発熱に対するアセトアミノフェン+イブプロフェンの短期二重療法または単剤療法どちらが優れているのか?(ネットワークメタ解析; Pediatrics. 2024)

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NSAIDsとアセトアミノフェンの併用効果は?

アセトアミノフェンとイブプロフェンを単独療法または二重療法(交互療法または併用療法)として使用した場合、その効果および安全性が同様であるかどうかは不明です。

そこで今回は、アセトアミノフェン、イブプロフェンの単独、交互、併用療法の比較有効性を評価することを目的に実施されたシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

データ情報源はMedline、Embase、CENTRALであり、データベース開始時点から2023年9月20日まで検索されました。研究の対象は発熱のある小児の治療について、アセトアミノフェン、イブプロフェン、両者の交互投与、両者の併用投与を比較したランダム化比較試験でした。

2名の査読者が独立して抄録と全文をスクリーニングし、データを抽出し、バイアスのリスクについて評価されました。ランダム効果モデルを用い、ペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

31件の試験(5,009人の小児)が対象となりました。

解熱に対するオッズ比 OR(信頼区間 CI)
複合療法:イブプロフェン+アセトアミノフェンOR 0.19(CI 0.09~0.42
交互療法:イブプロフェン→アセトアミノフェン、アセトアミノフェン→イブプロフェンOR 0.20(CI 0.06~0.63
高用量のイブプロフェンOR 0.98(CI 0.63~1.59

その結果、複合療法(オッズ比[OR] 0.19、信頼区間[CI] 0.09~0.42)および交互療法(OR 0.20、CI 0.06~0.63)はアセトアミノフェンより優れている可能性があり、一方、高用量のイブプロフェンは投与4時間目に無熱の小児の割合という点で同等(OR 0.98、CI 0.63~1.59)である可能性があることが明らかとなりました。

これらの結果は投与6時間目でも同様でした。

有害事象に関しては、イブプロフェン(低用量または高用量)、またはアセトアミノフェンとの交互投与、併用投与に差はありませんでした。

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アセトアミノフェン(パラセタモール)の作用機序は、正確には完全には解明されていませんが、いくつかの重要な経路が提案されています。以下はその代表的なものです。

1. 中枢性プロスタグランジン合成の抑制

アセトアミノフェンは、脳内でプロスタグランジン合成酵素(シクロオキシゲナーゼ、COX)の働きを抑制することによって、痛みや発熱を抑えます。特に、COX-2の阻害が痛みや発熱の抑制に関与していると考えられますが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に比べて、末梢でのCOX阻害作用は弱いです。そのため、抗炎症作用がほとんどないとされています。

2. エンドカンナビノイドシステムの関与

アセトアミノフェンは体内で代謝され、AM404という物質が生成されます。AM404は、エンドカンナビノイドシステムに作用し、痛みを抑える効果があると考えられています。具体的には、AM404がカンナビノイド受容体(CB1受容体)を介して痛みの信号を抑制するほか、トランスポーターを阻害してアナンダミドの分解を防ぐことで、鎮痛効果を発揮します。

3. セロトニンシステムの関与

アセトアミノフェンが、脳内でセロトニン(5-HT)経路にも影響を与え、脳幹の下行性疼痛抑制系を活性化していることが示唆されています。これにより、痛みの伝達を抑制する役割を果たすと考えられています。

4. 酸化還元状態への影響

アセトアミノフェンは、脳内の酸化還元バランスに影響を与えることで、COXの酵素活性を抑制する可能性があります。この作用によって、プロスタグランジンの生成が減少し、鎮痛・解熱効果が発揮されると考えられています。

アセトアミノフェンの作用はNSAIDsと異なる機序で発揮される

アセトアミノフェンは、非ステロイド性抗炎症薬とは異なり、胃腸障害や出血のリスクが低いことから、痛みや発熱の治療に広く使用されています。一方、過剰摂取による肝障害には注意が必要です。

さて、ランダム化比較試験を対象としたネットワークメタ解析の結果、小児の発熱治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンの二重療法は単独療法よりも優れている可能性が示されました。アセトアミノフェンは、4時間後および6時間後に小児の無熱を得るには、併用療法や交互療法よりも劣る可能性があり、イブプロフェンと比較すると、4時間ではイブプロフェン単独に劣るが、6時間では同程度であることも明らかとなりました。

すべての小児発熱患者に適用できる結果ではありませんが、高熱(38℃以上)や熱性けいれんのリスクが高い小児患者においては、アセトアミノフェンとイブプロフェンの併用が有効かもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、小児の発熱治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンの二重療法は単独療法よりも優れている可能性がある。

根拠となった試験の抄録

背景:アセトアミノフェンとイブプロフェンを単独療法または二重療法(交互療法または併用療法)として使用した場合、その効果および安全性が同様であるかどうかは不明である。

目的:システマティックレビューとネットワークメタ解析により、アセトアミノフェン、イブプロフェンの単独、交互、併用療法の比較有効性を評価すること。

データ情報源:Medline、Embase、CENTRALの開始時点から2023年9月20日まで。

研究の選択:発熱のある小児の治療について、アセトアミノフェン、イブプロフェン、両者の交互投与、両者の併用投与を比較したランダム化比較試験。

データ抽出:2名の査読者が独立して抄録と全文をスクリーニングし、データを抽出し、バイアスのリスクを評価した。ランダム効果モデルを用いてペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析を行った。

結果:31件の試験(5,009人の小児)を対象とした。その結果、複合療法(オッズ比[OR] 0.19、信頼区間[CI] 0.09~0.42)および交互療法(OR 0.20、CI 0.06~0.63)はアセトアミノフェンより優れている可能性があり、一方、高用量のイブプロフェンは4時間目に無熱の小児の割合という点で同等(OR 0.98、CI 0.63~1.59)である可能性があることがわかった。これらの結果は6時間目でも同様であった。有害事象に関しては、イブプロフェン(低用量または高用量)、またはアセトアミノフェンとの交互投与、併用投与に差はなかった。

試験の限界:最初の6時間における有効性と安全性のみを評価した。

結論:小児の発熱治療において、アセトアミノフェンとイブプロフェンの二重療法は単独療法よりも優れている可能性がある。アセトアミノフェンは、4時間後および6時間後に小児の無熱を得るには、併用療法や交互療法よりも劣る可能性がある。イブプロフェンと比較すると、アセトアミノフェンは4時間ではイブプロフェン単独に劣るが、6時間では同程度であった。

試験登録(PROSPERO):CRD42016035236。

引用文献

Short-term Dual Therapy or Mono Therapy With Acetaminophen and Ibuprofen for Fever: A Network Meta-Analysis
Juan E De la Cruz-Mena et al. PMID: 39318339 DOI: 10.1542/peds.2023-065390
Pediatrics. 2024 Oct 1;154(4):e2023065390. doi: 10.1542/peds.2023-065390.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39318339/

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