抗凝固療法は用量により効果が異なるのか?
COVID-19で入院した患者における高用量抗凝固療法を評価した臨床試験の結果は一貫していません。
そこで今回は、高用量抗凝固療法と低用量抗凝固療法の臨床転帰との関連を推定することを目的に実施されたシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。
世界保健機関の国際臨床試験登録プラットフォーム(International Clinical Trials Registry Platform)およびClinicalTrials.govからランダム化試験が同定されました。適格なランダム化試験は、COVID-19で入院した患者を高用量抗凝固療法と低用量抗凝固療法に割り付けました。
適格とされた20試験は、前向きに合意された形式でデータを提供しました。さらに2試験が公表データに基づいて組み入れられました。
本解析の主要アウトカムはランダム化から28日後の全死亡。副次的アウトカムは侵襲的機械換気への移行または死亡、血栓塞栓イベント、大出血でした。
試験結果から明らかになったことは?
28日死亡率のオッズ比 (95%CI) | |
治療的用量抗凝固療法 vs. ヘパリンによる予防的用量抗凝固療法 | OR 0.77(0.64~0.93) I2=29%;11試験、6,297例 (ランダム化時に低酸素または酸素を必要としなかった患者 5,456例) |
治療的用量抗凝固療法 vs. 中用量抗凝固療法 | OR 1.21(0.93~1.58) I2=0%;6試験、患者 1,803例 (ランダム化時に非侵襲的換気を受けた患者 843人) |
中用量抗凝固療法 vs. 予防用量抗凝固療法 | 0.95(0.76~1.19) I2=0%;10試験、患者 3,897人 (ランダム化時に低酸素または酸素を必要としなかった患者 2,935人) |
ヘパリンによる予防的用量抗凝固療法と比較した治療的用量抗凝固療法は、28日死亡率を低下させました(OR 0.77、95%CI 0.64~0.93;I2=29%;11試験、6,297例、うち5,456例はランダム化時に低酸素または酸素を必要としなかった)。
28日死亡率のORは、中用量抗凝固療法(6試験、患者 1,803人、ランダム化時に非侵襲的換気を受けた患者 843人)と比較した治療用量で1.21(CI 0.93~1.58;I2=0%)、中用量抗凝固療法と予防用量抗凝固療法の比較で0.95(CI 0.76~1.19;I2=0%;10試験、患者 3,897人、ランダム化時に酸素なしまたは低酸素の患者 2,935人)でした。
いくつかの解析は検出力に限界がありましたが、治療効果は事前に定義された患者サブグループ間でほぼ一貫していました。低用量抗凝固療法と比較した高用量抗凝固療法は血栓塞栓性イベントの減少に関連していましたが、大出血のリスクは高いことが示されました。
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COVID-19患者において、過剰な炎症反応によるサイトカインの大量放出がみられます(サイトカインストーム)。血液凝固異常や血栓形成により、心筋梗塞、肺塞栓、脳梗塞、下肢動脈塞栓などを引き起こすことが知られており、これに対する抗凝固療法がおこなわれます。しかし、投与タイミングや抗凝固薬の用量については一定した見解が得られていません。
さて、ランダム化比較試験を対象としたメタ解析の結果、治療的用量の抗凝固療法は予防的用量の抗凝固療法と比較して28日死亡率を減少させました。死亡率は予防的抗凝固療法と比較して中用量抗凝固療法では同程度であり、中用量抗凝固療法と比較して治療的用量抗凝固療法では高かったものの、この比較は正確には推定されていません。
したがって、現在のところ、ランダム化時に低酸素または酸素を必要としなかった患者においては、予防的用量と比較して、治療的用量(比較的高用量)の方が効果的かもしれません。一方、中用量抗凝固療法との比較は充分ではありません。
更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたメタ解析の結果、治療的用量の抗凝固療法は予防的用量の抗凝固療法と比較して28日死亡率を減少させた。死亡率は予防的抗凝固療法と比較して中用量抗凝固療法では同程度であり、中用量抗凝固療法と比較して治療的用量抗凝固療法では高かったが、この比較は正確には推定されていない。
根拠となった試験の抄録
背景:COVID-19で入院した患者における高用量抗凝固療法を評価した臨床試験の結果は一貫していない。
目的:高用量抗凝固療法と低用量抗凝固療法の臨床転帰との関連を推定すること。
データ源:世界保健機関の国際臨床試験登録プラットフォーム(International Clinical Trials Registry Platform)およびClinicalTrials.govからランダム化試験を同定した。
試験の選択:適格なランダム化試験は、COVID-19で入院した患者を高用量抗凝固療法と低用量抗凝固療法に割り付けた。
データ抽出:適格とされた20試験は、前向きに合意された形式でデータを提供した。さらに2試験が公表データに基づいて組み入れられた。
主要アウトカムはランダム化から28日後の全死亡。副次的アウトカムは侵襲的機械換気への移行または死亡、血栓塞栓イベント、大出血であった。
データの統合:ヘパリンによる予防的用量抗凝固療法と比較した治療的用量抗凝固療法は、28日死亡率を低下させた(OR 0.77、95%CI 0.64~0.93;I2=29%;11試験、6,297例、うち5,456例はランダム化時に低酸素または酸素を必要としなかった)。28日死亡率のORは、中用量抗凝固療法(6試験、患者 1,803人、ランダム化時に非侵襲的換気を受けた患者 843人)と比較した治療用量で1.21(CI 0.93~1.58;I2=0%)、中用量抗凝固療法と予防用量抗凝固療法の比較で0.95(CI 0.76~1.19;I2=0%;10試験、患者 3,897人、ランダム化時に酸素なしまたは低酸素の患者 2,935人)であった。いくつかの解析は検出力に限界があったが、治療効果は事前に定義された患者サブグループ間でほぼ一貫していた。低用量抗凝固療法と比較した高用量抗凝固療法は血栓塞栓性イベントの減少に関連したが、大出血のリスクは高かった。
結論:治療的用量の抗凝固療法は予防的用量の抗凝固療法と比較して28日死亡率を減少させた。死亡率は予防的抗凝固療法と比較して中用量抗凝固療法では同程度であり、中用量抗凝固療法と比較して治療的用量抗凝固療法では高かったが、この比較は正確には推定されていない。
主な資金源:直接の資金提供はない
試験登録:PROSPERO Crd42020213461
引用文献
Anticoagulation Among Patients Hospitalized for COVID-19 : A Systematic Review and Prospective Meta-analysis
WHO Rapid Evidence Appraisal for COVID-19 Therapies (REACT) Working Group
Ann Intern Med. 2024 Dec 24. doi: 10.7326/ANNALS-24-00800. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39715559/
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