夜間咳嗽と風邪症状のある小児に対するヴェポラップ vs. ワセリン vs. 無治療(RCT; Pediatrics. 2010)

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急性上気道炎に伴う夜間咳嗽へのヴェポラップの効果は?

上気道感染による夜間の咳、鼻づまり、および睡眠障害に対して、ヴェポラップ(vapor rub, VR)が有効かどうかはエビデンスが限られています。

そこで今回は、夜間咳嗽と風邪症状を有する小児に対するヴェポラップまたはワセリンの単回塗布が無治療よりも優れているかどうかを検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

前日の夕方に薬物療法を行わなかった受診日と、翌日の就寝前にVR軟膏、ワセリン軟膏、または無治療のいずれかを胸部と頸部に塗布した日の連続2日間に、部分的二重盲検化スキームに従って両親を対象に調査が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

試験を完了した2~11歳の小児は138人でした。

参加者が治療を受けなかった登録前夜のベースライン症状スコアを、就寝前にVR、ワセリン、または無治療を行った翌日夜のスコアと比較されました。各治療グループ内で、翌日夜にはすべての結果が有意に改善しました(すべてP<0.05)。

治療群間では、咳、鼻づまり、睡眠困難に関する転帰に有意な改善差が認められました。一対比較では、鼻漏を除くすべての転帰でVRが無治療群より優れており、咳の重症度、子供と親の睡眠困難度、複合症状スコアではワセリンが優れていました。ワセリンはいずれの転帰においても無治療より有意に優れていませんでした。

治療グループごとに分けると、鼻漏の重症度を除いて、計画された3者間比較のすべての研究結果について報告された改善量に有意差が検出されました。ここでも、鼻漏を除いて、すべての結果でVRが最も大きな改善をもたらし、次いでワセリンが続き、一方、治療なしは一貫して最も改善量が小さいことが明らかとなりました(すべてP<0.05)。

アウトカムP値
(A)咳の頻度P=0.003、3元治療比較
(B)咳の重症度P=0.02
(C)鼻づまりの重症度P=0.04
(D)鼻漏の重症度P=有意ではない
(E)子供の睡眠能力P<0.001
(F)親の睡眠能力P<0.001
(G)複合症状スコアP<0.001

刺激性の副作用は、VR治療群に多くみられました。

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急性上気道炎に対する咳嗽薬の効果は限られており、過去の報告ではデキストロメトルファンやハチミツが有効である可能性が報告されているのみです。一方、ハチミツはボツリヌス菌による影響があることから1歳未満への使用はできません。このため代替療法の立案が求められており、その一つにヴェポラップがあげられます。

さて、ランダム化比較試験の結果、胸部と頸部へのヴェポラップ(VR)あるいはワセリンの塗布、無治療の比較において、両親はVRを、上気道感染による子供の夜間の咳、鼻づまり、睡眠困難の症状緩和に対して最も好意的に評価しました。軽度の刺激性副作用があったものの、VRは小児に症状の緩和をもたらし、小児とその両親は他の試験群よりも安らかな夜を過ごすことができました。

ただし、小規模な検討結果であり、アウトカム評価は参加者の両親の報告に基づいています。再現性の確認も含めて更なる評価が求められます。

ちなみに日本で販売されているヴェポラップの成分は以下の通りです。試験で使用されたものとは配合割合が異なります。

ヴィックス・ヴェポラップの成分・分量(100g中

dl-カンフル 5.26g、テレビン油 4.68g、
l-メントール 2.82g、ユーカリ油 1.33g、
ニクズク油 0.69g、杉葉油 0.44g
添加物:チモール、ワセリン

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、胸部と頸部へのヴェポラップ(VR)あるいはワセリンの塗布、無治療の比較において、両親はVRを、上気道感染による子供の夜間の咳、鼻づまり、睡眠困難の症状緩和に対して最も好意的に評価した。軽度の刺激性副作用があったものの、VRは小児に症状の緩和をもたらし、小児とその両親は他の試験群よりも安らかな夜を過ごすことができた。

根拠となった試験の抄録

目的:上気道感染による夜間の咳、鼻づまり、および睡眠障害に対して、ヴェポラップ(vapor rub, VR)またはワセリンの単回塗布が無治療よりも優れているかどうかを検討すること。

方法:前日の夕方に薬物療法を行わなかった受診日と、翌日の就寝前にVR軟膏、ワセリン軟膏、または無治療のいずれかを胸部と頸部に塗布した日の連続2日間に、部分的二重盲検化スキームに従って両親を対象に調査を行った。

結果:試験を完了した2~11歳の小児は138人であった。各群とも、症状は2日目の夜に改善した。治療群間では、咳、鼻づまり、睡眠困難に関する転帰に有意な改善差が認められた。一対比較では、鼻漏を除くすべての転帰でVRが無治療群より優れており、咳の重症度、子供と親の睡眠困難度、複合症状スコアではワセリンが優れていた。ワセリンはいずれの転帰においても無治療より有意に優れていなかった。刺激性の副作用は、VR治療群に多くみられた。

結論:VR、ワセリン、無治療の比較において、両親はVRを、上気道感染による子供の夜間の咳、鼻づまり、睡眠困難の症状緩和に対して最も好意的に評価した。軽度の刺激性副作用があったものの、VRは小児に症状の緩和をもたらし、小児とその両親は他の試験群よりも安らかな夜を過ごすことができた。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov NCT00743990

引用文献

Vapor rub, petrolatum, and no treatment for children with nocturnal cough and cold symptoms
Ian M Paul et al. PMID: 21059712 PMCID: PMC3600823 DOI: 10.1542/peds.2010-1601
Pediatrics. 2010 Dec;126(6):1092-9. doi: 10.1542/peds.2010-1601. Epub 2010 Nov 8.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21059712/

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