TAVI施行中の経口抗凝固療法の継続と中断どちらが良いのか?(Open-RCT; POPular PAUSE TAVI試験; N Engl J Med. 2024)

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TAVIを受ける患者における経口抗凝固薬は継続した方が良いのか?

経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)を受ける患者の3分の1は、合併疾患により経口抗凝固療法の適応があります。TAVI施行中の経口抗凝固療法の中断は出血リスクを低下させる可能性があり、一方、継続は血栓塞栓症のリスクを低下させる可能性があることから、リスクベネフィット評価について更なる検証が求められています。

そこで今回は、経口抗凝固薬の投与を受けており、TAVIを受ける予定の患者を対象とした国際的な非盲検ランダム化非劣性試験の結果をご紹介します。患者は1:1の割合でランダムに経口抗凝固療法を周術期に継続する群と中断する群に割り付けられました。

試験の主要転帰は、TAVI施行後30日以内の心血管系の原因による死亡、何らかの原因による脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

858例の患者が修正intention-to-treat集団に組み入れられました:431例が経口抗凝固療法の継続群に、427例が中断群に割り付けられました。

DOAC継続群DOAC中止群リスク差
(95%信頼区間[CI])
一次転帰イベント
TAVI施行後30日以内の心血管系の原因による死亡、何らかの原因による脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合
71例(16.5%)63例(14.8%)リスク差 1.7%ポイント
-3.1 ~ 6.6
非劣性P=0.18
血栓塞栓イベント38例(8.8%)35例(8.2%)リスク差 0.6%ポイント
-3.1 ~ 4.4
出血134例(31.1%)91例(21.3%)リスク差 9.8%ポイント
3.9~15.6

一次転帰イベントは継続群71例(16.5%)、中断群63例(14.8%)に発生しました(リスク差 1.7%ポイント、95%信頼区間[CI] -3.1 ~ 6.6;非劣性P=0.18)。

血栓塞栓イベントは継続群で38例(8.8%)、中断群で35例(8.2%)に発生しました(リスク差 0.6%ポイント、95%CI -3.1 ~ 4.4)。

出血は継続群で134例(31.1%)、中断群で91例(21.3%)に発生しました(リスク差 9.8%ポイント、95%CI 3.9~15.6)。

コメント

TAVI後は、特に弁置換後に血栓が形成されるリスクがあり、これが血栓塞栓症の原因になる可能性があります。このため、抗凝固療法が必要とされることがあります。経口抗凝固薬は血栓形成を抑制する一方で、出血リスクも高めます。特に高齢患者や合併症を持つ患者では、消化管出血や脳出血のリスクが増加するため、投与量や種類の選択に慎重な判断が求められます。TAVI患者における経口抗凝固薬の継続と中止、どちらが患者予後を向上させるのかについては充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、経口抗凝固療法の適応を併せ持つTAVI施行患者において、30日後の心血管原因による死亡、脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合発症率に関して、TAVI施行中の経口抗凝固療法継続は中断に対して非劣性ではありませんでした。

有意差はありませんが、中断群の方がイベント発生数の減少傾向、出血リスクが少ないといったアドバンテージがありそうです。とはいえ、本試験結果のみでDOACを中止した方が良いとは言えません。

再現性の確認も含めて、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、経口抗凝固療法の適応を併せ持つTAVI施行患者において、30日後の心血管原因による死亡、脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合発症率に関して、TAVI施行中の経口抗凝固療法継続は中断に対して非劣性ではなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)を受ける患者の3分の1は、合併疾患により経口抗凝固療法の適応がある。TAVI施行中の経口抗凝固療法の中断は出血リスクを低下させる可能性があり、一方、継続は血栓塞栓症のリスクを低下させる可能性がある。

方法:経口抗凝固薬の投与を受けており、TAVIを受ける予定の患者を対象とした国際的な非盲検ランダム化非劣性試験を実施した。患者は1:1の割合でランダムに経口抗凝固療法を周術期に継続する群と中断する群に割り付けられた。
主要転帰は、TAVI施行後30日以内の心血管系の原因による死亡、何らかの原因による脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合とした。

結果:858例の患者が修正intention-to-treat集団に組み入れられた:431例が経口抗凝固療法の継続群に、427例が中断群に割り付けられた。一次転帰イベントは継続群71例(16.5%)、中断群63例(14.8%)に発生した(リスク差 1.7%ポイント、95%信頼区間[CI] -3.1 ~ 6.6;非劣性P=0.18)。血栓塞栓イベントは継続群で38例(8.8%)、中断群で35例(8.2%)に発生した(リスク差 0.6%ポイント、95%CI -3.1 ~ 4.4)。出血は継続群で134例(31.1%)、中断群で91例(21.3%)に発生した(リスク差 9.8%ポイント、95%CI 3.9~15.6)。

結論:経口抗凝固療法の適応を併せ持つTAVI施行患者において、30日後の心血管原因による死亡、脳卒中、心筋梗塞、大血管合併症、大出血の複合発症率に関して、TAVI施行中の経口抗凝固療法継続は中断に対して非劣性ではなかった。

研究資金:オランダ保健研究開発機構およびSt.Antonius研究基金

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT04437303

引用文献

Continuation versus Interruption of Oral Anticoagulation during TAVI
Dirk Jan van Ginkel et al. PMID: 39216096 DOI: 10.1056/NEJMoa2407794
N Engl J Med. 2024 Aug 31. doi: 10.1056/NEJMoa2407794. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39216096/

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