免疫抑制剤服用患者における動眼神経麻痺を伴う眼部帯状疱疹に対するアメナメビル治療後の無菌性髄膜炎(症例報告; J Infect Chemother. 2023)

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眼部帯状疱疹に対するアメナメビルの効果は?

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、一般に小児の一次感染として水痘を引き起こし、その後、脳神経、後根神経節、自律神経節に潜伏感染します。ストレス環境への曝露や加齢などによりVZV特異的T細胞免疫が低下すると、VZVの再活性化が起こることがあります。

VZVの再活性化は帯状疱疹(HZ)だけでなく、VZV髄膜炎やその他のさまざまな神経症状を引き起こすことが報告されています。

治療の基本は抗ウイルス薬であり、比較的新しい薬剤であるアメナメビルが使用されるようになりました。腎機能によらず使用しやすいアメナメビルは、特に高齢者で使用されています。一方で、高価であること、髄液への移行が低いことなど、コストパフォーマンスや薬剤プロファイルを踏まえた使用が求められます。

今回は、アメナメビルで治療したケースで、HZ眼症後に無菌性髄膜炎を合併し、ステロイドによる治療介入により転帰が改善した動眼神経単球痛の1例について紹介します。

症例報告から明らかになったことは?

症例は79歳の女性であり、主治医からアメナメビルを処方された後、嘔吐で他病院を受診しました。関節リウマチの既往があり、プレドニゾロンとメトトレキサートが投与されていました。

最終的に眼部帯状疱疹と無菌性髄膜炎と診断され、抗ウイルス薬の静注療法が開始されました。しかし、入院11日目に動眼神経麻痺を発症しました。

この症例では、抗ウイルス薬投与と臨床的改善の間にタイムラグがみられました。

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水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による神経障害の機序としては、神経への直接障害、炎症や浮腫の波及による障害、神経系への免疫反応、ウイルスによる閉塞性血管炎などが考えられています。特に顔面の神経をつかさどる三叉神経領域では、抗ウイルス薬の髄液への移行性が求められます。

比較的新しいアメナメビルは、髄液移行性について検証されたマウスでの実験について、脳や脊髄に対しほぼ移行性がないことが報告されています。しかし、ヒトにおける検証は充分ではありません。

さて、症例報告の結果、特に中枢神経系合併症のハイリスク症例において、アメナメビル治療では不十分であった可能性が示唆されました。抗ウイルス薬の脳内移行性の低さを回避するための抗ウイルス薬の選択の必要性について更なる検証が求められます。

あくまでも1症例の結果であり、そもそもステロイドを使用していることから、結果の一般化は困難であり、更なる検証が求められます。とはいえ、他にも同様の症例報告があり、髄液移行などの薬剤プロファイルを踏まえると違和感のない結果です。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 症例報告の結果、特に中枢神経系合併症のハイリスク症例において、アメナメビル治療では不十分であった可能性が示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、一般に小児の一次感染として水痘を引き起こし、その後、脳神経、後根神経節、自律神経節に潜伏感染する。加齢などによりVZV特異的T細胞免疫が低下すると、VZVの再活性化が起こることがある。VZVの再活性化は帯状疱疹(HZ)だけでなく、VZV髄膜炎やその他のさまざまな神経症状を引き起こすことが報告されている。

目的:本研究では、HZ眼症後に無菌性髄膜炎を合併し、ステロイドによる治療介入により転帰が改善した動眼神経単球痛の1例を報告する。

症例:79歳の女性が、主治医からアメナメビルを処方された後、嘔吐で受診した。関節リウマチの既往があり、プレドニゾロンとメトトレキサートが投与されていた。最終的に眼部帯状疱疹と無菌性髄膜炎と診断され、抗ウイルス薬の静注療法が開始された。しかし、入院11日目に動眼神経麻痺を発症した。この症例では、抗ウイルス薬投与と臨床的改善の間にタイムラグがあった。

結論:本症例は、特に中枢神経系合併症のハイリスク症例において、アメナメビルを含む抗ウイルス薬の脳内移行性の低さを回避するための抗ウイルス薬の選択の必要性を示唆している。

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Aseptic meningitis after amenamevir treatment for herpes zoster ophthalmicus with oculomotor nerve palsy in a patient taking immunosuppressant
Moeko Omiya et al. PMID: 36708771 DOI: 10.1016/j.jiac.2022.12.008
J Infect Chemother. 2023 May;29(5):519-522. doi: 10.1016/j.jiac.2022.12.008. Epub 2023 Jan 25.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36708771/

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