急性心筋梗塞におけるコルヒチンの有効性は?(RCT; CLEAR試験; N Engl J Med. 2024)

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急性心筋梗塞後にコルヒチンを投与すると心血管イベントを抑制できるのか?

炎症は心血管系の有害事象と関連していることが知られています。コルヒチンは心血管イベントのリスクを減少させることが最近の試験から示唆されていますが、急性心筋梗塞患者については充分に検証されていません。

そこで今回は、2×2の要因デザインを用いて、心筋梗塞患者をコルヒチンまたはプラセボ、スピロノラクトンまたはプラセボのいずれかを投与する群にランダムに割り付け、効果検証を行った多施設共同試験の結果(本稿ではコルヒチン試験の結果)をご紹介します。

治験薬は、コルヒチン錠0.5mg、スピロノラクトン錠25mg、およびコルヒチン錠とスピロノラクトン錠に適合するプラセボでした。試験開始時、最初の90日間は体重に応じたコルヒチンの投与が行われ、体重70kg以上の患者にはコルヒチン0.5mgまたはそれにマッチするプラセボが1日2回投与され、体重70kg未満の患者には0.5mgまたはそれにマッチするプラセボが1日1回投与されました。治療開始後90日間は、全例に1日1回コルヒチン製剤が投与されました。しかし、盲検下での中間解析で予想以上の投与中止率が示されたこと、Colchicine Cardiovascular Outcomes Trial(COLCOT)試験でコルヒチン1日1回投与の有効性が示されたことから、運営委員会は2020年9月からの残りの治療期間中、コルヒチン0.5mgまたはプラセボを1日1回投与するレジメンを採用しました(文献)。

本試験における有効性の主要評価項目は、心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、予定外の虚血による冠動脈血行再建術の複合であり、time-to-event解析で評価されました。

C反応性蛋白は患者のサブグループで3ヵ月目に測定され、安全性も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

14ヵ国104施設で合計7,062例の患者がランダム化を受けました。解析時にバイタルステータスが不明であった患者は45例(0.6%)であり、この情報はランダム化時に欠落した可能性が高いことが考えられました。

(追跡期間:中央値3年)コルヒチン群プラセボ群ハザード比
(95%CI)
一次アウトカムイベント
心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、予定外の虚血による冠動脈血行再建術の複合
3,528例中322例(9.1%)3,534例中327例(9.3%)ハザード比 0.99
0.85~1.16
P=0.93

コルヒチン群では3,528例中322例(9.1%)に、プラセボ群では3,534例中327例(9.3%)に、追跡期間中央値3年の間に一次アウトカムイベントが発生しました(ハザード比 0.99、95%信頼区間[CI] 0.85~1.16;P=0.93)。

主要転帰の各要素の発生率は両群で同様でした。

3ヵ月後のコルヒチン群とプラセボ群のC反応性蛋白値の最小二乗平均差は、ベースライン値で調整すると-1.28mg/L(95%CI -1.81 ~ -0.75)でした。

下痢はコルヒチン投与群の方がプラセボ投与群よりも高い割合で発生しましたが(10.2% vs. 6.6%;P<0.001)、重篤な感染症の発生率は群間で差がありませんでした。

コメント

急性心筋梗塞患者におけるコルヒチンの有効性については充分に検証されていません。

さて、2by2要因デザインによるランダム化比較試験の結果、心筋梗塞患者において、コルヒチンによる治療を心筋梗塞後すぐに開始し、中央値で3年間継続しても、複合主要転帰(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、または予定外の虚血による冠動脈血行再建術)の発生率は減少しませんでした。

2×2要因デザインを用いたランダム化比較試験は、複数の因子の主効果と相互作用効果を同時に評価でき、効率的で資源の節約につながります。臨床現場での応用性も高い一方で、サンプルサイズの増加や試験計画・解析の複雑さが課題となります。また、因子間の相互作用が検出されない場合の解釈が難しい他、因子が独立していない場合にはバイアスのリスクもあります。

今回の場合、スピロノラクトン投与による影響を踏まえた結果の解釈が求められます。また、試験参加者は大半が男性であり(約80%)、女性に対する結果の外挿は限定的です。

さらに、試験レジメンを中止した患者の割合は25%であり、一般的な脱落率としては高値です。とはいえ、感度分析の結果は一貫していることから、脱落による影響はほとんどないものと考えられます。

試験の限界はあるものの現時点において、急性心筋梗塞患者への低用量コルヒチンのルーティンな投与は推奨されません。どのような患者において、コルヒチン投与のメリットが最大化するのか、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 2by2要因デザインによるランダム化比較試験の結果、心筋梗塞患者において、コルヒチンによる治療を心筋梗塞後すぐに開始し、中央値で3年間継続しても、複合主要転帰(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、または予定外の虚血による冠動脈血行再建術)の発生率は減少しなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:炎症は心血管系の有害事象と関連している。コルヒチンは心血管イベントのリスクを減少させることが最近の試験から示唆されている。

方法:この多施設共同試験では、2×2の要因デザインを用いて、心筋梗塞患者をコルヒチンまたはプラセボ,スピロノラクトンまたはプラセボのいずれかを投与する群にランダムに割り付けた。コルヒチン試験の結果をここに報告する。
有効性の主要評価項目は心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、予定外の虚血による冠動脈血行再建術の複合で、time-to-event解析で評価された。C反応性蛋白は患者のサブグループで3ヵ月目に測定され、安全性も評価された。

結果:14ヵ国104施設で合計7,062例の患者がランダム化を受けた。解析時にバイタルステータスが不明であった患者は45例(0.6%)であり、この情報はランダム化時に欠落した可能性が高い。コルヒチン群では3,528例中322例(9.1%)に、プラセボ群では3,534例中327例(9.3%)に、追跡期間中央値3年の間に一次アウトカムイベントが発生した(ハザード比 0.99、95%信頼区間[CI] 0.85~1.16;P=0.93)。主要転帰の各要素の発生率は両群で同様であった。3ヵ月後のコルヒチン群とプラセボ群のC反応性蛋白値の最小二乗平均差は、ベースライン値で調整すると-1.28mg/L(95%CI -1.81 ~ -0.75)であった。下痢はコルヒチン投与群の方がプラセボ投与群よりも高い割合で発生したが(10.2% vs. 6.6%;P<0.001)、重篤な感染症の発生率は群間で差がなかった。

結論:心筋梗塞患者において、コルヒチンによる治療を心筋梗塞後すぐに開始し、中央値で3年間継続しても、複合主要転帰(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、または予定外の虚血による冠動脈血行再建術)の発生率は減少しなかった。

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT03048825

引用文献

Colchicine in Acute Myocardial Infarction
Sanjit S Jolly et al. PMID: 39555823 DOI: 10.1056/NEJMoa2405922
N Engl J Med. 2024 Nov 17. doi: 10.1056/NEJMoa2405922. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39555823/

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