文献
The association of sexual frequency with cardiovascular diseases incidence and all-cause mortality
Tian-Qi Teng et al. PMID: 39738405 PMCID: PMC11685605 DOI: 10.1038/s41598-024-83414-3
Sci Rep. 2024 Dec 30;14(1):31925. doi: 10.1038/s41598-024-83414-3.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39738405/
コメント