CKD患者における薬剤中止の影響は?
ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の投与中止と慢性腎臓病(CKD)患者の転帰との関連についてはほとんど知られていません。
そこで今回は、ステージ3~4のCKD患者におけるSGLT2阻害薬またはGLP-1 RAの処方中止と患者転帰との関連性について検証したデータベース研究の結果をご紹介します。
本研究では、退役軍人(VA)医療システムにおける2005~2022年のCKDステージ3~4の成人を同定しました。SGLT2阻害薬またはGLP-1 RAの処方があった患者が対象であり、最初の処方日が指標日とされました。
SGLT2阻害薬またはGLP-1 RAの処方が90日以上中断したと定義される最初の治療中止までの期間に関連する因子について、Cox比例ハザード回帰モデルにより検討されました。
投与中止90~179日および180日以上における死亡、心筋梗塞、冠血行再建術、心不全による入院、虚血性脳卒中との関連について、Cox比例ハザード回帰により評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
SGLT2阻害薬を投与された96,345例とGLP-1 RAを投与された60,020例のうち、少なくとも1回の中止がSGLT2阻害薬使用者の35,953例(37%)とGLP-1 RA使用者の28,407例(47%)で発生しました。SGLT2阻害薬使用者は24%が黒人、71%が白人、71%が70歳以上、84%がCKDステージ3aでした。GLP-1 RA使用者は20%が黒人、75%が白人、63%が70歳以上、81%がCKDステージ3aでした。
黒人、ヒスパニック系、脳血管障害、末梢血管障害、虚血性心疾患は両薬剤の投与中止と関連していました。女性であること、CKD病期が進行していることもSGLT2阻害薬の中止と関連していました。
(SGLT2阻害薬の180日以上の中止) | 調整後ハザード比 HR (95%CI) |
死亡 | 調整後HR 1.67(1.58~1.77) |
心不全による入院 | 調整後HR 1.26(1.13~1.40) |
SGLT2阻害薬の180日以上の中止は、死亡(調整後ハザード比[HR] 1.67、95%信頼区間[CI] 1.58~1.77)および心不全による入院(調整後HR 1.26、95%CI 1.13~1.40)と関連していました。
(180日以上のGLP-1 RA中止) | 調整後ハザード比 HR (95%CI) |
死亡 | 調整HR 1.97(1.87~2.07) |
心筋梗塞 | 調整HR 1.23(1.11~1.36) |
心不全入院 | 調整HR 1.48(1.33~1.64) |
虚血性脳卒中 | 調整HR 1.24(1.14~1.35) |
180日以上のGLP-1 RA中止は、死亡(調整HR 1.97、95%CI 1.87~2.07)、心筋梗塞(調整HR 1.23、95%CI 1.11~1.36)、心不全入院(調整HR 1.48、95%CI 1.33~1.64)、虚血性脳卒中(調整HR 1.24、95%CI 1.14~1.35)と関連した。
コメント
慢性腎臓病(CKD)患者において、薬剤の中止は一般的に行われます。しかし、CKD患者は心血管イベントや死亡リスクが高いことから、薬剤中止による患者転帰の悪化を引き起こす可能性があります。
さて、データベース研究の結果、SGLT2阻害薬およびGLP-1 RAの中止はCKD成人において一般的であり、有害な転帰と関連していました。
影響を受けるアウトカムはSGLT2阻害薬とGLP-1 RAで異なっているものの、臨床上より重要なアウトカムの発生リスクが増加する可能性が示唆されています。CKD患者であっても、SGLT2阻害薬やGLP-1 RAの中止は可能な限り避けた方が良いのかもしれません。
再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ データベース研究の結果、SGLT2阻害薬およびGLP-1 RAの中止はCKD成人において一般的であり、有害な転帰と関連していた。
根拠となった試験の抄録
背景:ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の投与中止と慢性腎臓病(CKD)患者の転帰との関連についてはほとんど知られていない。
方法:退役軍人(VA)医療システムにおける2005~2022年のCKDステージ3~4の成人を同定した。SGLT2阻害薬またはGLP-1 RAの処方があった患者を対象とし、最初の処方日を指標日とした。SGLT2阻害薬またはGLP-1 RAの処方が90日以上中断したと定義される最初の治療中止までの期間に関連する因子を、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。
投与中止90~179日および180日以上における死亡、心筋梗塞、冠血行再建術、心不全による入院、虚血性脳卒中との関連をCox比例ハザード回帰を用いて評価した。
結果:SGLT2阻害薬を投与された96,345例とGLP-1 RAを投与された60,020例のうち、少なくとも1回の中止がSGLT2阻害薬使用者の35,953例(37%)とGLP-1 RA使用者の28,407例(47%)で発生した。SGLT2阻害薬使用者は24%が黒人、71%が白人、71%が70歳以上、84%がCKDステージ3aであった。GLP-1 RA使用者は20%が黒人、75%が白人、63%が70歳以上、81%がCKDステージ3aであった。黒人、ヒスパニック系、脳血管障害、末梢血管障害、虚血性心疾患は両薬剤の投与中止と関連していた。女性であること、CKD病期が進行していることもSGLT2阻害薬の中止と関連していた。SGLT2阻害薬の180日以上の中止は、死亡(調整後ハザード比[HR] 1.67、95%信頼区間[CI] 1.58~1.77)および心不全による入院(調整後HR 1.26、95%CI 1.13~1.40)と関連していた。180日以上のGLP-1 RA中止は、死亡(調整HR 1.97、95%CI 1.87~2.07)、心筋梗塞(調整HR 1.23、95%CI 1.11~1.36)、心不全入院(調整HR 1.48、95%CI 1.33~1.64)、虚血性脳卒中(調整HR 1.24、95%CI 1.14~1.35)と関連した。
結論:SGLT2阻害薬およびGLP-1 RAの中止はCKD成人において一般的であり、有害な転帰と関連していた。
引用文献
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitor and Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist Discontinuation in Patients with CKD
L Parker Gregg et al. PMID: 39186372 DOI: 10.1681/ASN.0000000000000477
J Am Soc Nephrol. 2024 Aug 26. doi: 10.1681/ASN.0000000000000477. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39186372/
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