食事時間制限と25%のカロリー制限どちらの体重減少効果が大きいのか?
カロリー計算を行わない食事時間制限(食事時間制限法:Time-restricted eating、16時間ファスティング、16時間絶食)は人気のある減量戦略となっていますが、結果は一貫しておらず、その有効性を評価する長期ランダム化試験は限られています。
そこで今回は、食事時間制限がカロリー制限(calorie restriction)またはコントロールと比較して、体重コントロールおよび心代謝リスク軽減に有効であるかどうかを明らかにすることを目的に実施された12ヵ月間のランダム化比較試験(ClinicalTrials.gov: NCT04692532)の結果をご紹介します。
本試験は、イリノイ大学シカゴ校で2021年1月~2022年9月に実施され、肥満成人90例が対象となりました。
試験参加者は、8時間の食事時間制限(正午〜午後8時までの間の食事のみ、カロリー計算なし)、カロリー制限(1日25%のエネルギー制限)、コントロール(1日10時間以上の食事)にランダム割り付けされましたが、盲検化されませんでした。
本試験の評価項目は、12ヵ月目までの体重、代謝マーカー、エネルギー摂取量の変化でした。
試験結果から明らかになったことは?
77例(85.6%)が研究を完了しました。平均年齢は40歳(SD 11)、33%が黒人、46%がヒスパニック系でした。
エネルギー摂取量の平均減少量 | |
食事時間制限群 | -425kcal/日(SD 531) |
カロリー制限群 | -405kcal/日(SD 712) |
エネルギー摂取量の平均減少量は、食事時間制限群で-425kcal/日(SD 531)、カロリー制限群で-405kcal/日(SD 712)でした。
12ヵ月目までの体重減少 vs. 対照群 | |
食事時間制限群 | -4.61kg(95%CI -7.37 ~ -1.85kg;P≦0.01) (-4.87%、CI -7.61% ~ -2.13%) |
カロリー制限群 | -5.42kg(CI -9.13 ~ -1.71kg;P≦0.01) (-5.30%、CI -9.06% ~ -1.54%) |
食事時間制限 vs. カロリー制限 | |
12ヵ月目までの体重減少 | 0.81kg、CI -3.07kg ~ 4.69kg;P=0.68) (0.43%、CI -3.48% ~ 4.34%) |
対照群と比較して、12ヵ月目までの体重減少は、食事時間制限群で-4.61kg(95%CI -7.37 ~ -1.85kg;P≦0.01)(-4.87%、CI -7.61% ~ -2.13%)、カロリー制限群で-5.42kg(CI -9.13 ~ -1.71kg;P≦0.01)(-5.30%、CI -9.06% ~ -1.54%)であり、食事時間制限とカロリー制限の間に統計学的有意差は認められませんでした(0.81kg、CI -3.07kg ~ 4.69kg;P=0.68)(0.43%、CI -3.48% ~ 4.34%)。
コメント
カロリー計算を行わない食事時間制限は、16時間ファスティング(16時間絶食)とも呼ばれ、俳優のヒュー・ジャックマンなども行っていることが知られています。しかし、この食事法の有効性については一貫した結果が得られておらず、依然として議論されています。
さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、人種的に多様な集団において、食事時間制限は対照と比較して体重減少をもたらすのに有効であることが示されました。一方、カロリー制限との間に統計学的な有意差は示されませんでしたが、体重減少効果はカロリー制限の方が0.81kg多いことが明らかとなりました。抄録からは介入間のカロリー摂取量の差が示されておらず、結果の解釈が困難です。カロリー制限などの食事療法は、長期になればなるほどアドヒアランスが低下することが報告されているため、各群の介入アドヒアランスについても注視した方が良いでしょう。試験規模が小さいことから追試が求められます。
続報に期待。
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