肥満患者におけるカロリー制限に食事摂取の時間制限を加えると体重は減るのか?
肥満患者は関節痛の他、高血圧症や心血管イベントの併発リスクが高いことが報告されています。基本的には運動療法と食事療法の実施が求められます。食事療法としては、食事摂取の回数、タイミング、そしてカロリー制限が実施されますが、体重減少を目的とした食事摂取の時間制限による長期的な有効性と安全性は明らかではありません。
そこで今回は、肥満患者を対象に、カロリー制限に加えて食事摂取の時間制限を併用した場合の体重減少効果について検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験では、肥満患者139例が、カロリー制限を伴う時間制限食(午前8時から午後4時の間にのみ食事をする)群と、1日のカロリー制限食単独群にランダムに割り付けられました。12ヵ月間、参加者全員にカロリー制限が指示されました(男性 1日1500〜1800kcal、女性 1日1200〜1500kcal)。
主要アウトカムは、体重のベースラインからの変化における両群間の差であり、副次的アウトカムには、ウエスト周囲径、体格指数(BMI)、体脂肪量、および代謝危険因子の測定値の変化が含まれました。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された参加者139例のうち、118例(84.9%)が12ヵ月後のフォローアップを完了しました。
時間制限食群 | カロリー制限食単独群 | 純群間差 | |
12ヵ月後のベースラインからの 平均体重減少 | -8.0kg (95%CI -9.6~-6.4) | -6.3kg (95%CI -7.8~-4.7) | -1.8kg (95%CI -4.0~0.4) P=0.11 |
12ヵ月後のベースラインからの平均体重減少は、時間制限食群で-8.0kg(95%信頼区間[CI] -9.6~-6.4)、カロリー制限食単独群で-6.3kg(95%CI -7.8~-4.7)であった。12ヵ月後の評価では、体重の変化は2群間で有意差はありませんでした(純群間差 -1.8kg;95%CI -4.0~0.4;P=0.11)。
ウエスト周囲径、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝性危険因子の解析結果は、主要評価項目の結果と一致した。また、有害事象の発生数についても、両群間に大きな差は認められませんでした。
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オートファジーダイエットに注目が集まっています。まずオートファジー(Autophagy)とは、ギリシャ語で「オート(自分を)+ファジー(食べる)」という意味を持ち、我々の細胞が文字通り自分自身を食べる「自食作用」のことです。もともと細胞は、損傷したり、不要であったり、あるいは有害な部分を自ら食べて取り除き、新しい細胞へと生まれ変わらせる仕組みを有しています。これをオートファジーといいます。オートファジーダイエットとは、このオートファジー機能を活性化するための方法です。具体的には、空腹時間を16時間作ることです。これにより自食作用が活性化することで体重減少が見込めます。
さて、本試験結果によれば、肥満患者において、カロリー制限に加えて食事摂取の時間制限は、体重、体脂肪、代謝危険因子の減少に関して、カロリー制限単独よりも有益ではありませんでした。群間差は-1.8kg(95%CI -4.0~0.4)と、区間推定値の幅が大きいことがわかります。また、サンプルサイズがやや小さいように考えられますので、試験デザインを再検討した方が良いと考えられます。
とはいえ、本ランダム化比較試験においては、カロリー制限に加えて食事摂取の時間制限を行なっても、カロリー制限単独と比較して、追加の有益生はなさそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 肥満患者において、食事摂取の時間制限は、体重、体脂肪、代謝危険因子の減少に関して、1日のカロリー制限よりも有益ではなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:体重減少を目的とした時間制限食の長期的な有効性と安全性は明らかでない。
方法:肥満患者139例を、カロリー制限を伴う時間制限食(午前8時から午後4時の間にのみ食事をする)群と、1日のカロリー制限食単独群にランダムに割り付けた。12ヵ月間、参加者全員にカロリー制限食を指示した(男性 1日1500〜1800kcal、女性 1日1200〜1500kcal)。
主要アウトカムは、体重のベースラインからの変化における両群間の差であり、副次的アウトカムには、ウエスト周囲径、体格指数(BMI)、体脂肪量、および代謝危険因子の測定値の変化が含まれた。
結果 :ランダム化された139例の参加者のうち、118例(84.9%)が12ヵ月後のフォローアップを完了した。12ヵ月後のベースラインからの平均体重減少は、時間制限食群で-8.0kg(95%信頼区間[CI] -9.6~-6.4)、カロリー制限食単独群で-6.3kg(95%CI -7.8~-4.7)であった。12ヵ月後の評価では、体重の変化は2群間で有意差はなかった(純群間差 -1.8kg;95%CI -4.0~0.4;P=0.11)。ウエスト周囲径、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝性危険因子の解析結果は、主要評価項目の結果と一致した。また、有害事象の発生数についても、両群間に大きな差は認められなかった。
結論:肥満患者において、食事摂取の時間制限は、体重、体脂肪、代謝危険因子の減少に関して、1日のカロリー制限よりも有益ではなかった。
の資金提供:国家重点研究開発プロジェクト【No.2018YFA0800404】 他
ClinicalTrials.gov番号:NCT03745612
引用文献
Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss
Deying Liu eta l.
N Engl J Med. 2022 Apr 21;386(16):1495-1504. doi: 10.1056/NEJMoa2114833.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35443107/
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