血漿オメガ-6およびオメガ-3脂肪酸と全がん及び19の部位特異的がんとの関連性は?(集団ベースのコホート研究; Int J Cancer. 2024)

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多価不飽和脂肪酸と “がん” との関連性は?

多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids, PUFA)とがん罹患率との関連に関するこれまでの疫学研究には一貫性がなく、リスクを低減する場合とリスクを増加させる場合ともに報告されています。

そこで今回は、血漿中のオメガ-3およびオメガ-6PUFAと全がん及び19の部位特異的がんの発生率との関連を調査した大規模な前向きコホートの結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

253,138人のUK Biobank参加者が本研究に組み入れられました。平均追跡期間12.9年で、29,838人ががんと診断されました。オメガ-3およびオメガ-6PUFAの血漿中濃度は、総脂肪酸に占める割合(オメガ-3およびオメガ-6)で表されました。

主要モデル解析では、オメガ-6およびオメガ-3の両方が全がん罹患率と逆相関していました(それぞれ、SD当たりHR 0.98、95%CI 0.96~0.99;SD当たりHR 0.99、95%CI 0.97~1.00)。

利用可能な19の部位特異的がんのうち、14はオメガ-6と、5つはオメガ-3と関連しており、前立腺がんがオメガ-3と正の関連を示す(SD当たりHR 1.03、95%CI 1.01~1.05)という例外を除いて、すべて逆相関を示していました。

コメント

多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids, PUFA)と “がん” 罹患率との関連性については、充分に検証されていません。

さて、UK Biobankにおける集団ベースのコホート研究は、前立腺がんのような顕著な例外はあるものの、血漿中のオメガ-6およびオメガ-3 PUFAと全癌およびほとんどの部位特異的癌の発生率との小さな逆相関を示しました。

摂取する食品や含有量により、患者転帰が影響を受ける可能性が高く、どのような食品が血漿中PUFAを増加させるのか、更なる検証が求められます。再現性の確認、より厳格な交絡因子の調整などについても検討する必要がありそうです。

続報に期待。

※参考として、各脂肪酸を多く含む食品について、以下に記載しておきます。

オメガ-3脂肪酸を多く含む食品

  • 魚類
    サバ、イワシ、サケ、ニシン、マグロなど脂ののった青魚にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富です。
  • 亜麻仁油・チアシード
    これらにはα-リノレン酸(ALA)が多く含まれています。ALAは体内でEPAやDHAに変換されますが、その効率は低めです。
  • くるみ
    植物性の食品としては珍しく、オメガ-3脂肪酸を含みます。
  • エゴマ油
    日本で利用されることが増えている油で、α-リノレン酸が含まれています。

オメガ-6脂肪酸を多く含む食品

  • 植物油
    サラダ油(大豆油)、ひまわり油、とうもろこし油、ゴマ油などにリノール酸が豊富です。
  • ナッツ類
    アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオなどはオメガ-6脂肪酸が多く含まれます。
  • 種子類
    ヒマワリの種、カボチャの種などにリノール酸が多く含まれています。
  • 加工食品
    揚げ物やスナック菓子などには植物油が使用されているため、オメガ-6が多く含まれる傾向があります。
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✅まとめ✅ UK Biobankにおける集団ベースのコホート研究は、前立腺がんのような顕著な例外はあるものの、血漿中のオメガ-6およびオメガ-3 PUFAと全癌およびほとんどの部位特異的癌の発生率との小さな逆相関を示している。

根拠となった試験の抄録

背景:多価不飽和脂肪酸(PUFA)とがん罹患率との関連に関するこれまでの疫学研究には一貫性がない。

方法:大規模な前向きコホートにおいて、血漿中のオメガ3およびオメガ6PUFAと全癌および19の部位特異的がんの発生率との関連を調査した。

結果:253,138人のUK Biobank参加者が本研究に組み入れられた。平均追跡期間12.9年で、29,838人ががんと診断された。オメガ-3およびオメガ-6PUFAの血漿中濃度は、総脂肪酸に占める割合(オメガ-3およびオメガ-6)で表した。主要モデルでは、オメガ-6およびオメガ-3の両方が全がん罹患率と逆相関していた(それぞれ、SD当たりHR 0.98、95%CI 0.96~0.99;SD当たりHR 0.99、95%CI 0.97~1.00)。利用可能な19の部位特異的がんのうち、14はオメガ-6と、5つはオメガ-3と関連しており、前立腺がんがオメガ-3と正の関連を示した(SD当たりHR 1.03、95%CI 1.01~1.05)という例外を除いて、すべて逆相関を示していた。

結論:UK Biobankにおける我々の集団ベースのコホート研究は、前立腺癌のような顕著な例外はあるものの、血漿中のオメガ-6およびオメガ-3 PUFAと全癌およびほとんどの部位特異的癌の発生率との小さな逆相関を示している。

キーワード: がん罹患率、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、前向きコホート研究。

引用文献

Associations of plasma omega-6 and omega-3 fatty acids with overall and 19 site-specific cancers: A population-based cohort study in UK Biobank
Yuchen Zhang et al. PMID: 39417685 DOI: 10.1002/ijc.35226
Int J Cancer. 2024 Oct 17. doi: 10.1002/ijc.35226. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39417685/

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