慢性疼痛に対する筋弛緩薬の長期使用の効果は?(システマティックレビュー; JAMA Netw Open. 2024)

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慢性疼痛に対して骨格筋弛緩薬は有効か?

オピオイド処方ガイドラインの厳格化により、慢性疼痛に対する骨格筋弛緩薬(SMR)の処方が増加していますが、慢性疼痛に対するSMRの長期使用の有効性は不明です。

そこで今回は、慢性疼痛に対するSMRの長期使用の効力(efficacy)または有効性(effectiveness)について系統的にレビューした試験の結果をご紹介します。

2人のレビュアーが2023年12月4日まで、Ovid MEDLINE、Embase(Ovid)、Web of Science、CINAHL、Cochraneを系統的に検索しました。英語、スペイン語、イタリア語で発表された論文が対象でした。

対象は、慢性疼痛に対するSMRの投与期間を少なくとも1ヵ月間評価したランダム化臨床試験(RCT)および比較対照群を有するコホート研究でした。査読者は、データの抽出、バイアスのリスク、および試験の質について、2名で検討されました。

腰痛、線維筋痛症、頭痛、有痛性けいれんまたは痙縮、その他の症候群など、慢性疼痛症候群別に研究の特徴が検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

1,314人が参加した30件のRCTと1,168人が参加した14件のコホート研究が、慢性疼痛に対するSMRを評価していました。研究は主に短期間(4~6週間)でした。

同定された研究では9種類のSMRが認められました。11件の研究(25%)ではバクロフェン(商品名:ギャバロン、リオレサール)が、8件の研究(18%)ではチザニジン(商品名:テルネリン)が、7件の研究(16%)ではシクロベンザプリン(Cyclobenzaprine:日本未承認)が検討されました。

有効性のエビデンスは、三叉神経痛、頚部痛、疼痛性けいれんに使用されるSMRで最も強いことが示されました;エビデンスは、線維筋痛症、腰痛症、その他の症候群に対するSMRがプラセボよりも有益ではないことが示唆されました。

最も一般的な副作用は鎮静と口渇でした。

RCTのバイアスリスクは低~中等度であり、コホート研究の質は可もなく不可もなくでした。

コメント

慢性疼痛に対する骨格筋弛緩薬(SMR)の長期使用の有効性は不明です。

さて、系統的レビューの結果、慢性疼痛に対するSMRの長期使用は、痛みを伴う痙攣(cramps)または痙攣(spasms)および頸部痛の患者に有益である可能性が示唆されました。一方、腰痛、線維筋痛症および頭痛に対するSMRの長期使用は有益ではないようでした。

メタ解析は実施されておらず、今回対象となった各薬剤(バクロフェン、チザニジン、Cyclobenzaprine)の効果がどの程度であるのかについては不明です。

ちなみに「痙攣」の表記は、英語で3種類あり、そのうちの “spasm” は比較的限局性、恒常的な不随意筋の収縮、例えば食道けいれん、喉頭けいれんなどの他、顔面けいれん、眼瞼けいれんなどの随意筋にみられる筋収縮に対して慣用されます。一方、”cramp” は痙直(こむらがえり)ともいい、有痛性の筋収縮に用いられます。

  • Spasm:顔面の片側の筋や眼瞼がピクピクして痛みを伴わない痙攣です。
  • Cramp:局所の筋痙攣で痛みを伴う痙攣です(いわゆるこむら返り)。

これらに対して、”Convulsion” は、随意筋の急激な不随意な収縮を指します。範囲が広く、てんかんやヒステリーにみられるようなものにも使用されます。

病態毎、薬剤毎の評価が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 系統的レビューの結果、慢性疼痛に対する骨格筋弛緩薬の長期使用は、痛みを伴う痙攣(cramps)または痙攣(spasms)および頸部痛の患者に有益である可能性が示唆された。一方、腰痛、線維筋痛症および頭痛に対するSMRの長期使用は有益ではないようだった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:オピオイド処方ガイドラインの厳格化により、慢性疼痛に対する骨格筋弛緩薬(SMR)の処方が増加しているが、慢性疼痛に対するSMRの長期使用の有効性は不明である。

目的:慢性疼痛に対するSMRの長期使用の効力(efficacy)または有効性(effectiveness)を系統的にレビューすること。

エビデンスレビュー:2人のレビュアーが2023年12月4日まで、Ovid MEDLINE、Embase(Ovid)、Web of Science、CINAHL、Cochraneを系統的に検索した。英語、スペイン語、イタリア語で発表された論文を対象とした。
慢性疼痛に対するSMRの投与期間を少なくとも1ヵ月間評価したランダム化臨床試験(RCT)および比較対照群を有するコホート研究のみを対象とした。
査読者は、データの抽出、バイアスのリスク、および質を二重に検討した。
腰痛、線維筋痛症、頭痛、有痛性けいれんまたは痙縮、その他の症候群など、慢性疼痛症候群別に研究の特徴を検討した。

結果:1,314人が参加した30件のRCTと1,168人が参加した14件のコホート研究が、慢性疼痛に対するSMRを評価した。研究は主に短期間(4~6週間)であった。同定された研究では9種類のSMRが認められた。11件の研究(25%)ではバクロフェンが、8件の研究(18%)ではチザニジンが、7件の研究(16%)ではシクロベンザプリンが検討された。
有効性のエビデンスは、三叉神経痛、頚部痛、疼痛性けいれんに使用されるSMRで最も強かった;エビデンスは、線維筋痛症、腰痛症、その他の症候群に対するSMRがプラセボよりも有益ではないことを示唆した。
最も一般的な副作用は鎮静と口渇であった。
RCTのバイアスリスクは低~中等度であり、コホート研究の質は可もなく不可もなくであった。

結論と関連性:慢性疼痛に対するSMRの長期使用に関するこの系統的レビューでは、所見から、SMRの長期使用は痛みを伴う痙攣(spasms)または痙攣(cramps)および頸部痛の患者に有益である可能性が示唆された;腰痛、線維筋痛症および頭痛に対するSMRの長期使用は有益ではないようであった。臨床医は副作用に注意し、疼痛に関する目標が達成されない場合は処方を中止することを考慮すべきである。

引用文献

Long-Term Use of Muscle Relaxant Medications for Chronic Pain: A Systematic Review
Benjamin J Oldfield et al. PMID: 39298168 PMCID: PMC11413720 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.34835
JAMA Netw Open. 2024 Sep 3;7(9):e2434835. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.34835.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39298168/

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