2型糖尿病患者におけるセマグルチドと非動脈炎性前部虚血性視神経症リスクとの関連性は?(デンマークの前向きコホート研究; Int J Retina Vitreous. 2024)

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セマグルチド使用による非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の発症リスクは?

非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)は治療不可能な疾患であり、しばしば罹患眼に重篤かつ不可逆的な視力低下を引き起こすことが報告されています。これまでの研究結果から、セマグルチドの使用がNAIONと関連することが示唆されていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

そこで今回は、デンマークのすべての2型糖尿病(T2D)患者においてNAIONリスクを前向きに評価することを目的に実施された前向きコホート研究の結果をご紹介します。

5年間の縦断的コホート研究において、2018年から2024年の間にデンマークにおけるすべてのT2D患者(n=424,152)が同定されました。患者を週1回投与のセマグルチド(商品名:オゼンピック)への曝露(n=106,454)または非曝露(n=317,698)に従って層別化し、多変量Cox比例ハザード回帰モデルでNAIONの発生率およびハザード比(HR)を推定しました。

試験結果から明らかになったことは?

ベースライン時の年齢の中央値は65歳、ヘモグロビンA1cの中央値は50mmol/mol(6.7%)で、54.5%が男性でした。1,915,120人・年の観察期間中に218人がNAIONを発症しました。

セマグルチド週1回投与製剤への曝露非曝露ハザード比
(95%CI)
NAION発症0.228人0.093人HR 2.19
1.54~3.12

セマグルチドへの曝露は、より高い発症率(1000人・年当たり0.093人に対し0.228人、p<0.001)と関連し、他の複数の因子を考慮した場合でも、単独でNAIONの発症リスクの高さを予測しました(HR 2.19、95%信頼区間 1.54~3.12)。

中央値
(四分位範囲)
最初の処方から発症までの期間中央値 22.2ヵ月
10.2~37.8ヵ月

全体として、セマグルチドに曝露された67人がNAIONを発症し、最初の処方から発症までの期間の中央値は22.2ヵ月(四分位範囲 10.2~37.8ヵ月)でした。

コメント

非動脈炎性前部虚血性視神経症(nonarteritic anterior ischemic optic neuropathy, NAION)は眼底神経に栄養を届ける動脈が狭くなることで発症します。突発的に片眼に発症し、視野の下半分あるいは上半分が見えなくなることが多いとされています。また、視野の中心部分が見えなくなる場合もあることが報告されています。症状は数ヵ月間で自然に軽快することが報告されていますが、大半は見え方や視力が一定レベルのままが多いとされており、不可逆的な疾患であると考えられています。

2024年の研究報告(米国の1施設の後向き研究)を契機に、セマグルチド使用とNAION発症リスクとの関連性に注目が集まっていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

さて、デンマークにおける5年間の2型糖尿病患者の観察において、週1回投与製剤のセマグルチド(商品名:オゼンピック)使用は、非曝露と比較して、単独で非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)のリスクを2倍以上に増加させました。あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、大規模なコホートにおいてリスク増加が示されたことは、患者モニタリングにおける潜在的リスクの評価の必要性を強調しています。

そもそもセマグルチドは、糖尿病性網膜症の発症リスクを増加させる可能性が示唆されており、NAIONも含め、眼関連疾患のモニタリングが求められます。

NAIONの不可逆的な性質を考慮すると、このリスクを認識することは重要であり、他の国や地域、患者背景の違いによるリスク変化など、さまざまな要因検証を含めた更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ デンマークにおける5年間の2型糖尿病患者の観察において、週1回投与製剤のセマグルチド使用は単独で非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)のリスクを2倍以上に増加させた。NAIONの不可逆的な性質を考慮すると、このリスクを認識することは重要である。

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根拠となった試験の抄録

背景:非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)は治療不可能な疾患であり、しばしば罹患眼に重篤かつ不可逆的な視力低下を引き起こす。最近、セマグルチドの使用がNAIONと関連することが示唆されているため、本研究の目的は、デンマークのすべての2型糖尿病(T2D)患者においてこのリスクを前向きに評価することであった。

方法:5年間の縦断的コホート研究において、2018年から2024年の間にデンマークにおけるすべてのT2D患者(n=424,152)を同定した。患者を週1回投与のセマグルチドへの曝露(n=106,454)または非曝露(n=317,698)に従って層別化し、多変量Cox比例ハザード回帰モデルでNAIONの発生率およびハザード比(HR)を推定した。

結果:ベースライン時の年齢の中央値は65歳、ヘモグロビンA1cの中央値は50mmol/molで、54.5%が男性であった。1,915,120人・年の観察期間中に218人がNAIONを発症した。セマグルチドへの曝露は、より高い発症率(1000人・年当たり0.093人に対し0.228人、p<0.001)と関連し、他の複数の因子を考慮した場合でも、単独でNAIONの発症リスクの高さを予測した(HR 2.19、95%信頼区間 1.54~3.12)。全体として、セマグルチドに曝露された67人がNAIONを発症し、最初の処方から発症までの期間の中央値は22.2ヵ月(四分位範囲 10.2~37.8ヵ月)であった。

結論:デンマークにおける5年間の2型糖尿病患者の観察において、週1回投与製剤のセマグルチド使用は単独で非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)のリスクを2倍以上に増加させた。NAIONの不可逆的な性質を考慮すると、このリスクを認識することは重要であり、今後の研究では高リスクのサブグループを同定することを目指すべきである。

キーワード:コホート研究;非動脈炎性前部虚血性視神経症;レジストリベース;セマグルチド;2型糖尿病

引用文献

Once-weekly semaglutide doubles the five-year risk of nonarteritic anterior ischemic optic neuropathy in a Danish cohort of 424,152 persons with type 2 diabetes
Jakob Grauslund et al. PMID: 39696569 PMCID: PMC11657653 DOI: 10.1186/s40942-024-00620-x
Int J Retina Vitreous. 2024 Dec 18;10(1):97. doi: 10.1186/s40942-024-00620-x.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39696569/

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