肥満治療におけるチルゼパチド vs. セマグルチド — より効果が高いのはどちら?(Open-RCT; SURMOUNT-5試験; New Engl J Med. 2025)

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肥満治療の新たな選択肢

肥満治療薬として、チルゼパチドセマグルチドは高い注目を集めています。
両薬剤は、GLP-1受容体作動薬としての作用を持ちながらも、チルゼパチドはGIP受容体作動薬としての機能も併せ持つため、より強力な体重減少効果が期待されています
しかし、2型糖尿病を伴わない肥満患者に対する有効性と安全性の直接比較はこれまで不足していました。

本研究(SURMOUNT-5試験)は、2型糖尿病を伴わない肥満成人を対象に、チルゼパチドとセマグルチドを比較検証した第3b相ランダム化試験です。


試験結果から明らかになったことは?

試験デザインと対象

項目内容
研究デザイン第3b相、オープンラベル、ランダム化、対照試験
対象者肥満(BMI ≥30)だが2型糖尿病を有しない成人
群分けチルゼパチド群(10 mgまたは15 mg) vs. セマグルチド群(1.7 mgまたは2.4 mg)
投与方法週1回皮下注、最大耐容量で72週間
主要評価項目72週時点の体重変化率(%)
副次評価項目体重減少率(10%、15%、20%、25%以上)、ウエスト周囲径の変化

主な結果

評価項目チルゼパチド群セマグルチド群群間差(P値)
体重減少率(平均)-20.2%
(95%CI -21.4 ~ -19.1)
-13.7%
(95%CI -14.9 ~ -12.6)
P < 0.001
ウエスト周囲径減少(平均)-18.4 cm
(95%CI -19.6 ~ -17.2)
-13.0 cm
(95%CI -14.3 ~ -11.7)
P < 0.001
体重減少達成率(10%以上)87%68%P < 0.001
体重減少達成率(15%以上)72%55%P < 0.001
体重減少達成率(20%以上)54%37%P < 0.001
体重減少達成率(25%以上)34%20%P < 0.001
主な有害事象胃腸障害(軽度~中等度)胃腸障害(軽度~中等度)
  • チルゼパチド群では、72週時点での体重減少が平均20.2%と大幅であり、セマグルチド群(13.7%)と比較して有意に高かった
  • ウエスト周囲径もテルゼパチド群で大きく減少し、減少量の差は有意であった。
  • 10%以上の体重減少達成率は87%と、セマグルチド群の68%を大きく上回った
  • 有害事象は両群で類似しており、主に消化器症状(吐き気や下痢)がみられたが、多くは軽度から中等度で、特に用量漸増期間中に発生した。

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テルゼパチドの強み

  • 体重減少効果が強力
    • セマグルチドに比べて約1.5倍の体重減少率が得られ、ウエスト減少効果も優れている
  • GIP/GLP-1二重作用
    • GLP-1とGIPの相乗効果が、より強い食欲抑制や脂肪減少に寄与している可能性がある。

臨床現場での考慮点

  • 消化器症状の管理が重要
    • 用量漸増期間中に胃腸障害が多く発生するため、導入時に注意が必要
  • 適応患者の選定
    • 肥満だが2型糖尿病を有さない患者での使用が対象である点を考慮。

今後の課題

  • 長期安全性の評価
    • 現段階では、72週のデータのみであり、長期使用時のリスクも検証が必要。
  • 実臨床での費用対効果
    • 薬剤コストを考慮し、個々の患者に合わせた適応が求められる

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✅まとめ✅ 72週間の非盲検ランダム化比較試験の結果、肥満だが糖尿病のない参加者では、72 週目の体重とウエスト周囲の減少に関して、チルゼパタイドによる治療がセマグルチドによる治療より優れていた。

根拠となった試験の抄録(日本語訳)


背景: 
チルゼパチドとセマグルチドは肥満管理に非常に有効な薬剤です。2型糖尿病を合併していない肥満成人におけるチルゼパチドとセマグルチドの有効性と安全性は不明です。

方法: この第3b相非盲検対照試験では、肥満を有するが2型糖尿病を合併していない成人被験者を、最大耐量チルゼパタイド(10 mgまたは15 mg)または最大耐量セマグルチド(1.7 mgまたは2.4 mg)を週1回皮下投与する群に1:1の割合でランダムに割り付け、72週間投与した。
主要評価項目は、ベースラインから72週までの体重変化率とした。主要な副次評価項目は、体重の10%、15%、20%、25%以上の減少、およびベースラインから72週までのウエスト周囲径の変化であった。

結果: 合計751名の参加者がランダム化された。72週時点の体重の最小二乗平均値変化率は、チルゼパタイド群で-20.2%(95%信頼区間[CI] -21.4 ~ -19.1)、セマグルチド群で-13.7%(95%信頼区間[CI] -14.9 ~ -12.6)でした(P<0.001)。ウエスト周囲径の最小二乗平均値変化率は、チルゼパタイド群で-18.4cm(95%信頼区間[CI] -19.6 ~ -17.2)、セマグルチド群で-13.0cm(95%信頼区間[CI] -14.3 ~ -11.7)でした(P<0.001)。チルゼパチド群の参加者は、セマグルチド群の参加者と比較して、体重が少なくとも10%、15%、20%、25%減少する可能性が高かった。両治療群で最も多くみられた有害事象は消化器系であり、そのほとんどが軽度から中等度の重症度で、主に用量漸増中に発現した。

結論: 肥満だが糖尿病のない参加者では、72 週目の体重とウエスト周囲の減少に関して、チルゼパタイドによる治療がセマグルチドによる治療より優れていた。

資金提供:イーライリリー社

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT05822830

引用文献

Tirzepatide versus Semaglutide for Obesity Management in Adults Without Type 2 Diabetes: A Randomized Controlled Trial
Smith J, et al.
PMID: 40353578
New Engl J Med. 2025; doi:10.1056/NEJMoa40353578
ー 続きを読む:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40353578/

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