コルヒチンは変形性関節症の疼痛症状を緩和できるのか?
コルヒチンは変形性関節症の治療薬として提案されることがありますが、矛盾したエビデンスが報告されています。
そこで今回は、手指の変形性関節症患者を対象に、コルヒチンの有効性と安全性をプラセボと比較検証した単施設二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(COLOR試験)の結果をご紹介します。
本試験はデンマークの外来診療所から、症候性変形性手関節症で、100mmの視覚的アナログスケールで少なくとも40mmの指の痛みを有する成人が募集されました。参加時に最もひどい指の痛みがある手をターゲットハンドとしました。
参加者は、BMI(30kg/m2以上)、性別、年齢(75歳以上)で層別化し、0.5mgのコルヒチンまたはプラセボを1日2回12週間経口投与する群に(1:1)ランダムに割り当てられました。参加者、アウトカム評価者、データ解析者は、治療割り付けに対して盲検化されていました。
主要評価項目は、intention-to-treat集団において、100mmの視覚的アナログスケールで評価した標的手指疼痛のベースラインから12週目までの変化で、事前に規定した最小臨床的重要差(minimal clinically important difference)は15mmでした。
安全性は、intention-to-treat集団において、12週目に評価されました。
根拠となった試験の抄録
2021年1月15日から2022年3月3日の間に、186例が適格性を審査され、100例がコルヒチン(n=50)またはプラセボ(n=50)の投与にランダムに割り付けられました。参加者の平均年齢は70.9歳(SD 7.5)、100例中69例(69%)が女性、31例(31%)が男性でした。すべての参加者が試験を完了しました。
コルヒチン群 | プラセボ群 | 群間差 | |
ベースラインから12週目までの 手指疼痛の平均変化量 | -13.9mm (SE 2.8) | -13.5mm (SE 2.8) | -0.4mm (95%CI -7.6 〜 6.7) p=0.90 |
手指疼痛のベースラインから12週目までの平均変化量は、コルヒチン群で-13.9mm(SE 2.8)、プラセボ群で-13.5mm(2.8)、群間差(コルヒチン vs. プラセボ)は-0.4mm(95%CI -7.6 〜 6.7; p=0.90)でした。
コルヒチン群では、50例中36例(72%)に76件の有害事象が発生し、重篤な有害事象は1件(入院に至る片頭痛発作)でした。プラセボ群では、50例中22例(44%)に42件の有害事象が発生し、2件の重篤な有害事象(胆嚢炎、アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度上昇、同一人物)が発生しました。
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コルヒチンは適応症(2023年6月時点)として、「痛風発作の緩解及び予防」、「家族性地中海熱」を有しています。炎症カスケードを抑制することで、炎症に伴う疼痛症状を緩和することから、様々な炎症弛緩への応用に期待が寄せられています。しかし、変形性手関節症患者に対する効果については明らかとなっていません。
さて、単施設二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の結果、疼痛を伴う変形性手関節症患者において、コルヒチン0.5mgを1日2回、12週間投与しても、痛みを効果的に緩和することはできず、コルヒチンによる治療は、より多くの有害事象と関連していました。
変形性関節症は関節軟骨のすり減りによる軟骨下骨の露出、軟骨下骨への物理的ダメージにより炎症症状から疼痛症状が引き起こされます。コルヒチンによる炎症抑制作用は、疾患の初期により効果発揮すると考えられることから、投与開始時期が遅かった可能性があります。また、用量0.5mgについても適切であったのか疑問が残ります。
炎症期から侵害受容期へ移行してしまった場合、コルヒチンによる効果は期待できないと考えられることから追試が求められます。
続報に期待。
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