高用量吸入コルチコステロイドの効果は?
成人の喘息増悪における高用量吸入コルチコステロイド(HDICS)に関するエビデンスは不充分です。そこで今回は、救急診療科(ED)で急性喘息増悪を来した成人患者を対象に、アドオン療法としてのHDICSの治療成績を標準治療の成績と比較したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、2022年3月から2023年4月にかけてタイのEDで実施された単施設、三重盲検、ランダム化比較試験です。喘息増悪の成人患者を、最初の1時間以内にプラセボ(通常の生理食塩水)またはHDICS(ブデソニド9000μg)のネブライゼーションとβ作動薬およびイプラトロピウム(ムスカリン受容体拮抗薬)の併用投与を受ける群にランダムに割り付けたました。
本試験の主要エンドポイントはED滞在時間、入院、ED再訪でした。副次的エンドポイントは、呼吸困難スケール、肺機能、入院期間、ED退院後の自宅増悪でした。
試験結果から明らかになったことは?
合計88人の患者がランダムに2群に割り付けられました:44人の患者がHDICSを受け、44人の患者が対照群となりました。
調整平均差 (95%信頼区間) | |
ED滞在時間 | 調整平均差 -133.6分 (-242.4 ~ -24.8分) p=0.016 |
HDICS群は対照群と比較して、ED滞在時間が有意に短く(調整平均差 -133.6分、95%信頼区間 -242.4 ~ -24.8分;p=0.016)、EDが8時間以内および16時間以内に自宅退院する割合が高いことが示されました。
しかし、入院率、ED再診率、呼吸困難スケール、肺機能、入院期間、ED退院後の在宅増悪については両群間に有意差はありませんでした。
コメント
成人の喘息増悪における高用量吸入コルチコステロイド(HDICS)に関するエビデンスは充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、高用量吸入コルチコステロイドは、成人の喘息増悪に対する標準治療のアドオン療法として、救急診療科の滞在を短縮するために有用である可能性が示されました。
全身性の副作用を緩和できるネブライザーを用いた試験ではありますが、用量は日本で承認されている2mgを上回る9000μg(9mg)が用いられています。
再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、高用量吸入コルチコステロイドは、成人の喘息増悪に対する標準治療のアドオン療法として、救急診療科の滞在を短縮するために有用である可能性が示された。
根拠となった試験の抄録
背景:成人の喘息増悪における高用量吸入コルチコステロイド(HDICS)に関するエビデンスは不充分である。本研究では、救急診療科(ED)で急性喘息増悪を来した成人患者を対象に、アドオン療法としてのHDICSの治療成績を標準治療の成績と比較した。
方法:本試験は、2022年3月から2023年4月にかけてタイのEDで実施された単施設、三重盲検、ランダム化比較試験である。喘息増悪の成人患者を、最初の1時間以内にプラセボ(通常の生理食塩水)またはHDICS(ブデソニド9000μg)のネブライゼーションとβ作動薬およびイプラトロピウムの併用投与を受ける群にランダムに割り付けた。
主要エンドポイントはED滞在時間、入院、ED再訪。副次的エンドポイントは、呼吸困難スケール、肺機能、入院期間、ED退院後の自宅増悪であった。
結果:合計88人の患者がランダムに2群に割り付けられた:44人の患者がHDICSを受け、44人の患者が対照群となった。HDICS群は対照群と比較して、ED滞在時間が有意に短く(調整平均差 -133.6分、95%信頼区間 -242.4 ~ -24.8分;p=0.016)、EDが8時間以内および16時間以内に自宅退院する割合が高かった。しかし、入院率、ED再診率、呼吸困難スケール、肺機能、入院期間、ED退院後の在宅増悪については両群間に有意差はなかった。
結論:高用量吸入コルチコステロイドは、成人の喘息増悪に対する標準治療のアドオン療法として、救急診療科の滞在を短縮するために有用である可能性がある。
試験登録番号:TCTR20201214001
キーワード:臨床試験、喘息、臨床管理、管理
引用文献
Nebulised high-dose corticosteroids as add-on therapy for adults with asthma exacerbation: a randomised controlled trial
Kumpol Kornthatchapong et al. PMID: 39694823 DOI: 10.1136/emermed-2024-213893
Emerg Med J. 2024 Dec 18:emermed-2024-213893. doi: 10.1136/emermed-2024-213893. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39694823/
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