2型糖尿病患者におけるメトホルミン使用と認知症リスクとの関連性は?(SR&MA; Diabetes Obes Metab. 2025)

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メトホルミン使用と認知症リスク低減は関連するのか?

2型糖尿病(T2DM)におけるメトホルミン使用と認知症リスクとの関連については議論が続いています。

そこで今回は、T2DM患者におけるメトホルミン治療が認知症に及ぼす影響を評価するために行われたシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。

本解析では、PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govウェブサイトについて2024年4月9日まで検索されました。

T2DMにおけるメトホルミン治療の効果を他の抗糖尿病薬または無治療と比較したコホート研究が対象となりました。

ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)はランダム効果モデルにより計算されました。

試験結果から明らかになったことは?

3,463,100人が参加した20件のコホート研究(24の個別比較)が同定されました。

全認知症の発生リスク
ハザード比(95%CI)
メトホルミンHR 0.76(0.65~0.91
p=0.002、I2=98.9%
n=17
スルホニル尿素HR 0.88(0.85~0.90
p<0.001、I2=9.7%
n=5
チアゾリジンジオンHR 0.53(0.08~3.41
p=0.503、I2=92.7%
n=2

メタ解析の結果、メトホルミンを服用しているT2DM患者は非服用者と比較して全認知症の発生率が低いことが明らかになりました(n=17、HR 0.76、95%CI 0.65~0.91、p=0.002、I2=98.9%)。

また、スルホニル尿素(n=5、HR 0.88、95%CI 0.85~0.90、p<0.001、I2=9.7%)でも発生率の低下が認められましたが、チアゾリジンジオン(n=2、HR 0.53、95%CI 0.08~3.41、p=0.503、I2=92.7%)では示されませんでした。

メトホルミン使用における全認知症の発生リスク
ハザード比(95%CI)
非特定T2DMHR 0.75(0.64~0.89
n=19
新規に診断されたT2DMHR 1.01(0.81~1.27
n=5

さらに、メトホルミンは非特定T2DM(n=19、HR 0.75、95%CI 0.64~0.89)において有利な効果を示しましたが、新規に診断されたT2DM(n=5、HR 1.01、95%CI 0.81~1.27)では示されませんでした。

コメント

2型糖尿病(T2DM)におけるメトホルミン使用と認知症リスクとの関連については充分に検証されていません。

さて、システマティックレビュー・メタ解析の結果、メトホルミンはT2DM患者における認知症発症率の低下と相関するかもしれないことが示されました。しかし、異質性が高いこと(I2=98.9%)を考慮して、これらの結果を慎重に解釈することが重要です。

本解析で対象となったのはコホート研究のみであり、調整しきれない交絡因子が残存しています。また、メトホルミンは服用回数が多いことから、そもそも認知症リスクを有する患者には使用されづらい可能性があります。海外ではメトホルミン徐放製剤(met XR)が販売されていますが、それでも服用回数は2~3回です。したがって、服薬アドヒアランスの向上、処方の簡便化の観点から、服用回数が1回で済む他の薬剤への変更が現実的です。

メトホルミンそのものに認知症リスクの低減効果があるか否かについては、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ コホート研究のメタ解析の結果、メトホルミンはT2DM患者における認知症発症率の低下と相関するかもしれない。しかし、異質性が高いことを考慮して、これらの結果を慎重に解釈することが重要である。

根拠となった試験の抄録

目的:2型糖尿病(T2DM)におけるメトホルミンと認知症リスクとの関連については議論が続いている。本研究は、T2DM患者におけるメトホルミン治療が認知症に及ぼす影響を評価するために行われた。

材料と方法:PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govウェブサイトを2024年4月9日まで検索した。
T2DMにおけるメトホルミン治療の効果を他の抗糖尿病薬または無治療と比較したコホート研究を対象とした。
ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)はランダム効果モデルを用いて計算した。

結果:3,463,100人が参加した20件のコホート研究(24の個別比較)が同定された。メタアナリシスの結果、メトホルミンを服用しているT2DM患者は非服用者と比較して全認知症の発生率が低いことが明らかになった(n=17、HR 0.76、95%CI 0.65~0.91、p=0.002、I2=98.9%)、スルホニル尿素(n=5、HR 0.88、95%CI 0.85~0.90、p<0.001、I2=9.7%)であったが、チアゾリジンジオン(n=2、HR 0.53、95%CI 0.08~3.41、p=0.503、I2=92.7%)ではなかった。さらに、メトホルミンは非特定T2DM(n=19、HR 0.75、95%CI 0.64~0.89)において有利な効果を示したが、新規に診断されたT2DM(n=5、HR 1.01、95%CI 0.81~1.27)では示さなかった。

結論:メトホルミンはT2DM患者における認知症発症率の低下と相関するかもしれない。しかし、異質性が高いことを考慮して、これらの結果を慎重に解釈することが重要である。

キーワード:認知症;メタ解析;メトホルミン;2型糖尿病

引用文献

Association of Metformin use with risk of dementia in patients with type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis
Chunbian Tang et al. PMID: 39780315 DOI: 10.1111/dom.16192
Diabetes Obes Metab. 2025 Jan 8. doi: 10.1111/dom.16192. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39780315/

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